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2025年3月23日日曜日

ヒルビリー

ゲーム「デッドバイデイライト」に登場。

本名なし。名無しとして育った。
仮称としてマックス・トンプソンJr.(ジュニア)。
全体的に歪な体をした、長身の白人男性。
顔は溶けたように歪んでおり、皮膚のたるみを抑えるためか
ステイプラーで留めてある箇所が見られる。
顔から半身に掛けては、皮膚が引き攣ったような状態が続いている。
声と息遣いが荒く、何らかの発声障害か気道に障害を抱えていると思われる。
若干右足を引き摺るような歩行をし、怪我による後遺症とみられる。
上半身はタンクトップ姿で、露出している腕や肩には
皮膚や筋肉の歪な隆起が見られ、背骨が大きく歪んでいるのがわかる。
ズボンはバックル付きのベルトで抑えているが、少々サイズが合ってないようで
ベルトは2本巻かれ、更にロープで縛ってある。
自らを虐待していた両親や関係者を殺害後、謎の存在「エンティティ」によって
霧の森へと召喚された。以来、生存者たちを狩り続けている。
家畜の屠殺用ハンマーを右手に、左手には巨大なチェーンソーが握られている。
チェーンソー使用中は凄まじい速度で移動し、その回転する刃は
生存者を一撃で瀕死状態にする。使用するまでにタイムラグがあり、
再使用には短時間のクールダウンを挟む必要がある。
一時期は長時間使用するとオーバーヒートして、一時的に使用不可になっていた。
現在は逆にチェーンソーの回転速度や移動速度、クールダウンが短くなる
オーバードライブ状態になり、チェーンソーが強化されるようになっている。
アメリカのとある場所で、マックスとエヴリンのトンプソン夫妻が生活していた。
二人は裕福な地主で、農場「コールドウィンドファーム」を経営していた。
公には、トンプソン家には子どもはいなかった。
しかし実際は望まれない子どもが誕生していた。
その子どもは醜悪な見た目から両親に疎まれ、名付けられずに育てられた。
レンガで仕切られた部屋に閉じ込められ、壁に開けた穴から食事を与えられた。
社会から断絶された子どもは、言語や知識を壁の穴から見えるTVから学んだ。
両親は育つにつれ、強靭になった少年の世話に手を焼いた。
怪力故に、度々壁や拘束具、家具を破壊した。しかしTVを見せれば、大人しくなった。
いつしか両親を呼んで、壁を破壊しながら泣くことはなくなった。
少年はTVから常識を学んだ。自身が如何に普通の子どもと違うのか、
本来家族は愛情をもって接してくれることを。通常の人生との違いを理解した。
彼が好きだった番組は二つ。ビーバーの家族が主役のものと、スーパーヒーローの少年のもの。
二つが共通していたのは家族からの愛。ビーバーの子どもは毎日両親から愛されていた。
スーパーヒーローは義両親の愛を受け、偉大なヒーローとなった。
いつか自分も愛されたいと願ったが、両親は自分よりも家畜に愛情を注ぎ、
名前をつけ、大切に育てた。この願いは怒りに変わった。
そして自分の元にヒーローが現れることを願った。
地元の警察官たちは両親と密接な関係を持っており、賄賂をもらうことで
両親の悪行を黙認しただけではなく、彼を笑い物にした。
いつしかヒーローへの願いは虚しいものになった。
そして少年は、父や母、警察官たちの悪意に対する怒りを抱え続けた。
ある日、父が警察署長とその取り巻きの警官たちを連れて現れた。
少年は度々家畜の虐殺をやらされ、彼らはそれを見世物にしていた。
いつものように少年を愚鈍だと嘲り、罵倒の言葉を浴びせた。
しかしその日は、いつものようにならなかった。
少年は怒りのあまり我を忘れ、気付いたときには家畜以外の血と叫びが溢れた。
父親と警官らを殺害した後、母親を拷問した。
自身に名前があるのか、聞き出したかったのだ。
しかし歯も顎も砕かれた母は喋ることも出来ず、すぐに動かなくなった。
そこへ難を逃れていた署長が、新しい部下や二頭の警察犬と共に戻ってきた。
森へと逃げ込んだ少年への追走は困難を極めた。
嗅覚の鋭い警察犬を避けながら、次々と署長の部下は殺害された。
署長は一計を案じ、「お前の本名を知っている」と叫んだ。
少年は僅かな希望を感じ、無意識に逃げるのをやめた。
そこへ警察犬が飛び掛かってきた。さらに署長もハンマーで襲ってきた。
彼は犬を木に投げつけ、署長の手首を掴んでハンマーを振り払う。
今までにない力を感じながら、少年は署長を押し倒した。
ナイフで反撃しようとする署長に逆にナイフで腹を刺した。
署長の腸を引き釣りだそうとしたが、犬たちの追撃がきた。
犬たちを痛めつけ、走り出した。冷たく暗い森の中を抜け、農場へ向かう。
唸り声、銃撃、様々な音を聞きながら彼は地下室の秘密の部屋、
父親が金を隠した部屋や、両親が自身を閉じ込め虐待した部屋のことを考えていた。
そこでTVを見ながら隠れることを想像した。
同時に父親の持ち物を探れば、自分の本当の名前が見つかるかもしれないと
淡い希望を抱いた。直後、右脹脛を銃で撃たれた。
またしても警察犬が飛び掛かり、彼の腕に噛り付いた。
しかし激しい怒りに駆られる少年の怪力の前に、二頭とも絞殺された。
署長は尚も銃撃しようとするが、弾切れだった。
少年は署長の前に立つと、署長を殴り倒し、今度こそ腸を引き摺りだした。
そして署長は豚の餌になった。何年もの孤独と辱めを味わわされた少年は
自由を、温かい空気が顔に触れるのを感じた。
そしてまだ胸に残る激しい怒りを近くにいた家畜たちに向けた。
少年は隠れ潜んだ。忌まわしい虐待の記憶、思い出深い農場に。
しばらくは逃げ惑う家畜に対して、狂ったように暴力の限りを尽くした。
足枷から解き放たれた彼はトウモロコシ畑を駆け回り、
目に映る全ての生物を追い掛け回し、虐殺した。
両親の遺体は決して見つかる事はなかったが、内臓を抉られ、
拷問された動物の肉片が農場の至る所に散見された。
またチェーンソーの潤滑油の空っぽの缶が散乱していることもあった。
農場では今でも夏の夜にどこからかチェーンソーの音が聞こえるという…

デッドバイデイライト」第三のプレイアブルキラー、ヒルビリー。
田舎者を意味する名前は、おそらく某いけにえの影響だろう。
そこは置いといて、生死をかけた鬼ごっこの絶対のルールは、
攻撃二回でダウンする。無論、一部のパークや特殊能力によって例外はある。
その最初の例外がこのキラー。なんとチェーンソーによる一撃を受けると
即ダウン状態になってしまうのだ。
初期DbDはコイツのチェーンソーの音が聞こえただけで、
震えが止まらなかったサバイバーは少なくなかったはず。
人物像に関しては、陰惨な背景が浮かび上がるキラーだ。
元々、望まれない子どもという設定のため覚悟していたが
野生児とかその辺を想像していた。
だが学術書の伝承は公開されると一変。
愛されることを望んだ忌み子という、想像よりも惨い伝承だった。
学術書は公開前のPVにアニメーションがあったりするのだが、
そこに描かれたのは死体となった両親と共にテレビを見るヒルビリーという
なかなかにおぞましく、同時に哀れな光景だった。
彼の両親の遺体は見つからなかったらしいので、
やはり両親を憎み切れない部分があったのではないかという想像を掻き立てる。

