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2025年3月23日日曜日

ヒルビリー

ゲーム「デッドバイデイライト」に登場。

本名なし。名無しとして育った。
仮称としてマックス・トンプソンJr.(ジュニア)。
全体的に歪な体をした、長身の白人男性。
顔は溶けたように歪んでおり、皮膚のたるみを抑えるためか
ステイプラーで留めてある箇所が見られる。
顔から半身に掛けては、皮膚が引き攣ったような状態が続いている。
声と息遣いが荒く、何らかの発声障害か気道に障害を抱えていると思われる。
若干右足を引き摺るような歩行をし、怪我による後遺症とみられる。
上半身はタンクトップ姿で、露出している腕や肩には
皮膚や筋肉の歪な隆起が見られ、背骨が大きく歪んでいるのがわかる。
ズボンはバックル付きのベルトで抑えているが、少々サイズが合ってないようで
ベルトは2本巻かれ、更にロープで縛ってある。
自らを虐待していた両親や関係者を殺害後、謎の存在「エンティティ」によって
霧の森へと召喚された。以来、生存者たちを狩り続けている。
家畜の屠殺用ハンマーを右手に、左手には巨大なチェーンソーが握られている。
チェーンソー使用中は凄まじい速度で移動し、その回転する刃は
生存者を一撃で瀕死状態にする。使用するまでにタイムラグがあり、
再使用には短時間のクールダウンを挟む必要がある。
一時期は長時間使用するとオーバーヒートして、一時的に使用不可になっていた。
現在は逆にチェーンソーの回転速度や移動速度、クールダウンが短くなる
オーバードライブ状態になり、チェーンソーが強化されるようになっている。
アメリカのとある場所で、マックスとエヴリンのトンプソン夫妻が生活していた。
二人は裕福な地主で、農場「コールドウィンドファーム」を経営していた。
公には、トンプソン家には子どもはいなかった。
しかし実際は望まれない子どもが誕生していた。
その子どもは醜悪な見た目から両親に疎まれ、名付けられずに育てられた。
レンガで仕切られた部屋に閉じ込められ、壁に開けた穴から食事を与えられた。
社会から断絶された子どもは、言語や知識を壁の穴から見えるTVから学んだ。
両親は育つにつれ、強靭になった少年の世話に手を焼いた。
怪力故に、度々壁や拘束具、家具を破壊した。しかしTVを見せれば、大人しくなった。
いつしか両親を呼んで、壁を破壊しながら泣くことはなくなった。
少年はTVから常識を学んだ。自身が如何に普通の子どもと違うのか、
本来家族は愛情をもって接してくれることを。通常の人生との違いを理解した。
彼が好きだった番組は二つ。ビーバーの家族が主役のものと、スーパーヒーローの少年のもの。
二つが共通していたのは家族からの愛。ビーバーの子どもは毎日両親から愛されていた。
スーパーヒーローは義両親の愛を受け、偉大なヒーローとなった。
いつか自分も愛されたいと願ったが、両親は自分よりも家畜に愛情を注ぎ、
名前をつけ、大切に育てた。この願いは怒りに変わった。
そして自分の元にヒーローが現れることを願った。
地元の警察官たちは両親と密接な関係を持っており、賄賂をもらうことで
両親の悪行を黙認しただけではなく、彼を笑い物にした。
いつしかヒーローへの願いは虚しいものになった。
そして少年は、父や母、警察官たちの悪意に対する怒りを抱え続けた。
ある日、父が警察署長とその取り巻きの警官たちを連れて現れた。
少年は度々家畜の虐殺をやらされ、彼らはそれを見世物にしていた。
いつものように少年を愚鈍だと嘲り、罵倒の言葉を浴びせた。
しかしその日は、いつものようにならなかった。
少年は怒りのあまり我を忘れ、気付いたときには家畜以外の血と叫びが溢れた。
父親と警官らを殺害した後、母親を拷問した。
自身に名前があるのか、聞き出したかったのだ。
しかし歯も顎も砕かれた母は喋ることも出来ず、すぐに動かなくなった。
そこへ難を逃れていた署長が、新しい部下や二頭の警察犬と共に戻ってきた。
森へと逃げ込んだ少年への追走は困難を極めた。
嗅覚の鋭い警察犬を避けながら、次々と署長の部下は殺害された。
署長は一計を案じ、「お前の本名を知っている」と叫んだ。
少年は僅かな希望を感じ、無意識に逃げるのをやめた。
そこへ警察犬が飛び掛かってきた。さらに署長もハンマーで襲ってきた。
彼は犬を木に投げつけ、署長の手首を掴んでハンマーを振り払う。
今までにない力を感じながら、少年は署長を押し倒した。
ナイフで反撃しようとする署長に逆にナイフで腹を刺した。
署長の腸を引き釣りだそうとしたが、犬たちの追撃がきた。
犬たちを痛めつけ、走り出した。冷たく暗い森の中を抜け、農場へ向かう。
唸り声、銃撃、様々な音を聞きながら彼は地下室の秘密の部屋、
父親が金を隠した部屋や、両親が自身を閉じ込め虐待した部屋のことを考えていた。
そこでTVを見ながら隠れることを想像した。
同時に父親の持ち物を探れば、自分の本当の名前が見つかるかもしれないと
淡い希望を抱いた。直後、右脹脛を銃で撃たれた。
またしても警察犬が飛び掛かり、彼の腕に噛り付いた。
しかし激しい怒りに駆られる少年の怪力の前に、二頭とも絞殺された。
署長は尚も銃撃しようとするが、弾切れだった。
少年は署長の前に立つと、署長を殴り倒し、今度こそ腸を引き摺りだした。
そして署長は豚の餌になった。何年もの孤独と辱めを味わわされた少年は
自由を、温かい空気が顔に触れるのを感じた。
そしてまだ胸に残る激しい怒りを近くにいた家畜たちに向けた。
少年は隠れ潜んだ。忌まわしい虐待の記憶、思い出深い農場に。
しばらくは逃げ惑う家畜に対して、狂ったように暴力の限りを尽くした。
足枷から解き放たれた彼はトウモロコシ畑を駆け回り、
目に映る全ての生物を追い掛け回し、虐殺した。
両親の遺体は決して見つかる事はなかったが、内臓を抉られ、
拷問された動物の肉片が農場の至る所に散見された。
またチェーンソーの潤滑油の空っぽの缶が散乱していることもあった。
農場では今でも夏の夜にどこからかチェーンソーの音が聞こえるという…