2024年12月14日土曜日

レイス


ゲーム「デッドバイデイライト」に登場。

本名フィリップ・オジョモ。
顔に三本の白線が斜めに入った模様が特徴の長身痩躯の黒人男性。
頭は泥で覆われ、泥で固まった頭髪はまるで樹木の枝のようになっており、
皮膚もまた樹皮のような質感になっている。
上半身には丈の短いマントとショールとスカーフを、
腰にはユーティリティベルトを巻いて、足は包帯を纏っているが、
一見すると全てボロボロなため服装全体に一種の統一感がある。
就職先の上司に殺人の片棒を担がされた後、謎の存在「エンティティ」によって
霧の森へと召喚された。以来、生存者たちを狩り続けている。
鋭い刃に人間の頭蓋骨と背骨がついた凶器「アザロフの頭蓋骨」を右手に、
左手に持った古代の力が込められた古い釣鐘「悲哀の鐘」を使って、
生存者を奇襲する殺人鬼。この鐘はエンティティ由来の品物であり、
おそらく父の遺品である「幸運の鐘」が変化したか、
またはエンティティによる、悪趣味なオマージュと推測される。
鐘中の鳴子を骨や縄で結んだものと変えることで、音の有無や攪拌を変化させ、
様々なエンティティのシンボルや謎の文字を記すことで、自身に古代の力を付与する。
最大の特徴はこの鐘は鳴らすと魂の世界に入り込むことができるとされ、
鐘の力でレイスは自身の姿を透明にすることができる。
このため気配をほとんど悟られることなく、獲物を追跡することができる。
しかし透明になっている間は攻撃できないため、一度鐘を鳴らして姿を現す必要がある。
また遠目ではわからないが、接近された時に目を凝らせば
光の屈折による空間の歪みが若干発生している。
しかも常に鼻づまりのような息苦しい吐息音をしており、
裸足で移動しているが、歩くたびに大きな足音を立てている。
意外にもある程度接近されれば、生存者側は容易にその存在を察知できる。
この能力に対する一種場違いの行動、その理由は不明だが、
過去の出来事が彼から人間性を奪ったことで獣同然の精神状態からくるものか、
はたまた精神が崩壊した茫然自失の状態からの無意識なものなのか、判断はつかない。
彼の出身はナイジェリア北部の小さな村。幼少期は両親や祖母と共に暮らしていたが、
民族浄化を目的とした虐殺部隊によって、幸せな生活は終わりを告げる。
村人は蹂躙され、少年だった彼は父親の遺品である「幸運の鐘」を握り締めて、
両親の帰りを待ったが、両親は帰ってこなかった。
祖母アビゲイルは可能な限り、残酷な真実からフィリップを守ろうと嘘をついたが、
いつしか二人からは、涙しか出なくなった。そして二度目の襲撃を知らせる鐘の音。
二人は間に合わせの壕の中で過ごした。祖母は外から聞こえる不穏な音から
フィリップの気を逸らすため、算数の問題を出し、フィリップは答え続けた。
彼の両親は算数が出来れば、フィリップが聡明な子に育ち、学校の成績が良くなれば、
人生にチャンスをもたらすと信じていた。その両親がもう存在せず、
勉強も遊びも、話もしてくれない事実を認識せざる終えなかった。
そしてそんな祖母も、壕の外から聞こえた子どもの泣き声を放っておけず、
フィリップを残して、壕の外へと出て行ったしまった。
それから何時になったか、死んだ方がマシと考えたフィリップは外へと出た。
腐臭、焼けた匂いが立ち込める外には、祖母の姿はなかった。
両親も祖母も友人隣人も失った。彼はかすれた囁き声で祖母を呼んだ。
その囁き声はいつしか叫びへと変わり、それに対する応えは夜の沈黙だけだった。
何もかも奪われたフィリップの手元には、「幸運の鐘」だけが残った。
天涯孤独となったフィリップは、死を望んだ。
しかしそこへ、フナニャという女性が手を差し伸べた。
死を懇願した彼に対して、フナニャはそれでも生きなければいけない、
生きて証人になり、何が起きたのか伝えなくてはならないと説得された。
フナニャとフナニャに保護された子供たちと共に新しい生活を始める。
しかし虐殺部隊によって廃墟となった住居に隠れ住む生活は、
未だ心の傷が癒えないフィリップにとって、復讐の呼び水となった。
人殺しで金を貰うもの、人殺しに金を払うものを憎悪した。
そんな彼を見て、フナニャは奴らは多くのものを奪うが
人間性を奪うことはできない、だから自ら人間性を手放してはならないと説いた。
しかしフィリップは彼らは代償を払うべきだと、頑なだった。
フナニャは自分たちが生きて証人になるため、慈悲の天使に自分たちの無事を祈るべきだと言うが
フィリップは彼の父が信じたように、金のある人は犯罪を犯すために余裕があり、
そして罪から逃れる余裕があると考え、死の天使に奴らが苦しむことを祈りたかった。
フナニャ曰く、「目には目を」の精神は自分たちを盲目にし、世界を暗闇に包んでしまうと。
しかしフィリップからすれば、先に盲目になったのは世界であり、
自分たちに起こった出来事に対して世界は無関心であり、それが自分たちが奪われ、
屈服させられる理由であり、この世界の数学的な公式であると考えた。
だがフナニャが語る先人の言葉に対して一瞬だけ、彼は彼女が正しいかもしれないと思った。
復讐より先に、世界は無関心でなくなり、自分たちを助けてくれるかもしれないと。
しかしある日の晩。フィリップが夜の見張りをしているときだった。
彼は何日も眠れておらず、その時、一瞬だけ目を閉じてしまった。
その一緒で眠ってしまい、彼が起きたのは次の日の朝だった
飛び上がりながら彼は周囲を確認する。かつて友人だったものが
一つ、また一つと見つかった。そして変わり果てたフナニャの姿を。
夜中に起きた虐殺部隊の襲撃は苛烈であり、彼らはフナニャを拷問し、
足の腱を切った上に、そこへ蜂蜜を塗り、蟻に生きたまま捕食させたのだ。
フィリップは必死になって蟻を払い続けたが、蟻はいくらでも湧いてきた。
フナニャは必死に喋ろうとするが、口からは血が噴き出ただけだった。
彼女の舌は失われており、話すのもままならなかった。
絶望感と罪悪感から座り込み、「ごめんなさい」と後悔と謝罪を口にした。
しかし、ごめんなさいでは彼女は助からない。
ごめんなさいではアリを追い払うことも、死んだ子供たちを取り戻すこともできない。
そんな彼に対して、フナニャは指で地面に書いた。「許す」と。
フィリップは長い間その言葉を見つめ、しばらくすると静かに涙を流しながら
彼女の顔の上に手を下ろし、彼女の苦しみが終わるのを待った。
彼はそうしたくなかったが、しなければならなかった。
望まぬ形ではあったが、彼は一瞬だけ彼女の慈悲の天使となった。
その晩、フィリップは闇に紛れて別の壊滅した村を見つけ、
そこに虐殺部隊が野営しているのを見つける。
おそらくフナニャを殺した連中。あるいは彼の祖母や両親を殺した連中。
理性ではフナニャが許すべきだと語りかけ、祖母が数学の問題で彼の心を宥めようとした。
しかし彼の激しく狂った憎しみの情動は止まることを知らず、復讐を求めた。
焚き火を囲み上機嫌で酒を呷り、虐殺した人々を動物のように扱い嘲笑する奴らには
地獄の苦しみを与えなければならない。そのとき何か古代の邪悪なものが、
別世界から伸ばされた暗い触手が、自身の若く無垢な心を掴むのを感じる。
彼は自分の血管に灯油が流れるのを感じ、そして行動を開始した。
フィリップは銃や武器で全員を相手することを考えたが、慣れてないものを使えば
彼らはおそらく逃げてしまうだろうと考えた。出来れば彼らが苦しみながら消えることを望んだ。
彼は近くにあった灯油を奪い、寝静まった兵士たちの周りに撒いて火を放った。
突然の炎に恐怖した彼らに次々と火は燃え移り、断末魔を上げて焼死していった。
惨状に気を取られたフィリップの体にも火が移り、彼はその場から逃げた。
そして激痛のあまり、倒れこむ。いつの間にか傍らにあった「幸運の鐘」を叩いた。
死の天使が死を告げるかのように。その後、新たなスタートを求めてナイジェリアを飛び出し、
新生活への期待を胸に、フィリップ・オジョモはアメリカへ渡った。
彼は幸運にも自動車解体の仕事にありつく事ができた。
「オートヘイヴン・レッカーズ」。それが彼の新しい生活の場だった。
小さな廃車置場のオフィスで、ボスが裏社会の仕事や警官への賄賂を行っていることに
フィリップは気づいていた。しかし故郷での悲惨な生活を考慮すれば、
取るに足らないことであり、彼自身はその仕事に巻き込まれなかった。
彼はプレス機を操作し、車を廃車にする作業を淡々と続けた。
車をひたすら小さい鉄の塊へと変えていく。
日々、そんなことを続けていた。トランクから血が流れていることに気づくまで。
ある陰鬱な日、たまたま潰してない車に偶然見つけた変化。
彼は車のトランクを開けることを戸惑わなかった。
中にはパニック状態の縛られた若い男がいた。
彼はその男を解放した。 男が10フィートほど逃げたところで
ボスであるミスター・アザロフが男を引き留め、男の喉を掻っ切った。
フィリップは突然の出来事に、ボスへ説明を求めた。
正確には、何がここで行われていたか理解していたが、理性がそれを拒んだのだ。
しかしアザロフが告げた真実は、予想通りのものだった。
アザロフは故郷にいた人でなしどもと同類だった。
廃車置き場は処刑場であり、フィリップはそこの処刑人である。
すべては客からの依頼であり、車と一緒に人間も「廃車」にしていた。
フィリップは知らぬ内に委託殺人を任され、犯罪の片棒を担がされていた。
そして自身の無関心が、不穏な職場とボスへの警戒心を鈍らせ、
奴らと同じ、他者を食い物にする人でなしに自分を変えたのだ。
この事実は、フィリップの精神を急速に狂気へと追いやった。
彼は激昂し、ボスをプレス機の中に投げ入れ、ゆっくりと粉砕した。
アザロフの頭だけが突き出ていたため、頭と背骨を体から引き抜いた。
そして彼は立ち去り、以降フィリップの姿を見た者はいない。
その後、アザロフの所業は明らかとなり、警察が捜索した結果、
廃車に詰められた数百に及ぶ遺体とそれを生み出した首謀者であるアザロフ。
その遺体も首なし状態でプレス機から発見された。
この廃車置き場のオーナーは、金儲けのために死体処理や委託殺人を行っていたようだが、
いつしか快楽のために殺人を行っていたと推測されている。
アザロフが所有していた給油所「ガス・ヘヴン」周辺で失踪者が続出したこと、
またその住居で奇妙な彫刻や版画が見つかり、地下室には犠牲者を監禁していた痕跡があり、
アザロフの精神状態が不安定だったことが、事件に結びついているとされる。
周辺の街は風評を気にして、廃車置き場を閉鎖。ここの出来事を忘れようとした。
しかし夜に明かりが点灯・消灯する様子を見た者から始まり、
次第にプレス機が動く音を聞く者も現れ始めた。
住民は何かがあると疑ったが、彼らは自分達の生活を守るため、見て見ぬ振りをした…

デッドバイデイライト」において第二のプレイアブルキラーが
このレイスだ。まるで〇レデターのような能力を持ち、奇襲を仕掛ける殺人鬼。
誰もいない。そう思った瞬間、唸り声じみた呼吸音と共に不気味な鐘の音が響き渡る。
まさに神出鬼没。死を告げる天使の前に、恐怖に震え上がるしかない。
しかしリリース直後は便利な透明化のはずが、意外と見えたり、音が聞こえたり、
発動と解除に鐘を鳴らすのが手間だったり、攻撃以外も特定のアクションが行えなかったり。
あらゆる状況において不便というよりも、ゲームにおける不幸を一身に背負った
不憫さは、まるで設定上の生い立ちに比例するようだった。
また板をぶつけられたり、ライトを浴びせられて、「ブモー!」と表現できるような
叫び声を上げたりして、最早ネタキャラ扱い。
しかし度重なるアップデートによるブラッシュアップの結果、
文字通り奇襲に長けた、良いキラーとして地位を得ている。
レイスのゲーム上のあんまりな境遇は置いて、彼の経歴は悲劇としか言えない。
悲劇に悲劇をトッピングした、胃もたれしそうなラインナップ。
人でなしに奪われ続けた結果、慈悲よりも復讐を選び、
自らの不幸の原因に鉄槌を下すが、更なる人でなしの出現により正気を失った。
しかし何より悲劇は、世界が無関心であることを恨んでいた自身が
同じように無関心になってしまった。それに対する罰かのように
彼自身を人でなしに加担させるという、無情な結末。
理性を手放して鐘のように空洞になったと思しき彼が、
時たま出す唸り声や叫び声は、最後に残った人間性が、
鐘のように鳴り響いてるだけなのかもしれない。

2024年9月16日月曜日

ノーティー・ベア


ゲーム「Naughty Bear」に登場。

クマのぬいぐるみたちが住むパーフェクション・アイランドに住む、
いたずら好きな(Naughty)クマのぬいぐるみ。
茶色の身体は所々ボロボロで、片耳が欠けており、
頭部、背中、腹部に傷跡がある。
基本的に喋ることができず、威嚇するように唸るだけ。
その様子からか、周りに住む他のクマたちから嫌われており、
恐怖や軽蔑、侮蔑の対象となっている。
彼自身は他のクマたちと楽しいゲームやパーティーに参加し、
仲良くしてもらいたいだけなのだが、理解されない。
そして爪弾きにされたお返しに、復讐を図る。
1980年代、パーフェクション・アイランド。
そこに住む、ノーティー・ベアは孤独だった。
島一番の嫌われ者の彼は、常に除け者にされた。
今日はダドルズの誕生日会なのに、自分は招待されなかった。
ノーティーは皆に受け入れてもらいたくて、とにかくいい子になろうとした。
ダドルズと友達になることが、その近道だと思い、お手製のプレゼントを作る。
プレゼントを持って誕生日会に向かう途中、チャビーとギグルズに出会う。
二人はノーティーの小さくて歪なプレゼントを見て嘲笑う。
ショックのあまり、意気消沈して家に帰るノーティー。
遂に彼は我慢ができなくなった。クマたちに復讐することを決意し、
パーフェクション・アイランドの住人を殺戮するのだった…

悲鳴と綿(!?)が舞い散るゲーム「Naughty Bear」。
主人公のノーティー・ベアは一体何故そんなに嫌われているのか
特に説明なく、除け者にされ、蔑まれている。
だが、そんなことはどうだっていい。
可愛い顔してエグいことしてくるクマたちに、復讐するときがやってきた!
鉈、バット、トラバサミ、銃、冷蔵庫、トイレ、あらゆるモノを駆使し
時には発狂させ、自殺に追い込み、今までの鬱憤を晴らすのだ。
しかし、どんなに残虐な行動をとっても、彼の本心は変わらず、
仲間に受け入れられる」こと。色々とはっちゃけてしまったが、
相手がその望みを叶えてくれれば、疎外されたことを許そうとする辺り、
意外と彼の内面はナイーブなのかもしれない。

2024年7月24日水曜日

トラッパー

ゲーム「デッドバイデイライト」に登場。

本名エヴァン・マクミラン。
骨でできた奇妙な笑顔にも見えるマスクを被った、大柄で筋肉質な白人男性。
父の言いなりになって大量殺人を犯した後、謎の存在「エンティティ」によって
霧の森へと召喚されて以来、数え切れないほどの生存者たちを餌食にし続けている。
大きな肉包丁とトラバサミを使って、生存者を追い詰める殺人鬼。
何故か体に肉鉤が突き刺さっており、突出したそれでオーバーオールを支えている。
非常に痛々しいが、彼にとっては怒りを引き起こさせるだけでしかない。
腕は包丁についた血を拭うたびに傷つき、赤く染まってしまっている。
彼の出自はアメリカのワシントン州、鋳造と採鉱で有名な「マクミラン・エステート」。
そこを所有するアーチー・マクミランの一人息子だった。
エヴァンは、父親アーチーとその会社の経営手法を崇拝していたとされている。
アーチーは従業員を最低賃金で危険な場所で働かせる、冷酷な人間であった。
当初エヴァンは父の方針に反し、従業員たちに歩み寄り、友人として接していた。
しかし、ふとした時に相手を罵倒したくなる、理不尽な暴力を振るうなど、
内には非常に残忍な暴力衝動を抱えていた。趣味はスケッチを描くことで、
父親からは禁止されていたが、父親からの激しい暴力や叱責に対する
反抗心から続けていた。憎しみから父の殺害を考えることもあったが、
愛情から実行に移せないでいた。父の残虐性を理解してるため、
熊に殺された叔父や溺死した母は父が殺したものと考えており、
その光景を想像して絵に描いたこともあった。
彼は父親に従順な自分にうんざりしており、友人である労働者たちが労働組合を作り、
反乱を起こして労働環境を改善することを望んでいた。
しかしある日、自分の絵がバラバラに引き裂かれているのを見つけた。
そして母親が溺死させられる絵だけがないことに気づいた。
父親に絵が見つかったと思い、殴られるか怒鳴られるか覚悟したが、
その代わりにアーチーは、友人たちが数ドルのためにエヴァンを裏切ったことを明かす。
以来、エヴァンは父親への尊敬と称賛を強め、友人のふりをして
裏切った労働者たちを憎むようになった。
父親の庇護の元、エヴァンは厳格に労働者を管理した。
生産高はいつも好調で、マクミラン・エステートは父子経営のもと成長していった。
やがてアーチー・マクミランの精神状態はゆるやかに乱れていったが、
エヴァンは財産のおこぼれを狙う者たちから父を守った。
エヴァンは父親の言うことなら、どんなことでも行った。
ついにアーチーは完全に錯乱し、エヴァンは父親の意思のもと、
近代史における最悪の殺人鬼と化すこととなった。
エヴァンが100人を超える労働者を暗いトンネルに入らせ、
入り口を爆破して永遠に閉ざした。マクミラン・エステートの物語は、
富と権力が非常に間違った方向に使われた例として語られるようになった。
噂では溶鉱炉で労働者が焼かれたとも言われ、父子により犠牲となった
人たちの具体的な数は不明である。またその後のエヴァン・マクミランの消息も
不明のままである。もう1つ不明なことは、彼の父親が倉庫の地下室で
死体として発見されたことだ。死体は足の骨が粉々に打ち砕かれており、
膝の上に採掘用ハンマーが置いてあった…

死に救済はないゲーム「デッドバイデイライト」。
生死をかけた鬼ごっこを繰り返し、無事逃げ出すか、何人抹殺できるかが
テーマである本作。その記念すべきゲームのキラー側のプレイアブルキャラクターの
一人目がこのトラッパー。彼のトラバサミに捕まったサバイバーは行動不能になり、
自力で逃げ出すか、他者に助けてもらうしか術はない。
トラッパー側のプレイヤーは捕まったサバイバーをトラバサミから
そのまま抱きかかえることもできるが、あえて鉈の一撃を食らわして這いずらせるのも
プレイヤー次第だ。トラッパーの人物像に関してだが、見ての通り一見単純に見えて
複雑な内面を抱えた殺人鬼だ。当初は父親の威光を笠に着た残忍な男と思われた。
学術書の伝承が明かされると、本来は父に逆らう意思を持ち、絵を描くことを好む
孤独だが優し気な好青年の姿が出てきた。しかしその内には残虐な暴力性を秘めており、
苦しんでいる人々の命と父から受けた恩を天秤にかける、一方から見れば親思い、
もう一方は今苦しんでいる人々よりも父を優先する薄情者の姿が見えてくる。
富める者ゆえの無意識の傲慢、それともただ考えなしの純朴な孝行息子か。
どちらにせよ、今や霧の森へ住人と化した彼は父と袂を分かっており、
より凶悪な存在“エンティティ”に仕えるようになった。
しかし最初は嫌がっていたらしく、これは彼の体に突き出ている肉鉤が
どうして付いているのかに対する答えであり、エンティティによる拷問の後だとされている。
上からの支配から逃れたようで、逃れきれない姿は哀れである