デッドバイデイライト」第三のプレイアブルキラー、ヒルビリー。
田舎者を意味する名前は、おそらく某いけにえの影響だろう。
そこは置いといて、生死をかけた鬼ごっこの絶対のルールは、
攻撃二回でダウンする。無論、一部のパークや特殊能力によって例外はある。
その最初の例外がこのキラー。なんとチェーンソーによる一撃を受けると
即ダウン状態になってしまうのだ。
初期DbDはコイツのチェーンソーの音が聞こえただけで、
震えが止まらなかったサバイバーは少なくなかったはず。
人物像に関しては、陰惨な背景が浮かび上がるキラーだ。
元々、望まれない子どもという設定のため覚悟していたが
野生児とかその辺を想像していた。
だが学術書の伝承は公開されると一変。
愛されることを望んだ忌み子という、想像よりも惨い伝承だった。
学術書は公開前のPVにアニメーションがあったりするのだが、
そこに描かれたのは死体となった両親と共にテレビを見るヒルビリーという
なかなかにおぞましく、同時に哀れな光景だった。
彼の両親の遺体は見つからなかったらしいので、
やはり両親を憎み切れない部分があったのではないかという想像を掻き立てる。

2025年2月17日月曜日

アヌビス(Z.O.E)


ゲーム「ZONE OF THE ENDERS」シリーズに登場。

火星の軍事組織「バフラム」に所属する人型機動兵器「オービタルフレーム(OF)」の一体。
「オービタルフレームの父」と呼ばれるリコア・ハーディマン博士によって
ジェフティと同時期に設計された兄弟機。2機が近づくと共鳴反応が発生する。
ジェフティ同様、博士が立案した「アーマーン計画」の一翼を担う存在とされる。
操縦者(ランナー)はノウマン。木星コロニー・アンティリアにおいて
ハーディマン博士の腹心達により開発された。
「アーマーン計画」の全貌は軍事要塞「アーマーン」を起動することで、
大規模な空間圧縮を行い、太陽系全域を破壊することだった。
アヌビスとジェフティの両機はその起動と停止の鍵を担っている。
従来のOFと桁が違う程のパワーとスピードを持ち、
背部に装備された6基の翼状のウィスプは、スラスターと大型ジェネレータを兼ねている。
ベクタートラップの圧縮空間を利用した攻撃の反射と屈折、
機体そのものをベクタートラップに収容してステルス行動を可能としている。
ウーレンベック・カタパルトの応用による亜光速移動能力「ゼロシフト」も備え、
擬似的な瞬間移動を可能とする。当初、ジェフティがゼロシフトを利用できないのは
アヌビスの方が先に完成したためであり、本来は性能に差はない。
武装は電磁式の銛「ウアスロッド」、折れ曲がるように進むレーザー「ハウンドスピア」、
2種類の追尾性能を持つバーストショット「戌笛」など。
バーストアタックによる攻撃は、火星に宇宙から確認できるほど巨大な穴を穿つ威力を持つ。
サポートAIとして独立型戦闘支援ユニット「DELPHI(デルフィ)」を搭載している。
このDELPHIはジェフティに搭載されているAI、ADAの姉妹機である。
しかし、禁忌とされたメタトロン(機体)との完全な結合を望んだノウマンは
彼女の機能をほとんど使用しなかった。
2172年に勃発したアンティリア事件によって、作戦の指揮官ハーディマン博士の息子でもある
ノウマンの手に渡って以降、彼の乗機となる。
レオ・ステンバックの駆るジェフティとノウマンの部下ヴァイオラ・ギュネーの駆るネイトの最後の対決後、
突如出現。ゼロシフトの圧倒的なスピードと桁外れの出力を活かし、ウアスロッドのみで
ジェフティを終始圧倒し続け、撃墜寸前まで追い詰める。
しかし宇宙船アトランティス号の艦砲射撃により妨害され、ジェフティを仕留めそこねた。
その後2174年。仲間を守るためにバフラム艦内に突入してきたディンゴ・イーグリッドの駆る
ジェフティの前に再び出現。ゼロシフトの圧倒的なスピードでジェフティを翻弄し、
圧倒的な実力差でジェフティを捕獲した。
後にゼロシフトを手に入れてスペック上はアヌビスに並んだジェフティと再度対決。
アーマーンの起動後、圧縮空間内でジェフティとの戦いは、ジェフティの勝利となる。
この戦いで機体は大破していたが、アーマーンと融合することで再起動。
この姿はノウマン曰く「メタトロンとの完全なる結合」。同じく内なる力を「開放」したジェフティと再度激突。
無限ともいえるエネルギー供給による驚異の修復能力、OFの域を超えた耐久性をもって
ジェフティに迫るが、ゼロシフト使い同士による亜光速の死闘を制したのはジェフティだった。
アヌビスの機体は上半身のみ残っていたが、起動したアーマーンを停止させるために利用され、
自爆により完全に消滅した。