2012年12月28日金曜日

ハロルドとモナ

絵本「おぞましい二人」に登場。

子どもばかりを狙う連続殺人犯のカップル。
ハロルド・スネドリーは、5歳にして病気の小動物を叩き殺しており、
成人後は頻繁に本屋で色本を万引きしていた。
モナ・グリッチは酒浸りの両親のもとに産まれ、成人後は装身具売りの職につき、
売り物にすぐ痛むよう細工をしていた。似た者同士のこの2人の男女は出逢い、
犯罪映画を見るなど交際をするようになり、やがて共に暮らし始めたた。
やがて2人は一生をかけた仕事として殺人を計画し、
数か月かけた計画の末、1人の子供を家に誘って一晩かけて殺害し、土に埋めた。
翌朝、慎ましい食事の後、殺した子供の写真をアルバムにおさめた。
その後も2年をかけて3人の子供を殺害した。
後にハロルドが殺した子供の写真を落としたことで罪が明らかになり、2人は裁判にかけられた。
罪状は有罪だが精神疾患と診断され、2人は精神病院に入れられ、別れ別れとなった。
ハロルドは43歳に持病の肺炎で死亡。モナはその生涯を壁の染みを舐めて過ごし、80歳を過ぎて死亡した。

ちょっと変わった「大人向け」の絵本作家エドワード・ゴーリー作「おぞましい二人」。
もう何年も本の中で子供たちを殺してきた」と語るゴーリーが思わず「描かずにいられなかった」作品であり、
1965年に明るみに出た「ムーアズ殺人事件」を基に書いた作品である。
二人の男女が4年にわたり5人の子供を殺して荒野(ムーア)に埋めていた事件に心底動揺させられ、描いたらしい。
登場人物のハロルドとモナの二人が悪行を重ねる理由はよくわからない。
子どもの頃のハロルドを除けば、残虐な素振りはなく、よくもわるくも育ちの悪い貧乏人カップル程度だった。
しかしその後急に殺人計画を練り始め、子どもを殺害。死体の写真を撮るなど
残虐性を現し、些細なことで捕まって裁判を受ける。
笑顔を浮かべる時もあるが、二人は始終淡々としており、
子どもを殺すのも、とくに何かを感じている素振りはない。
徹底的に理解不能、その辺が事件に対する作者の思うところなのだと思う。

2012年10月14日日曜日

アサギ

ドラマ「学校の怪談 春の呪いスペシャル
第二話「アサギの呪い」に登場。

無残な最期を遂げた生徒。生前は暗い性格で友達が少なく、
他の女子によくイジメられていたという。
夏休みが始まる前日に他の女子達に悪ふざけで地下室へ閉じ込められ、
閉じ込めた側がそのことをすっかり忘れてしまい、
一ヵ月以上、閉じ込められため彼女は死亡。
その死体は凄惨さを極め、「部屋中に血を撒き散らしていた」
「壁を掻きむしって爪は剥がれて血で固まっていた」
「全身干からびたミイラとなっていた」という。
とある女子高にて、綾と真由は転校生の杏子を恐がらせるために
旧校舎の地下にある開かずの間となっていた図書室へと連れ込む。
綾の携帯の番号を杏子が盗み見したという口実で一室に閉じ込め、
夜になると気が済んだ綾達は杏子を解放してやる。
当然のごとく怒る杏子は真っ先に帰ろうとするが、入口の扉が開かなくなっていた。
綾達も鍵をかけた覚えがなく、扉を開けようとするがノブが外れ、出られなくなってしまう。
八方塞がりな状況の中、真由はこれを「アサギの呪い」ではとつぶやく。
実はこの地下室の部屋は、かつて「アサギ」という名の生徒が閉じ込められたまま
死体となって発見されたいわく付きの場所だったのである。
携帯電話で助けを求めようにも圏外でないにも関わらず繋がらない。
部屋の隅の天井付近には窓があり、地面すれすれで外に繋がっていたが
小さすぎてここからも出られなかった。地下室を調べているうちに綾が奥の部屋で
床下にさらに地下へと続く階段を見つける。風が吹いているので外へ繋がっていると考え、
行ってみようと誘うが、真由や杏子は警備員がやってくるのを待とうと反対するも強引に下りて行く。
下りた先は古い防空壕だろうか、迷路のような洞窟が広がっていた。
三人はその洞窟を進み、とある通路の壁に血文字が刻まれているのを見つける。
刻まれていたのは『るれらべたなんみ』という不可思議な文字で、
これを読み上げた途端、どこかから何かをひきずるような不気味な音と声が響いて来る。
不安を感じ、逃げ出す三人。しかし杏子が転んで怪我をし、洞窟中をさ迷う。
やがて小部屋を見つけ、そこで隠れていると突如真由は狂ったように地面を指でなぞり続け、
その異常な行動に恐怖を感じた綾が止めようとするが、振り向いた真由は白目を剥き出しにしていた。
真由はおぞましい声で「オマエタチハアサギトオナジ。ニドトデラレナイ」と言った。
直後、正気に戻る真由。そこへ先ほど聞こえた不気味な音が近付いてくる。
綾は懐中電灯を照らして通路に顔を出し、様子を窺ってみると、
そこにはボロボロの服を纏った気味の悪い女、アサギが前のめりの姿勢でさ迷い歩いていた。
この光景に思わず懐中電灯を落としてしまう綾。とっさに身を隠してアサギが通りすぎるまでやり過ごす。
三人は逃げようと部屋から出ていくが、真由は落ちた懐中電灯を拾おうとした途端、
地面を這っていたアサギに捕まり、両目を潰されてしまう。
必死に洞窟を逃げ回る綾と杏子だが怪我をしている杏子は途中で倒れてしまった。
綾は血文字が刻まれている壁まで戻ってきたが、アサギに付け狙われ、
大量の血文字とひっかいた跡が壁に刻まれた、床に無数の骨が転がる小部屋へと追い詰められてしまう。
そこで綾は血文字の意味を理解した。あの文字は逆から読むと「みんなたべられる」だということを。
絶望に包まれる中、アサギが迫り、そして悲鳴が迸る。数時間後、気を失っていた杏子が目を覚まし、
洞窟から地下の図書室まで自力で戻ってきた。外はすでに朝であり、性も根も尽きた杏子は
天井の小窓に向かって必死に助けを求める。目と鼻の先では朝練をしている生徒達がいたが、
いくら助けを求めても誰も気付いてもらえない。その時、異様な音が背後から聞こえてきた。
最早為す術なく、杏子はゆっくりと後ろ振り向いた。
走り込みをしている学生たちが地下の小窓の前を横切って行く。
三人の少女を襲った惨劇は誰に知られることもなく、時は過ぎていく・・・

最近ホラーを主題にしたドラマがめっきり見えなくなり、
非常に残念がっている筆者。そこで過去作を探して良作を探すのが
堅実的だと悟り、久しぶりに見たのがこの「アサギの呪い」。
数話の短編で構成されているドラマ「学校の怪談 呪いスペシャル」の中でも
筆者のかなりのお気に入り一本で、子どもの頃に見たときゃ
そりゃもうビビりまくってたね。一切の救いのない話で
しかもこんな話がゴールデンタイムでやってんだから驚きだ。
息苦しくなりそうな閉鎖空間の中、異形のものに追いかけられるってのは
最高のシチュエーションであり、かつ短い尺の都合上、スピード感ある展開。
何よりも正常な世界が目と鼻のの先にあるのに、そこまで至ることができないという
希望が見える絶望は当時としてはかなり珍しかったなぁ。

2012年10月3日水曜日

ハリー・パウエル


小説、映画「狩人の夜」に登場。

両手の指に「LOVE(愛)」と「HATE(憎悪)」の入れ墨を持つ伝道師。
説教をする際には、その入れ墨を使って「善と悪」「愛と憎しみ」の闘争を説く。
その正体は未亡人ばかりを狙う連続殺人鬼。彼はセックスに対し異常ともいえる嫌悪を抱いており、
神の正義の名の下に未亡人たちを殺害し、その金を奪うという凶悪犯罪を繰り返していた。
1930年代、大恐慌の時代。オハイオ川沿岸のクリーサップ埠頭に住むベン・ハーパーは、
生活苦から強盗殺人を犯した。警察から逃れて家族の元に辿り着いたベンは、
強奪した1万ドルの在り処を息子のジョンと娘のパールに告げる。
その直後、ベンは警察に逮捕された。最終的にベンは強盗殺人の罪で死刑判決を受け、
刑務所に送られる。ちょうどその頃、車を盗難した罪でベンと同じ雑居房に収容された
伝道師ハリーはベンから盗んだ大金の在り処を聞き出そうとする。
その後、ジョンの寝言である「小さい子供がそれらを導く」という言葉から、
ベンの子供たちが何か知っているのではないかと推測する。
結局ベンは誰にも大金の在り処を告げることなく処刑された。
すぐに釈放されたハリーは、真っ先にベンの家族が住むクリーサップの街を訪れる。
ハーパー家には未亡人となったウィラと、その子供であるジョンとパールが残されていた。
夫が逮捕され、地元のアイスクリーム屋で働いて生計を立てるようになったウィラに対し、
ハリーは自らの素性を偽って接近する。ハリーはその話術でクリーサップの住民の信頼を勝ち取り、
ウィラと再婚する。しかしそんな伝道師に対し、ジョンだけは警戒し続けた。
新婚初夜、夫となったハリーに抱かれようとするウィラを、ハリーは頑なに拒絶する。
二人の間の結婚生活は、ハリーの常軌を逸した道徳観念に縛られた空虚なものだった。
新しく子供たちの父親になったハリーは、ウィラの見ていない隙に彼らを脅迫し、
ベンが隠した大金の在り処を聞き出そうとする。ハリーの隠された動機を
皆に告げるジョンだが、ハリーに心酔する大人たちは彼の言うことに耳を貸そうとしない。
そんな或る日、パールを苛めて隠し場所を言わせようとするハリーの姿をウィラが目撃する。
その夜、真実を知ったウィラは寝室でハリーに殺害される。
周囲の人々にウィラが失踪したと告げ同情を買うハリーは、
ますます子供たちを虐待するようになる。虐待に耐えかねて、ついにジョンは
亡父が遺した大金の在り処を告げる。大金はパールが肌身離さず持ち歩いていた
人形に隠されていたのだ。子供たちを殺害しようとするハリーに対し、
ジョンは一瞬の隙を突いてパールを連れて逃走することに成功する。
カヌーで大河を下っていく二人を追跡するハリー。兄妹が逃げることに心身共に疲れきった頃、
二人は信心深い老婦人レイチェルに保護される。彼女の元にはジョンとパール以外にも、
行き場を失った多くの子供たちが身を寄せていた。やがてレイチェルの所に子供たちの
居場所を嗅ぎつけたハリーが現れる。ハリーはレイチェルに得意の刺青を用いた
説教を行い歓心を買おうとするが、洞察力に優れたレイチェルによってその邪悪な本性を見抜かれる。
猟銃を持ち出し追い返そうとするレイチェルを見て、ハリーは一度退散する。
その夜、レイチェルの家の庭に子供たちを捕まえるため、ハリーが再び姿を見せる。
子供たちを守るためにベランダで寝ずの番をするレイチェルと、
彼女を遠くから用心深く観察するハリー。二人は庭を挟んで聖歌503番「主の御手に頼る日は」を唱和する。
歌が終わる頃、レイチェルを心配した娘の一人が蝋燭を持って彼女の側に近づいてくる。
不意の明かりで目が眩んだレイチェルは、闇に紛れたハリーを見失ってしまう。
家の中に戻ったレイチェルは居間に子供たちを集め、来るべきハリーの来襲に備える。
そこに現れたハリーは、ジョンとパールを引き渡すようにレイチェルを脅迫する。
しかしレイチェルはハリーの要求を拒絶し、彼に対して発砲する。
獣のような叫び声を上げ、負傷したハリーはレイチェルの家から逃走する。
レイチェルはすぐに警察に連絡し、逃げ出したハリーを捕まえるように要請する。
翌朝現場に駆けつけた警官たちによって、納屋に潜んでいたハリーが逮捕された。
逮捕されるハリーの姿に、ジョンの心で亡き父の姿が重なる。
パールの人形を持って、ハリーと彼を確保した警官たちに詰め寄る。
「こんなもの要らない」と涙を流しながら、ジョンは人形をハリーに叩きつける。
周囲に舞い散る1万ドルの札束。裕福な生活よりも愛情を求めていたジョンにとって、
金への欲望からその身を貶めた父や、殺人をするハリーの行動は許容し難く、
ましてやその金によって今回の事件が起きたのであり、そんな彼らに感情が爆発したのだ。
そんなジョンをレイチェルは優しく宥める。その後、ハリーは裁判所で複数の殺人罪で
有罪判決を受け、街を去った。ジョンとパールはレイチェルの下で過去を振り払うべく
幸せな生活へとその一歩を踏み出すのであった・・・

モノクロの画面に映し出されるのんびりした田舎の風景、
月明かりの下、追手から逃げる兄妹。虫や小動物の声が響く中、
月を背後に従えながら、狂気の伝道師が迫る。
映画「狩人の夜」はサスペンス映画ながら、日常的風景の中に幻想的な映像と寓話が混じった
独特な作風が特徴であり、またこの伝道師の男も独特である。
ただの悪人ならまだしも、歪んだ執着とそれを隠す知恵を持ち、
善人のフリをしながら、他者の日常に溶け込んでいく。
そして何よりも彼自身の内面、生い立ちは明かされない。
何がそこまで女性への憎しみを駆り立てるのか、全く分からないのだ。
この牧師の皮を被った正体不明の男は、金への即物的欲から兄妹を追いかけてくるのだが、
その顔には覇気がなく空虚な表情を浮かべており、本当に金が欲しいのか疑いたくなってくる。
狂気と欲を合わせ持つサイコな殺人鬼にしては些か説明不足、中途半端な具合だが、
しかし劇中のいくつかのシーンを見ていくうちに、この中途半端がなんなのかわかってくる。
つまるところ男の存在は現実の子どもたちにとっての恐怖の象徴をしているのだ。
夜、子ども部屋に迫る大きな影。これを少年ジョンは「ただの人だ」という。
逃亡した先の納屋に現れたハリーを見てジョンは「あいつは寝ないんだ」という。
影のシーンは空想の恐怖を打ち消すように「あれは○○だ」と考えようとするのは
現実の子どももよくやることでしょう(少なくとも筆者はそうだった)
そして納屋のシーンは、ただの人間であるはずの牧師が一転して、怪物染みて見える。
現実の恐怖が空想の恐怖へと切り替わっているのだ。これは子どもでなくても、
見慣れているはずの場所が夜になるとまるで違う場所に見えるのと同じこと。
目に見えるものと目に見えないもの、現実と空想の狭間に、子どもは恐怖を見出す。
この中途半端さが、この男を怪物的存在へと変えているのだ。
彼以降ではないだろうか、得体の知れない悪党が出始めたのは。
もちろん後のサスペンス映画に与えた影響は大きく、彼を演じたロバート・ミッチャムは
恐怖の岬」にて、インスパイアされたと思しき「正義と真実」の刺青を持つ男を演じました。

2011年11月30日水曜日

さっちゃん

アニメ「学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!
第8話「さっちゃんのうわさ」に登場。

童謡「さっちゃん」の噂話をした夜、聞いた(話した)者の枕元に現れる存在。
噂話をした(聞いた)夜、突如現れて相手を金縛りにし
身動きできなくした後、相手の手足を鎌でちょん切ってしまう。
これを避けるにはバナナか、その絵を描いて身の回りに置かなくてはならない。
噂話をした少女は絵を描くのを忘れてしまったが、
母が夜食用にバナナを置いていったため、寸前で助かった。
童謡ではバナナが好きとあるが、バナナを見た瞬間
絶叫しながら逃げ出した様子から、実際にはバナナが苦手なようである。
たまたま件の少女の話を聞いてしまった学校の担任の先生が、
手足を刈り取られて死んだことから、話を聞いたものは無差別に襲うようである。

子供向け番組「ポンキッキーズ」で放送されていた2~3分程度のアニメながら
当時見ていた子どもたちに鮮烈な恐怖を残していった「花子さんがきた!!」。
老若男女問わず、話聞いたやつは皆手足刈り取るオバケなのか
幽霊なのか、妖怪なのかもわからない存在、それが「さっちゃん」。
複雑怪奇な上に、現実的な「手足ちょん切る」という恐怖が合わさるという発想は
いつだったか書いたガメラの「大悪獣ギロン」に通じるものがある。
ちなみに筆者は最近「自分が怖いと思えるのは現実だ。フィクションなんてナンボのもんよ
なんて最近思っちゃったりして世の中を舐め腐った感慨を抱いていた。
けど「本当にそうなのか?」と考えると「そうじゃないだろ」と思え、
「これじゃいかん」と原点に帰るべく童心に返って
自分が怖がっていたものを顧みてみると出るわ出るわ。
この記事を書いたのもそういった経緯で、おかげで現実も怖いけど、
フィクションも怖いと再認識できました。

2011年11月20日日曜日

くま女

WEBショートシネマ「稲川淳二のショートホラーシネマ 伝説のホラー
第三話「くま女」に登場。

巷に出没する怪人物。「熊のぬいぐるみを持った女」から「くま女」と呼ばれている。
長い髪の女性で、ボロのようなものを纏い
そのボサボサの髪から覗く顔の全貌はわからないが、
非常に不気味な雰囲気を醸し出している。
手には名前の由来である熊のぬいぐるみと洋裁鋏を持っており、
出会った相手の体の一部を奪うといわれている。
実際は相手の体の一部が欲しいのではなく、人が身に着けている装飾品
(指輪やネックレス、ピアスやキーホルダーなど)が目的。
指輪なら指を切り落として指ごと奪う、ピアスなら耳ごとなど、
結果的に相手の体の一部を奪うため、間違って伝聞されてきた。
そのため装飾品を身に着けていない人間を襲うことはなく、
また襲われた人間が装飾品を手放せば、危害を加えることはない。
奪った装飾品は全て身に着け、その全てに異様なほど執着しており、
数個落としただけでも全て拾い集めなければ気が済まないほどで、
また相手の装飾品を全て奪うまで執拗に追いかけるなど、
装飾品に対して並々ならぬ執念を持つ。