2001年発売、ハイスピードロボットアクションゲーム「ZONE OF THE ENDERS」シリーズ。
特に2作目の「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS」は2度のリマスタリングが行われるほど
国内外問わず人気が高く、金字塔といっても差し支えない。
そして主人公機ジェフティと対となる最強にして最後の敵「アヌビス」。
機体のモデルとなったのはエジプト神話における冥界の神アヌビス。
ジャッカルを模した頭部と、ジェフティには無いケーブル状の尻尾を持ち、
有機的ながら幽鬼染みた出で立ち。6基の大型スラスター兼ジェネレータであるウィスプの威圧感、
そして他のオービタルフレームが航空機の延長線上にいる中、ゼロシフトの存在が一線を画し、
最早オーバーパワーといえるほどの性能差が見せつけられる。
1作目登場時のゼロシフトの圧倒的なスピードによる逃げられないと思わされる絶望感は凄かった。

2025年2月10日月曜日

ペドロ


ゲーム「My Friend Pedro」に登場。

記憶を失った主人公の元に突如現れた謎のバナナ。
宙を浮遊し、自我と知性を持ち、
人語を話すバナナであり、主人公の友人を名乗る。
旧市街にある肉屋の倉庫で目覚めた主人公の目の前に現れると、
周辺を牛耳る地獄の料理人ミッチは武器商人で、
従わない者をミンチにしてしまうことを説明し、
このままだと主人公は殺されてしまうという。
助かるにはミッチを始末するしかないと、
主人公は拳銃を手に肉屋からの脱出を図る。

アクロバティック横スクロールガンアクションゲーム「My Friend Pedro」。
記憶喪失の主人公が、目の前に突然現れた謎のバナナ・ペドロとともに
悪党たちとの銃撃戦を繰り広げる。アクロバティックなアクションを駆使し、
さらに様々な銃や環境を利用し、時間の流れを遅くする能力「フォーカス(FOCUS)」を
活用しながら、悪党どもをバッタバッタとぶっ飛ばしまくる本作。
そして友達のバナナ・ペドロ。バナナが友達って!?しかも宙を浮いて、喋ってる!
作中、ペドロは必要性のあるアクションなどをチュートリアルしてくれ、
主人公の行き先を導いてくれる存在。しかし主人公の友人だと語りはすれど、
それ以上のことは何も語らず、唐突に謎の空間に招き入れたり、
何故か悪党どもに詳しかったり、謎めいた存在だ。
むしろ謎が多すぎて、もはや神秘の塊である。
非常にうさん臭い関係のまま、物語が進む。
すると、悪党のボスたちは口々に主人公のことを知っているかのように話す。
そして明かされる衝撃の真実。ペドロとは自身であり、
悪行を重ねる家族との生活に嫌気が差した主人公。
実の家族を殺す決意するも、罪悪感を消すため自身の記憶を消し、
殺害計画のナビゲーターとしてインスタント人格「ペドロ」を作り出したのだ!
あとは自信を消すだけだと、ペドロは主人公の肉体を支配しようとする。
抗う主人公は、自身が作り出した架空の友人にその銃口を向けるのだ!

ジェットコースターのような展開の中、最期の戦いを制すと
なぜかちょっと晴れやかな気分のまま、
実際は非常にサイコでサイケデリックな結末に
プレイヤーは置いてけぼりにされるだろう。