稲川淳二がストーリーテラーを務め、短いながらもおどろおどろしい怪奇話が
展開されるショートホラーシネマ「稲川淳二の伝説のホラー(ビデオ題)」。
筆者が11歳かそこらでTVでやっていたのを見たのだが、何よりもこの第三話が怖かった。
基本、稲川淳二関連の作品は皆「幽霊をテーマにしたものが多い」と
当時考えていた筆者にとって、衝撃的だった。
「幽霊」という夢現の存在にはまだ「不確かさ」があるが、
「異常者」はそれがない。我々人類がどんな社会を作っても「異常者」は
まるで影のように存在し続けており、現実に則した隣にいるかもしれない恐怖ほど
恐ろしいものはないと考えていた11歳の頃。
今考えてみると、「お前のような異常者がいるか!」と言えるが
やはり「異常者」という存在は、普遍的に怖いものだなぁと常々思う。

2011年10月31日月曜日

ファロン・クラッシュ

映画「XYZマーダーズ」に登場。

アーサー・コディッシュとコンビを組んでいる殺し屋。
禿頭の大男。害虫駆除業者を装っており、トラックにデカデカと書いてある
モットーは「どんなものでも殺します」。
力技を得意とし、不死身といえるほど打たれ強いこともあって
執念深く、執拗に相手を追いつめる。
オーデガード・トレンド警備会社にて、二人の男が密談を交わしていた。
一人は経営者であるオーデガード、もう一人はレナルドという男。
実はオーデガードは共同経営者のトレンドに無断で、会社を売却しようとしていたのだ。
これを影で見ていたトレンドは、この身勝手な行いに腹を立て
殺し屋を使って、オーデガード抹殺を企む。
雇われた殺し屋のクラッシュとコディッシュは依頼主の希望通り、
オーデガードの殺害に成功するも、マヌケな2人はオーデガードだけでなく
隣のアパートから様子を見に来た依頼主のトレンドまで間違えて殺してしまう。
気づいたときには後の祭りであり、全てをなかったことにしようとする2人だが
死体を片付けている姿をトレンド夫人にアパートの窓から覗かれていた。
即座に夫人の始末にかかる二人だが、同アパートに住む社員であるヴィック、
同じくアパートの住人であり、ヴィックがモーションをかけている女性ナンシーの
部屋に間違えて入り込んでしまう。トレンド夫人は逃げ出したが、
ウルグアイ行きの荷物箱にとじ込められる。
やぶれかぶれになった二人はナンシーを連れ去ってしまう。
事の次第がわかったヴィックは、ナンシーを取り戻すべく後を追う。
最期は激しいカー・チェースの末、アーサーは死亡。
ファロンは橋へとトラックごと激突。死んだかと思われたが
不屈の精神で立ち上がり、ヴィックを殺そうとするが
後一歩のところで橋から落ちて死亡した。

サム・ライミ監督が贈るホラーコメディ映画「XYZマーダーズ」。
本作の目玉である凸凹殺し屋コンビの片割れ、ファロンを紹介。
グワハハハッ!」という如何にもな笑い声を上げながら
体格、腕力に物云わして、追いかけてくる。
こう書くとただのアホにしか聞こえないが、
実は彼はターゲットの追い立て役で、追いつめたその先に待つ
アーサーがビリビリッ!とターゲットにトドメを刺すという、
意外と知的な作戦を講じており、とても恐ろしい存在のようだが、
正直に言うと、やはり致命的なほどバカなのでそんなことはない。
だが基本、筋肉バカ特有の「当たって砕けろ!」精神なため
どんなことが起きても動じない不屈の精神と、
有り余るほどのパワーと体力で攻めて攻めて攻めまくる。
コンビの肉体労働担当のようだが、基本的に物を壊す以外に
その筋力が役立つことは皆無である。
ちなみに意外と反射神経が良く、投擲されるものを悉く躱す上に
パンチ一発で叩き落とすといった器用な特技があり、
同じく投擲された花瓶を割って、中の花だけを掴み取るという
地味な荒業を持っている。

アーサー・コディッシュ

映画「XYZマーダーズ」に登場。

ファロン・クラッシュとコンビを組んでいる殺し屋。
帽子から飛び出すボサボサ頭と、口髭が特徴。
害虫駆除業者を装っており、トラックにデカデカと書いてあるモットーは
「どんなものでも殺します」。小型発電機を用いて、相手を感電死させることに拘る。
オーデガード・トレンド警備会社にて、二人の男が密談を交わしていた。
一人は経営者であるオーデガード、もう一人はレナルドという男。
実はオーデガードは共同経営者のトレンドに無断で、会社を売却しようとしていたのだ。
これを影で見ていたトレンドは、この身勝手な行いに腹を立て
殺し屋を使って、オーデガード抹殺を企む。
雇われた殺し屋のクラッシュとコディッシュは依頼主の希望通り、
オーデガードの殺害に成功するも、マヌケな2人はオーデガードだけでなく
隣のアパートから様子を見に来た依頼主のトレンドまで間違えて殺してしまう。
気づいたときには後の祭りであり、全てをなかったことにしようとする2人だが
死体を片付けている姿をトレンド夫人にアパートの窓から覗かれていた。
即座に夫人の始末にかかる二人だが、同アパートに住む社員であるヴィック、
同じくアパートの住人であり、ヴィックがモーションをかけている女性ナンシーの
部屋に間違えて入り込んでしまう。トレンド夫人は逃げ出したが、
ウルグアイ行きの荷物箱にとじ込められる。
やぶれかぶれになった二人はナンシーを連れ去ってしまう。
事の次第がわかったヴィックは、ナンシーを取り戻すべく後を追う。
最期は激しいカー・チェースの末、トラックの屋根にしがみつくヴィックを
始末すべく、愛用の小型発電機で感電死させようと
屋根で立ち上がった直後、陸橋に激突して死亡した。

常識破りのスーパーバイオレンスコメディ「XYZマーダーズ」。
スーパーとかバイオレンスなんて言ってるけど、
内容はコテコテのドタバタコメディ。
コメディ最高!バイオレンスなんて最初からなかったんや!
本作の目玉である凸凹殺し屋コンビの片割れ、アーサーを紹介。
常に「イヒヒヒヒッ!!!」なんて笑いながら
殺すときは自前の小型発電機バチバチ言わせながら、迫ってくる。
こう書くと怖く聞こえるが、基本的に致命的なほどアホなので全然怖くない。
コメディ映画お決まりの立ち上がった直後に障害物に激突という
ベタなやられ方で退場してしまう彼だが、
殺人鬼特有の突発的ワープ移動法を会得しており、
やたらと感が良かったりなど、意外と侮りがたい部分がある。
コンビの頭脳労働担当のようだが、ナンシーの声真似をする(全然似ていない)、
とりあえず目の前に人が来たら感電死させるなど、とてもそうは思えない。
と、まぁこんな感じのなかなかユニークな人物である。
ちなみに力のファロン、技のコディッシュと、コンビとしてはバランスが取れている。

2011年9月18日日曜日

ゾルフ・J・キンブリー

漫画、アニメ「鋼の錬金術師」に登場。

軍部の中佐。「紅蓮」の二つ名を持つ国家錬金術師。
白いスーツとコート、帽子を愛用する総髪・吊り目の男。
普段は紳士然として慇懃無礼にも似た言動の人物だが、
本性は殺人に美意識を見出すサイコキラー。
しかし単なる快楽殺人鬼というわけではなく、
「自らの意志に基づいて美しく生きる」という行動理念に従っており、
同時に「意志を貫く人は好き」として、それに該当する人物には
敵や殺す対象でも敬意を払い、「死から目を背けず忘れない」という考えから
自らが殺した相手を記憶するなど殺人に関して独自の理念を持つ。
また自身がこの世界にとって異端の存在であると自覚しており、
そのため感情論に左右されない、合理的な考えを示すこともある。
攻撃方法は爆発の錬金術。掌に刻まれた錬成陣
(右手に下向きの三角と太陽の記号、左手に上向きの三角と月の記号)を
合わせて対象物に触れ、爆発性のある物質へ作り変えるというもの。
錬金術の特性に加え、爆発に対する造詣も深いことから
「爆弾狂のキンブリー」の異名を持つ。
イシュヴァール殲滅戦で活躍した国家錬金術師の一人として、
裏では軍上層部より賢者の石を貸与され、より大きな戦果を挙げていた。
殲滅戦後、賢者の石の返還を迫った上官達を爆殺する。
このことでホムンクルスに目をつけられ、
また自らの特性を最大限にバックアップしてくれること、
「大きな世界の流れの中で人間とホムンクルスの
どちらが生き残る力を持つのか」という好奇心、
異端者としての己の存在の是非を賭けるべく協力者となった。
その後、表向き上官殺しの罪で中央刑務所に服役していたが、
「傷の男」の抹殺と逃亡の疑いのあるマルコーの捕獲、
それに伴う報復として村の抹消のため出所する。
出所後早々に「傷の男」と戦い負けるが、すぐに戦線復帰し、
ブリッグズ砦に部下とレイヴンを連れて現れる。
しかしエルリック兄弟(及びブリッグズ兵)と「傷の男」が手を結んだため、取り逃がす。
「傷の男」を追おうとするが、プライドの命令で、
ドラクマ軍を騙してブリッグズ砦に侵攻させ、ブリッグズにドラクマ軍を
壊滅させることで北の「血の紋」を刻み、国土錬成陣を完成させる。
「約束の日」、セントラル近郊のスラムで、エルリック兄弟やホーエンハイムの策で
捕まったプライドを助けに現れる。そこでハインケルに重傷を負わせ、
アルフォンスと戦うが、彼とマルコーの作戦によって回復したハインケルに隙を突かれ、
致命傷を負い、最期はプライドに取り込まれる。しかし他の魂と違い自我を保ち続けており、
その後のプライドとエドワードの戦いにおいて、エドワードの肉体を奪おうとした
プライドの前に現れ、己の美学に反するホムンクルスの醜態を咎めた。
その後、プライドの肉体の崩壊と共に笑みを浮かべながら消滅した。

私からすれば、あなたがたの方が理解できない
 戦場と言う特殊な場に、正当性を求める方がおかしい
 錬金術で殺したら外道か? 銃で殺したら上等か?
 それとも、一人二人なら殺す覚悟はあったが何千何万は耐えられないと?
 自らの意思で軍服を着た時に、すでに覚悟があったはずではないか?
 嫌なら最初からこんなもの着なければいい
 自ら進んだ道で、何を今更被害者ぶるのか
 自分を哀れむくらいなら、最初から人を殺すな
 
死から目を背けるな、前を見ろ
 貴方が殺す人々のその姿を正面から見ろ
 そして忘れるな、忘れるな、忘れるな。奴らも貴方の事を忘れない

ああ、いい音だ…身体の底に響く実にいい音だ
 脊髄が悲しく踊り鼓膜が歓喜に震える
 それも常に死と隣り合わせのこの地で感じる事のできる喜び
  何と充実した仕事か!

自分が今のこの世界において異端である事はとっくにわかっています
 しかし私のような者が生き残れば それは世界が私を認めたという事
 生き残りを…まさに存在をかけた闘い
 こんなやりがいのある人生はそうそうありませんよ

世界の変わる様を見てみたい
 覚悟と覚悟 意思と意思 命と命 信念と信念のぶつかりあい
 人間側と『進化した人間』と名乗る人造人間側のどちらが勝つのか見てみたい

「鋼の錬金術師」内の稀代の悪役、キンブリー。
彼の言葉の端々からわかるように、
彼は異端者だが、同時に物事の本質を捉えている。
人の浅ましい自己欺瞞を露にする「殺人は殺人」という非常にシンプルな答え、
「戦争やってんだから、人殺すの当たり前でしょ?」という
当然と言えばそうだが、認めたくない事実を我々読者に突き付けてくる。
ちなみに筆者は彼が活躍する前、当時初代TVアニメ版を見ていたときは
ただのアブナイおっさんで、原作も大体同じような感じで終わるかと思っていた。

2011年8月28日日曜日

夜神 月(やがみ らいと)

漫画、アニメ「DEATH NOTE」に登場。

大量殺人犯「キラ」となって、
新しい世界を創世し、「神」になろうとした青年。
類い稀なる天才的な頭脳の持ち主であり、
その他にも、イケメン、手先が器用、多数の女子と恋人関係にあり、
才色兼備の優れた才能の持ち主である。
警察庁幹部の父を持ち、母と妹の四人家族の長男であり、
恵まれた家庭環境で生まれ育つ。
しかし人々が起こす犯罪や悪行に心の中で、
強い不快感を感じながら、鬱屈した日々を過ごしていた。
父と同じように警察官僚になろうとしていたが、
当時高校生だったある日、死神リュークが地上に落とした
名前を書くだけで、その人物を殺害できるノート「デスノート」を拾った。
これを契機に世界中の犯罪者達を自分が裁くことで、
「犯罪者のいない理想の世界」を創造しようとする。
日常では完璧な優等生として穏やかに振る舞い、
また周囲にもそう認知されている中で、
思い通りにならない事には怒りを露わにするなど、
幼稚な部分があり、傲慢かつ独善的な思考が目立つ。
自分の監視についたFBI捜査官レイ・ペンバーの殺害後は
己の身を守るための殺人をも厭わなくなり、
自分をキラとして疑う者には周到な計画の下で容赦なく粛清を加え、
自称「新世界の神」として、独裁者の姿を露わにしていく。
その後、次第に「犯罪者を粛清する存在」を
必然的に知ることになった世間から「キラ」と呼ばれるようになった。
やがて、キラを大量殺人犯として追っている天才的名探偵Lと対峙し、
熾烈な心理戦を繰り広げ、Lを殺害することに成功する。
東応大学卒業後、警察庁に入庁、情報通信局情報管理課に所属。
自身の策略により、自らが死に追いやった
Lの後継者(2代目L)として成り済まし、
キラ捜査を続け、捜査本部を撹乱し続けた。
社会人となるまでの4年間で一層傲慢になり、
自分の思想は全人類に受け入れられるはずだという
絶対的な確信の下に新世界の実現に邁進する。
新世界実現のためには、自分の邪魔をする者のみならず、
デスノートの存在を知る者、自分の協力者でさえ
邪魔になれば躊躇なく抹殺する。
YB倉庫でのニアとの対峙の際に魅上を使って
倉庫内にいる日本捜査本部やSPKのメンバー全員の抹殺を謀る。
しかし魅上がメロによって誘拐された高田を消そうと
独自で動いたことがきっかけで、
ニア側が本物のデスノートの存在に気付き、丸ごとノートを偽装。
これによって逆に追い詰められ、キラであることを自供。
自身の行動・思想が崇高なものであること、
世界には自分が必要だということを訴えかけるが
ニアに「クレイジーな大量殺人犯」と一蹴される。
ノートの切れ端を使ってニア殺害を試みるも松田の銃撃に阻まれる。
最期はリュークによってノートに名前を書かれ、心臓麻痺で死亡した。

世の中に知らしめるんだ・・・
 正義の裁きをくだす者がいるって事を!

僕は、新世界の神になる!

駄目だこいつ・・・早くなんとかしないと・・・

計画通り

「新世界の神」になれなかった天才青年、夜神月。
私が感じたことはただ一つ、彼は酷いくらい純粋なんだなぁ。
それこそが「馬鹿」がつくほど、自分の矛盾に気づかないくらい。
人は殺人を行ったことにより、人という存在ではなくなり、
人をこれを「殺人鬼」という。
この過程はライト自身にも当てはまり、
本人は「神」になるつもりだったけど、
ものの見事に「殺人鬼」の道を歩いている。
もし彼の言う「神」という存在に成れたとしても
「殺人鬼」と「神」の両者は共通して
人という存在ではなくなっているのだ。
こう書くとはコインの裏表のような関係とも思えるが、
同時に全く違うものでもある。
何故かというと、彼は別の「神」になる道を選べたからだ。
彼が元々望んでいたのは「父と同じ警察への道」であり、
警察に入ったからといって、すぐに平和な世界に変えれる
理由にはならないが、少なくとも「殺人鬼」と
同じことをする必要はなかったわけだ。
そう考えると彼は良くも悪くも「人として出来損ない」であり、
また「出来損ないのヒーロー」でもあり、「出来損ないの悪党」でもある。
このどっちつかずな辺りが彼の魅力なのだろうか
そういう意味で彼の存在はとてもユニークである。

2010年4月19日月曜日

スカーマン

映画「CUT カット!」に登場。

「熱い血(Hot blood)」というホラー映画に登場する殺人鬼。
ラバーマスクを被り、巨大な鋏を凶器として使う。
架空の存在だったが、フィルムから誕生し、映画に関わる者全てを殺していく。
1985年、ホラー映画「熱い血」の撮影中に殺人事件が発生した。
女性監督ヒラリーがスカーマン役の男優ブラッドによって、舌を切り落とされたのだ。
主演女優ヴァネッサも襲われたが逆にブラッドを撃退、ブラッドは死んだ。
あたかも映画が現実になったかのような惨劇に撮影は中止、フィルムはお蔵入りとなった。
それを完成させようとした監督も収録部分の上映中に何者かによって惨殺され、
さらにプロデューサーは深夜の編集室で感電死した。
血塗られた未完成映画「熱い血」は、いつしか一部のホラー・マニアの間で
“呪いの映画”として語り継がれるようになっていた。
それから12年後、大学の映画学科の女学生ラフィをリーダーとする
映画学科の学生グループが、「熱い血」を完成させることになった。
当時『熱い血』の助監督を務めていた講師ロスマンの反対にもかかわらず、
学生たちは何かに取り憑かれたように忌わしい映画を
完成させることにのめりこんでゆく。
既に他界した「熱い血」のプロデューサーの未亡人マーサも
また得体の知れない不安を感じたものの、スタッフの説得に折れ、
渋々と資金を出すことになり、遂に伝説の映画の製作が再会する。
ラフィはプロデューサーのヘスターと共に、オリジナル版の主演を務め、
今はハリウッド女優として活躍しているヴァネッサの再出演交渉に乗り出した。
やがてヴァネッサが出演を承諾し、12年ぶりに『熱い血』の撮影が再開。
ロケ地には、12年前と同じ場所が選ばれた。
撮影クルーは現場に漂う空気を無視して仕事に取りかかる。
しかし、撮影が始まって間もなく、クルーが次々と行方不明に。
あの殺人鬼が再び撮影現場に現れ、凶器のハサミで撮影クルーを
1人また1人と切り刻んでいたのだ。犯人は予想外の人物だった。
死んだはずの男優がフィルムに怨念として残り、実体化して蘇ったのだ。
超常的存在の前に為す術がないかと思われたが、
フィルムを燃やすことで殺人鬼を倒すことが出来た。
しかしその後、別の場所でオリジナルのフィルムとは
別のフィルムが上映されようとしていた…