2024年12月14日土曜日

レイス


ゲーム「デッドバイデイライト」に登場。

本名フィリップ・オジョモ。
顔に三本の白線が斜めに入った模様が特徴の長身痩躯の黒人男性。
頭は泥で覆われ、泥で固まった頭髪はまるで樹木の枝のようになっており、
皮膚もまた樹皮のような質感になっている。
上半身には丈の短いマントとショールとスカーフを、
腰にはユーティリティベルトを巻いて、足は包帯を纏っているが、
一見すると全てボロボロなため服装全体に一種の統一感がある。
就職先の上司に殺人の片棒を担がされた後、謎の存在「エンティティ」によって
霧の森へと召喚された。以来、生存者たちを狩り続けている。
鋭い刃に人間の頭蓋骨と背骨がついた凶器「アザロフの頭蓋骨」を右手に、
左手に持った古代の力が込められた古い釣鐘「悲哀の鐘」を使って、
生存者を奇襲する殺人鬼。この鐘はエンティティ由来の品物であり、
おそらく父の遺品である「幸運の鐘」が変化したか、
またはエンティティによる、悪趣味なオマージュと推測される。
鐘中の鳴子を骨や縄で結んだものと変えることで、音の有無や攪拌を変化させ、
様々なエンティティのシンボルや謎の文字を記すことで、自身に古代の力を付与する。
最大の特徴はこの鐘は鳴らすと魂の世界に入り込むことができるとされ、
鐘の力でレイスは自身の姿を透明にすることができる。
このため気配をほとんど悟られることなく、獲物を追跡することができる。
しかし透明になっている間は攻撃できないため、一度鐘を鳴らして姿を現す必要がある。
また遠目ではわからないが、接近された時に目を凝らせば
光の屈折による空間の歪みが若干発生している。
しかも常に鼻づまりのような息苦しい吐息音をしており、
裸足で移動しているが、歩くたびに大きな足音を立てている。
意外にもある程度接近されれば、生存者側は容易にその存在を察知できる。
この能力に対する一種場違いの行動、その理由は不明だが、
過去の出来事が彼から人間性を奪ったことで獣同然の精神状態からくるものか、
はたまた精神が崩壊した茫然自失の状態からの無意識なものなのか、判断はつかない。
彼の出身はナイジェリア北部の小さな村。幼少期は両親や祖母と共に暮らしていたが、
民族浄化を目的とした虐殺部隊によって、幸せな生活は終わりを告げる。
村人は蹂躙され、少年だった彼は父親の遺品である「幸運の鐘」を握り締めて、
両親の帰りを待ったが、両親は帰ってこなかった。
祖母アビゲイルは可能な限り、残酷な真実からフィリップを守ろうと嘘をついたが、
いつしか二人からは、涙しか出なくなった。そして二度目の襲撃を知らせる鐘の音。
二人は間に合わせの壕の中で過ごした。祖母は外から聞こえる不穏な音から
フィリップの気を逸らすため、算数の問題を出し、フィリップは答え続けた。
彼の両親は算数が出来れば、フィリップが聡明な子に育ち、学校の成績が良くなれば、
人生にチャンスをもたらすと信じていた。その両親がもう存在せず、
勉強も遊びも、話もしてくれない事実を認識せざる終えなかった。
そしてそんな祖母も、壕の外から聞こえた子どもの泣き声を放っておけず、
フィリップを残して、壕の外へと出て行ったしまった。
それから何時になったか、死んだ方がマシと考えたフィリップは外へと出た。
腐臭、焼けた匂いが立ち込める外には、祖母の姿はなかった。
両親も祖母も友人隣人も失った。彼はかすれた囁き声で祖母を呼んだ。
その囁き声はいつしか叫びへと変わり、それに対する応えは夜の沈黙だけだった。
何もかも奪われたフィリップの手元には、「幸運の鐘」だけが残った。
天涯孤独となったフィリップは、死を望んだ。
しかしそこへ、フナニャという女性が手を差し伸べた。
死を懇願した彼に対して、フナニャはそれでも生きなければいけない、
生きて証人になり、何が起きたのか伝えなくてはならないと説得された。
フナニャとフナニャに保護された子供たちと共に新しい生活を始める。
しかし虐殺部隊によって廃墟となった住居に隠れ住む生活は、
未だ心の傷が癒えないフィリップにとって、復讐の呼び水となった。
人殺しで金を貰うもの、人殺しに金を払うものを憎悪した。
そんな彼を見て、フナニャは奴らは多くのものを奪うが
人間性を奪うことはできない、だから自ら人間性を手放してはならないと説いた。
しかしフィリップは彼らは代償を払うべきだと、頑なだった。
フナニャは自分たちが生きて証人になるため、慈悲の天使に自分たちの無事を祈るべきだと言うが
フィリップは彼の父が信じたように、金のある人は犯罪を犯すために余裕があり、
そして罪から逃れる余裕があると考え、死の天使に奴らが苦しむことを祈りたかった。
フナニャ曰く、「目には目を」の精神は自分たちを盲目にし、世界を暗闇に包んでしまうと。
しかしフィリップからすれば、先に盲目になったのは世界であり、
自分たちに起こった出来事に対して世界は無関心であり、それが自分たちが奪われ、
屈服させられる理由であり、この世界の数学的な公式であると考えた。
だがフナニャが語る先人の言葉に対して一瞬だけ、彼は彼女が正しいかもしれないと思った。
復讐より先に、世界は無関心でなくなり、自分たちを助けてくれるかもしれないと。
しかしある日の晩。フィリップが夜の見張りをしているときだった。
彼は何日も眠れておらず、その時、一瞬だけ目を閉じてしまった。
その一緒で眠ってしまい、彼が起きたのは次の日の朝だった
飛び上がりながら彼は周囲を確認する。かつて友人だったものが
一つ、また一つと見つかった。そして変わり果てたフナニャの姿を。
夜中に起きた虐殺部隊の襲撃は苛烈であり、彼らはフナニャを拷問し、
足の腱を切った上に、そこへ蜂蜜を塗り、蟻に生きたまま捕食させたのだ。
フィリップは必死になって蟻を払い続けたが、蟻はいくらでも湧いてきた。
フナニャは必死に喋ろうとするが、口からは血が噴き出ただけだった。
彼女の舌は失われており、話すのもままならなかった。
絶望感と罪悪感から座り込み、「ごめんなさい」と後悔と謝罪を口にした。
しかし、ごめんなさいでは彼女は助からない。
ごめんなさいではアリを追い払うことも、死んだ子供たちを取り戻すこともできない。
そんな彼に対して、フナニャは指で地面に書いた。「許す」と。
フィリップは長い間その言葉を見つめ、しばらくすると静かに涙を流しながら
彼女の顔の上に手を下ろし、彼女の苦しみが終わるのを待った。
彼はそうしたくなかったが、しなければならなかった。
望まぬ形ではあったが、彼は一瞬だけ彼女の慈悲の天使となった。
その晩、フィリップは闇に紛れて別の壊滅した村を見つけ、
そこに虐殺部隊が野営しているのを見つける。
おそらくフナニャを殺した連中。あるいは彼の祖母や両親を殺した連中。
理性ではフナニャが許すべきだと語りかけ、祖母が数学の問題で彼の心を宥めようとした。
しかし彼の激しく狂った憎しみの情動は止まることを知らず、復讐を求めた。
焚き火を囲み上機嫌で酒を呷り、虐殺した人々を動物のように扱い嘲笑する奴らには
地獄の苦しみを与えなければならない。そのとき何か古代の邪悪なものが、
別世界から伸ばされた暗い触手が、自身の若く無垢な心を掴むのを感じる。
彼は自分の血管に灯油が流れるのを感じ、そして行動を開始した。
フィリップは銃や武器で全員を相手することを考えたが、慣れてないものを使えば
彼らはおそらく逃げてしまうだろうと考えた。出来れば彼らが苦しみながら消えることを望んだ。
彼は近くにあった灯油を奪い、寝静まった兵士たちの周りに撒いて火を放った。
突然の炎に恐怖した彼らに次々と火は燃え移り、断末魔を上げて焼死していった。
惨状に気を取られたフィリップの体にも火が移り、彼はその場から逃げた。
そして激痛のあまり、倒れこむ。いつの間にか傍らにあった「幸運の鐘」を叩いた。
死の天使が死を告げるかのように。その後、新たなスタートを求めてナイジェリアを飛び出し、
新生活への期待を胸に、フィリップ・オジョモはアメリカへ渡った。
彼は幸運にも自動車解体の仕事にありつく事ができた。
「オートヘイヴン・レッカーズ」。それが彼の新しい生活の場だった。
小さな廃車置場のオフィスで、ボスが裏社会の仕事や警官への賄賂を行っていることに
フィリップは気づいていた。しかし故郷での悲惨な生活を考慮すれば、
取るに足らないことであり、彼自身はその仕事に巻き込まれなかった。
彼はプレス機を操作し、車を廃車にする作業を淡々と続けた。
車をひたすら小さい鉄の塊へと変えていく。
日々、そんなことを続けていた。トランクから血が流れていることに気づくまで。
ある陰鬱な日、たまたま潰してない車に偶然見つけた変化。
彼は車のトランクを開けることを戸惑わなかった。
中にはパニック状態の縛られた若い男がいた。
彼はその男を解放した。 男が10フィートほど逃げたところで
ボスであるミスター・アザロフが男を引き留め、男の喉を掻っ切った。
フィリップは突然の出来事に、ボスへ説明を求めた。
正確には、何がここで行われていたか理解していたが、理性がそれを拒んだのだ。
しかしアザロフが告げた真実は、予想通りのものだった。
アザロフは故郷にいた人でなしどもと同類だった。
廃車置き場は処刑場であり、フィリップはそこの処刑人である。
すべては客からの依頼であり、車と一緒に人間も「廃車」にしていた。
フィリップは知らぬ内に委託殺人を任され、犯罪の片棒を担がされていた。
そして自身の無関心が、不穏な職場とボスへの警戒心を鈍らせ、
奴らと同じ、他者を食い物にする人でなしに自分を変えたのだ。
この事実は、フィリップの精神を急速に狂気へと追いやった。
彼は激昂し、ボスをプレス機の中に投げ入れ、ゆっくりと粉砕した。
アザロフの頭だけが突き出ていたため、頭と背骨を体から引き抜いた。
そして彼は立ち去り、以降フィリップの姿を見た者はいない。
その後、アザロフの所業は明らかとなり、警察が捜索した結果、
廃車に詰められた数百に及ぶ遺体とそれを生み出した首謀者であるアザロフ。
その遺体も首なし状態でプレス機から発見された。
この廃車置き場のオーナーは、金儲けのために死体処理や委託殺人を行っていたようだが、
いつしか快楽のために殺人を行っていたと推測されている。
アザロフが所有していた給油所「ガス・ヘヴン」周辺で失踪者が続出したこと、
またその住居で奇妙な彫刻や版画が見つかり、地下室には犠牲者を監禁していた痕跡があり、
アザロフの精神状態が不安定だったことが、事件に結びついているとされる。
周辺の街は風評を気にして、廃車置き場を閉鎖。ここの出来事を忘れようとした。
しかし夜に明かりが点灯・消灯する様子を見た者から始まり、
次第にプレス機が動く音を聞く者も現れ始めた。
住民は何かがあると疑ったが、彼らは自分達の生活を守るため、見て見ぬ振りをした…