真面目に犯人探しなんてのは無駄なんだと実感できる
オーストラリアの映画「カット!」。
なんてたって相手は超常的存在なのだから
謎解きがあるようで全然ないのである。
しかも後半になるとまるで某スプリングウッドのロリコンみたいになってしまう。
挙句、スラッシャー映画の殺人鬼にあるまじき行動を起こしたりと
色々な意味で映画の内容はボロボロである。
しかしボロボロな内容でも、こんな馬鹿げた殺人鬼が私は好きである。

2010年3月31日水曜日

ガンサー・ストレーカー

映画、小説「ファンハウス 惨劇の館」に登場。

カーニバルの一座の一人。コンラッドの息子であり、
「ファンハウス」の客寄せとして働いている奇形の男。
コンラッドはかつて妻のエレン・ハーパーにより
自分の息子である奇形児ヴィクターを殺されたことで怨み続け、
エレンへの復讐としてエレンの子どもを陵辱するために
同じカーニバルに所属するジーナと結婚し、ガンサーを生み出した。
性に対する欲望と殺戮に対する欲望が内に渦巻くガンサーは
成人するとカーニバルの行く先々で衝動的に人を殺すようになる。
そして遂にカーニバルはエレンたちの住む町を見つけ、
エレンの娘エイミー、息子ジョーイへと魔の手を伸ばす。
エイミーの友人が次々と手にかかるも、エイミーの反撃により
コンラッドは死に、ガンサーはファンハウスの仕掛けに挟まれて死亡した。

映画よりもノベライズ版の方が面白いという
変わった作品「ファンハウス 惨劇の館」。
映画版は何の変哲もないスラッシャー映画だが
これが小説になるとオリジナルストーリーによる
ヒロインの母とコンラッドとの因縁、
これまで繰り返されてきた殺人など物語の濃さが120%増量されており、
著者であるディーン・R・クーンツの腕の賜物であるのだろう。
にしてもこのガンサーの特殊メイクは本当によく出来ている。

2010年3月9日火曜日

ドニー

ドラマ「Xファイル」第37話「フェチシズム
第146話「オリソン」 に登場。

本名ドナルド・ファスター。ネクロフィリアで葬儀業を勤めていたが
埋葬されたばかりの若い女性の遺体から、髪の毛や爪を
奪っていたことがバレ、解雇されてしまう。
以来、彼は自らの欲望を満たすために殺人を繰り返すことに。
連続する遺体の冒涜事件解決のためにミネアポリス署からの
要請により現地に向かったモルダーとスカリー。
異常な状況から宇宙人がこの事件に関わりがあるのではという
疑いからだったがモルダーは人間による犯行だと断定し、
いずれ犯行はエスカレートするだろうと判断する。
モルダーの予想通り、ドニーは家に連れ込んだ街娼を殺害していた。
その次に受講していた成人講座で目をつけた女性に襲い掛かるが、
逃げられてしまい、警察に拘留されてしまう。
そこへモルダーとスカリーが偶然訪れ、拘置室にいた彼は
スカリーの美しい髪に目をつけた。告訴を取り下げられて、
精神鑑定後、釈放された彼。その後、スカリーに不審な電話がかかり始める。
その頃、切断された指のマニキュアから指紋が発見され、
ドニーに容疑が固まり、モルダーはドニーの家へ乗り込むが
犯人は去った後だった。スカリーはワシントンから戻り、
空港から車で支局に向かう途中、ドニーにより拉致監禁されてしまう。
モルダーはドニーの死んだ母親のフロリダの家が怪しいと、急行すると
犯人であるドニーと囚われたスカリーを発見。スカリーを無事救出するのであった。
その後ドニーはイリノイ州の刑務所へと身柄を拘束された。
しかし数年後、あまりに罪深い罪人に自ら裁きを下すことが
神から与えられた義務だと考えているオリソン牧師により脱獄させられる。
またしても犯行を重ねるドニーに、オリソン牧師は裁きを下そうとするが、
ドニーに宿る悪魔の存在により殺されてしまう。
その後、ドニーは彼の手から逃れた唯一の女性、スカリーへと魔の手を伸ばす。
しかしモルダーとスカリーに追い詰められた彼は、スカリーにより射殺される。
皮肉にも犠牲者となるはずだったスカリーによって引導を渡されることとなった…

日常の中の恐怖は、Xファイルのどの事件にも増して恐ろしい
そんなモルダーの言葉で終わる「フェチズム」の回と
再来する悪夢と悪魔な「オリソン」の回。
事件に関わることで日常的に死に触れる機会が多いスカリーが
どうしても我慢ならない相手がドニーである。
死体愛好者であり殺人犯な彼の犯行による犠牲者の姿に
スカリーは猛烈な嫌悪感を抱き、そして自身もその毒牙に掛かりそうになり
モルダーによって助けられるも、彼女のトラウマとなる。
そして前よりも恐ろしい存在となって帰ってきたドニーを
スカリーはなんとか倒すことに成功する。お分かりのように
日常的恐怖の恐ろしさに触れる回と悪魔に憑かれた(?)男の回、
この二つのエピソードはスカリーの成長譚でもある。
悪魔に憑かれたドニーの存在はなんでも殺人事件に巻き込まれた
被害者から見た被疑者の姿は悪魔に見えるとのことで
製作スタッフがそれを擬物表現にして描いたとか。

2009年11月2日月曜日

シックス・シューター

映画「パペット・マスター」シリーズに登場。

伝説の人形師アンドレ・トゥーロンが秘術を持って
作り出した命ある生きた人形(パペット)たちの一体。
六本の腕があり、六丁の拳銃を使いこなす。
ベルリンにてトゥーロンが講演していた
悪役のヒトラーを倒すという、
ナチスを批判する人形劇の主役を演じていた。
後にサイボーグのような姿に変わり、光線銃を使うようになる。
誰の魂が宿っているのか、いつ製作されたかはわかっていない。

イーヒヒヒ!と笑うガンマン人形、シックス・シューター。
どこぞの蜘蛛男みたくスパイダーウォークしたり、
やたらと鮮やかな動きで銃を撃ったり、
撃った後もこれまた鮮やかにホルスターに銃を仕舞ったりと
パペットたちの中でも一二を争うほどの人気者である。
ちなみに彼の銃撃シーンは全てストップモーションで行われており
これがまた驚くほど芸細で、その後の作品でも活かせよ!と
言いたくなるぐらいとても素晴らしい動きをしている。

トーチ(鉄人バーベQ)

映画「パペット・マスター」シリーズに登場。

伝説の人形師アンドレ・トゥーロンが秘術を持って
作り出した命ある生きた人形(パペット)たちの一体。
ドイツ兵をモデルにしており、右腕が火炎放射機になっているパペット。
誰の魂が宿っているのか、いつ製作されたかはわかっていない。

唸り声が特徴的なブリキ野郎(?)トーチ。
俺のこの手が真っ赤に燃え…じゃなかった
右腕の必殺の炎が彼の代名詞だ!
ちなみにパペットたちの中でもかなりの人気を誇る彼だが
本編中、彼のことが詳しく語られていないのは何故だー!

2009年11月1日日曜日

トネラー(ドリラー将軍)

映画「パペット・マスター」シリーズに登場。

伝説の人形師アンドレ・トゥーロンが秘術を持って
作り出した命ある生きた人形(パペット)たちの一体。
頭のドリルでの突進攻撃を武器とするパペット。
人形になる前はトゥーロンの友人の一人で、ナチスに捕縛され
岩塩坑で強制労働させられていたジョゼフ・セバスチャンという米兵。

ドリルは漢のロマンとはよくいったもので
この辺は、海外問わず共通するものがあるよう。
ドリラー将軍ことトネラーはそんな夢が一杯詰まった人形である。

2009年10月31日土曜日

リーチ・ウーマン(ディープ・スローター)

映画「パペット・マスター」シリーズに登場。

伝説の人形師アンドレ・トゥーロンが秘術を持って
作り出した命ある生きた人形(パペット)たちの一体。
唯一の女性型のパペットで、口から蛭を吐いて攻撃する他、ナイフ等も扱う。
トゥーロンの妻エルザの命が吹き込まれている。
エルザは本名をイルザというスイス人で、スイスの大使の父親を持つ。
1902年のある夜、彼女の父親がパリにいる間、
偶然にも彼女はマジック・ショーで将来の夫となるトゥーロンと出会う。
その後彼女は、誘拐されそうになったとき
トゥーロンと彼の引き連れる6体のパペットたちによって救われる。
これを機にイルザはトゥーロンを深く愛し、
彼の妻エルザとしての人生を歩み始める。
その後エルザとトゥーロンは、ベルリンを訪れる。
そこで彼女らはナチスの横暴に屈しない三人の友人を得るが
三人はナチスにより殺されてしまう。
トゥーロンは彼らを自身の秘術により、
トネラー、ジェスター、ピン・ヘッドとして蘇らせた。
さらにシックス・シューターも得ることとなる。
4体の人形を引き連れる彼女らの前に、その秘術を狙うナチスが立ちはだかった。
ナチスがトゥーロンとパペットたちの誘拐を止めようとしたエルザは
クラウス少佐によって殺害されてしまう。
トゥーロンは復讐を誓い、彼女をパペットとして蘇らせることとなった。

普通に考えて嫁さんを蛭吐き人形なんぞに作り出せんのか!?
そんなハイセンスでナンセンスなトゥーロン製作リーチ・ウーマン。
筆者としては、一体どこにたくさんの蛭が
格納されているのか知りたいところである。