デッドバイデイライト」において第二のプレイアブルキラーが
このレイスだ。まるで〇レデターのような能力を持ち、奇襲を仕掛ける殺人鬼。
誰もいない。そう思った瞬間、唸り声じみた呼吸音と共に不気味な鐘の音が響き渡る。
まさに神出鬼没。死を告げる天使の前に、恐怖に震え上がるしかない。
しかしリリース直後は便利な透明化のはずが、意外と見えたり、音が聞こえたり、
発動と解除に鐘を鳴らすのが手間だったり、攻撃以外も特定のアクションが行えなかったり。
あらゆる状況において不便というよりも、ゲームにおける不幸を一身に背負った
不憫さは、まるで設定上の生い立ちに比例するようだった。
また板をぶつけられたり、ライトを浴びせられて、「ブモー!」と表現できるような
叫び声を上げたりして、最早ネタキャラ扱い。
しかし度重なるアップデートによるブラッシュアップの結果、
文字通り奇襲に長けた、良いキラーとして地位を得ている。
レイスのゲーム上のあんまりな境遇は置いて、彼の経歴は悲劇としか言えない。
悲劇に悲劇をトッピングした、胃もたれしそうなラインナップ。
人でなしに奪われ続けた結果、慈悲よりも復讐を選び、
自らの不幸の原因に鉄槌を下すが、更なる人でなしの出現により正気を失った。
しかし何より悲劇は、世界が無関心であることを恨んでいた自身が
同じように無関心になってしまった。それに対する罰かのように
彼自身を人でなしに加担させるという、無情な結末。
理性を手放して鐘のように空洞になったと思しき彼が、
時たま出す唸り声や叫び声は、最後に残った人間性が、
鐘のように鳴り響いてるだけなのかもしれない。

2024年11月19日火曜日

ABCロボット


映画「ジャッジ・ドレッド(1995)」に登場。

錆色をした戦闘用ロボット。両手に機関銃が内蔵されている。
犯罪者リコが訪れた武器屋に安置されていた。
核戦争後、全て機能不全になったとされたが、
武器屋の店主曰く「探せば手に入る」という。
製造から50年、60年近く経っていたがリコが修理したことで活動を再開。
リコを主人と再認識させ、リコらと共にメガシティで暴れまわる。
その後ファージーを負傷させ、ハーシーを人質に取り、
彼女の首をへし折ろうとしたが、負傷したファージーの決死の行動によって、
背後を取られ、首周辺の動力ケーブルを引きちぎられてしまう。
最終的に前のめり倒れ、活動を停止した…

映画「ジャッジドレッド」に登場する戦闘ロボット。
映画の出来については触れずに、この唐突に登場したロボットについて。
人間的な顔の造形と赤い目、マッシヴなボディ。
一発で悪役かつ、力自慢であることを表現できているのは
素晴らしい。原作コミックには登場しないロボットであり、
元ネタはイギリス・コミック「ABC warriors」からであり、
本作では何故かカメオ出演という扱い。

2024年11月10日日曜日

ディーラー

ゲーム「Buckshot Roulete」に登場。

浮遊する2つの手と、人間とは思えない異常に鋭い歯の生えた丸顔で構成された存在。
正体不明、本名も不明。ナイトクラブを思わせる建造物の一室で待ち受けており、
ショットガンを使ったロシアンルーレットに興じる。
撃たれると出血し、しかめ面や苦痛の表情に変わる。
少なくとも生き物のようだが、何度撃たれても既定のライフ数と勝負が続く限り、
何度でも起き上がるため、不死に近い存在なのかもしれない。
過去に「神」と名乗る者と勝負したことが示唆されており、
プレイヤーがゲームに使用するアイテムを箱から取り出す際、
稀に血塗れの免責同意書が出てくるときがあり、署名に「神」と記されている。
ゲームの開始時に必ず免責同意書に署名させるところや、
弾の装填は不規則、ルールを都度説明するなど、
律儀な性格をしており、フェアなゲームを楽しんでいるが、
それは同時に、命を賭けたゲームを純粋に楽しんでいる狂人の側面でもある。
最終ラウンド以外ではプレイヤーが死んでも、
何度でも除細動器で甦らせることから、ギャンブル依存症の疑いがある。
ゲームは署名後に開始され、横のモニターに電源が入り、
3ラウンド続くことを示す。第一ラウンドは純粋な確率での勝負であり、
運が悪くなければ、勝ち抜くことができる。
第二ラウンドは新ルールとして「アイテム」の使用が導入される。
戦略性が増し、理詰めで運をモノにする面が強くなる。
第3ラウンドでは4つのライフ数以下になると除細動器が使用不能になり、
この状態で撃たれると、文字通り本当の死が待っている。
プレイヤーが死んだ場合、銅で出来た門がある謎の空間へと飛ばされ、
(死後の世界と推測されるが、詳細不明)無情にも、「死亡」と推定される。
プレイヤーが勝った場合、ディーラーは死亡。
勝利した褒美として、賞金7万ドルとショットガンが贈られる。
プレイヤーは車の助手席に現金の入ったアタッシュケースとショットガンを乗せ
車でその場を後にする。しかしディーラーが本当に死んだかは不明である。
ルールに従ったのか、無力化されたのか、続行する気を失くしたのか。
現金を受け取る際に一瞬現れる、赤く光る眼のようなものが意味するのは…

装填中の沈黙がたまらない。ゲーム「Buckshot Roulete」は
謎の建物で、謎の存在と、謎のギャンブルを繰り広げる。
目的と理由も謎である。ただ、恐ろしい見た目のディーラーから
賞金と自身の自由を勝ち取らなければならない。
このディーラー、明らかに人ではない挙動をする。
薬室を覗かずに、割った虫眼鏡で装弾を確認する、
金属でできた銃身をノコギリで一瞬で両断する、
その両断した銃身をまた生やすなど、
異常なアイテムの力といえばそれまでだが、
プレイヤーが除細動器で甦るのに対して、
一切それを使う様子がないのが恐ろしい。
しかしビールや煙草は普通に使用し、
何故か律儀に手錠を手首にかけるなど、どこか人間臭い。
製作者のQ&Aによれば、彼の体は実際に「頭部と手が浮いてるだけ」であり、
人外であることは確かなようである。

2024年11月2日土曜日

ビートルジュース


映画「ビートルジュース
ビートルジュース ビートルジュース」に登場。

死者の世界で600年以上生きている、いたずら好きな悪霊。
別名ベテルギウス。自称だがジュリアード音楽院に通い、
ハーバード大学ビジネススクールを卒業。
世界中を旅行し、ペストの時代を楽しく生き抜き、
エクソシストが見る度面白くて167回ほど観たらしい。
生前はペスト全盛の時代、墓荒らしを生業にしていた。
その後ドロレスという女性と結婚したが、彼女の正体がカルト教団の指導者であり、
人の魂を奪うことで不死を目指す彼女の目的は、彼の魂であった。
ドロレスが毒を盛ってきた仕返しに、斧で彼女を斬殺。その後死亡した。
現在はバイオエクソシスト(人間驚かし屋)事業を展開し、マネージャーとして活躍している。
常に下卑た笑みを浮かべ、慇懃無礼な態度を崩さず、よくジョークを口にする。
一見すると軽薄だが、悪霊としての実力は本物であり、
自由に空間や時空を歪曲させるなどの現実を改変する事ができ、
物体や人物のテレポートや変身、念動力、腹話術と人の声真似ができる。
冥界に来てからは、冥界ケースワーカーのジューノの助手を務めていたが、
自身の力と野心からか、バイオエクソシストとして独立を画策。
ジューノによって呪われた上に追放され、「ビートルジュース」の名を3回唱えなければ、
現世に干渉できなくなってしまった。
1988年、ビートルジュースはアダムとバーバラのメイトランド夫妻に召喚され、
ディーツ一家を殺そうとしたが、夫妻によって阻止される。
しかしディーツ家の娘リディアと結婚することで、現世へと復活を遂げようと画策。
最終的に夫妻の活躍により、冥界へ強制送還された。
その後36年間は、事業を拡大しつつ、リディアへストーカー行為を働いていた。
いつしか冥界で幽霊相談コールセンターを開くほどになる頃には、本当にリディアに恋していた。
しかし復讐に燃える元妻ドロレスが出現。行方を眩まそうとした時、リディアに呼び出された。
娘アストリッドを命を救うことを求められ、対価として結婚する契約を結ぶ。
娘が助かると、すぐに結婚式を挙げようとする。怒れる元妻を倒し、冥界の警官隊も無力化。
結婚は秒読みだったが、自身が助けたアストリッドに冥界の法を犯したことを指摘されてしまう。
これにより契約が無効化され、またしても結婚を阻止されてしまうのだった…

ティム・バートン監督の初期作にあたる映画「ビートルジュース」。
その当該人物であり、マイケル・キートンが演じるビートルジュースは
主役であり、同時に悪役でもある。常に下卑た笑みを浮かべ、
慇懃無礼な態度を崩さない、ポジティヴ精神の塊であり、
悲劇を喜劇に変え、下品なジョークを口にし続ける。
そんな彼が、生前は一目惚れした相手と即結婚、しかし双方の死により物理的に破談。
その後は死を求める少女リディアと出会い、利害の一致から結婚承諾。しかし即破談。
そして月日が流れ、またしても結婚、またしても破談。
3度もスピード結婚&離婚を繰り返す、最早お家芸である。

2024年9月16日月曜日

ノーティー・ベア


ゲーム「Naughty Bear」に登場。

クマのぬいぐるみたちが住むパーフェクション・アイランドに住む、
いたずら好きな(Naughty)クマのぬいぐるみ。
茶色の身体は所々ボロボロで、片耳が欠けており、
頭部、背中、腹部に傷跡がある。
基本的に喋ることができず、威嚇するように唸るだけ。
その様子からか、周りに住む他のクマたちから嫌われており、
恐怖や軽蔑、侮蔑の対象となっている。
彼自身は他のクマたちと楽しいゲームやパーティーに参加し、
仲良くしてもらいたいだけなのだが、理解されない。
そして爪弾きにされたお返しに、復讐を図る。
1980年代、パーフェクション・アイランド。
そこに住む、ノーティー・ベアは孤独だった。
島一番の嫌われ者の彼は、常に除け者にされた。
今日はダドルズの誕生日会なのに、自分は招待されなかった。
ノーティーは皆に受け入れてもらいたくて、とにかくいい子になろうとした。
ダドルズと友達になることが、その近道だと思い、お手製のプレゼントを作る。
プレゼントを持って誕生日会に向かう途中、チャビーとギグルズに出会う。
二人はノーティーの小さくて歪なプレゼントを見て嘲笑う。
ショックのあまり、意気消沈して家に帰るノーティー。
遂に彼は我慢ができなくなった。クマたちに復讐することを決意し、
パーフェクション・アイランドの住人を殺戮するのだった…

悲鳴と綿(!?)が舞い散るゲーム「Naughty Bear」。
主人公のノーティー・ベアは一体何故そんなに嫌われているのか
特に説明なく、除け者にされ、蔑まれている。
だが、そんなことはどうだっていい。
可愛い顔してエグいことしてくるクマたちに、復讐するときがやってきた!
鉈、バット、トラバサミ、銃、冷蔵庫、トイレ、あらゆるモノを駆使し
時には発狂させ、自殺に追い込み、今までの鬱憤を晴らすのだ。
しかし、どんなに残虐な行動をとっても、彼の本心は変わらず、
仲間に受け入れられる」こと。色々とはっちゃけてしまったが、
相手がその望みを叶えてくれれば、疎外されたことを許そうとする辺り、
意外と彼の内面はナイーブなのかもしれない。

2024年7月24日水曜日

トラッパー

ゲーム「デッドバイデイライト」に登場。

本名エヴァン・マクミラン。
骨でできた奇妙な笑顔にも見えるマスクを被った、大柄で筋肉質な白人男性。
父の言いなりになって大量殺人を犯した後、謎の存在「エンティティ」によって
霧の森へと召喚されて以来、数え切れないほどの生存者たちを餌食にし続けている。
大きな肉包丁とトラバサミを使って、生存者を追い詰める殺人鬼。
何故か体に肉鉤が突き刺さっており、突出したそれでオーバーオールを支えている。
非常に痛々しいが、彼にとっては怒りを引き起こさせるだけでしかない。
腕は包丁についた血を拭うたびに傷つき、赤く染まってしまっている。
彼の出自はアメリカのワシントン州、鋳造と採鉱で有名な「マクミラン・エステート」。
そこを所有するアーチー・マクミランの一人息子だった。
エヴァンは、父親アーチーとその会社の経営手法を崇拝していたとされている。
アーチーは従業員を最低賃金で危険な場所で働かせる、冷酷な人間であった。
当初エヴァンは父の方針に反し、従業員たちに歩み寄り、友人として接していた。
しかし、ふとした時に相手を罵倒したくなる、理不尽な暴力を振るうなど、
内には非常に残忍な暴力衝動を抱えていた。趣味はスケッチを描くことで、
父親からは禁止されていたが、父親からの激しい暴力や叱責に対する
反抗心から続けていた。憎しみから父の殺害を考えることもあったが、
愛情から実行に移せないでいた。父の残虐性を理解してるため、
熊に殺された叔父や溺死した母は父が殺したものと考えており、
その光景を想像して絵に描いたこともあった。
彼は父親に従順な自分にうんざりしており、友人である労働者たちが労働組合を作り、
反乱を起こして労働環境を改善することを望んでいた。
しかしある日、自分の絵がバラバラに引き裂かれているのを見つけた。
そして母親が溺死させられる絵だけがないことに気づいた。
父親に絵が見つかったと思い、殴られるか怒鳴られるか覚悟したが、
その代わりにアーチーは、友人たちが数ドルのためにエヴァンを裏切ったことを明かす。
以来、エヴァンは父親への尊敬と称賛を強め、友人のふりをして
裏切った労働者たちを憎むようになった。
父親の庇護の元、エヴァンは厳格に労働者を管理した。
生産高はいつも好調で、マクミラン・エステートは父子経営のもと成長していった。
やがてアーチー・マクミランの精神状態はゆるやかに乱れていったが、
エヴァンは財産のおこぼれを狙う者たちから父を守った。
エヴァンは父親の言うことなら、どんなことでも行った。
ついにアーチーは完全に錯乱し、エヴァンは父親の意思のもと、
近代史における最悪の殺人鬼と化すこととなった。
エヴァンが100人を超える労働者を暗いトンネルに入らせ、
入り口を爆破して永遠に閉ざした。マクミラン・エステートの物語は、
富と権力が非常に間違った方向に使われた例として語られるようになった。
噂では溶鉱炉で労働者が焼かれたとも言われ、父子により犠牲となった
人たちの具体的な数は不明である。またその後のエヴァン・マクミランの消息も
不明のままである。もう1つ不明なことは、彼の父親が倉庫の地下室で
死体として発見されたことだ。死体は足の骨が粉々に打ち砕かれており、
膝の上に採掘用ハンマーが置いてあった…

死に救済はないゲーム「デッドバイデイライト」。
生死をかけた鬼ごっこを繰り返し、無事逃げ出すか、何人抹殺できるかが
テーマである本作。その記念すべきゲームのキラー側のプレイアブルキャラクターの
一人目がこのトラッパー。彼のトラバサミに捕まったサバイバーは行動不能になり、
自力で逃げ出すか、他者に助けてもらうしか術はない。
トラッパー側のプレイヤーは捕まったサバイバーをトラバサミから
そのまま抱きかかえることもできるが、あえて鉈の一撃を食らわして這いずらせるのも
プレイヤー次第だ。トラッパーの人物像に関してだが、見ての通り一見単純に見えて
複雑な内面を抱えた殺人鬼だ。当初は父親の威光を笠に着た残忍な男と思われた。
学術書の伝承が明かされると、本来は父に逆らう意思を持ち、絵を描くことを好む
孤独だが優し気な好青年の姿が出てきた。しかしその内には残虐な暴力性を秘めており、
苦しんでいる人々の命と父から受けた恩を天秤にかける、一方から見れば親思い、
もう一方は今苦しんでいる人々よりも父を優先する薄情者の姿が見えてくる。
富める者ゆえの無意識の傲慢、それともただ考えなしの純朴な孝行息子か。
どちらにせよ、今や霧の森へ住人と化した彼は父と袂を分かっており、
より凶悪な存在“エンティティ”に仕えるようになった。
しかし最初は嫌がっていたらしく、これは彼の体に突き出ている肉鉤が
どうして付いているのかに対する答えであり、エンティティによる拷問の後だとされている。
上からの支配から逃れたようで、逃れきれない姿は哀れである

2024年5月17日金曜日

新カリフォルニア共和国

ゲーム「Fallout」「Fallout 2」「Fallout:New Vegas
ドラマ「フォールアウト」に登場。

西アメリカ、カリフォルニアを勢力下に置く、西ウェイストランド最大勢力とされる組織。
通称NCR(New California Republicの略。以下NCR表記)。
首都は組織名と同じNCRだが、以前はシェイディサンズとして知られていた。
荒廃したウェイストランドでは珍しい現代的な勢力であり、常備軍を有しており、人口は約70万を超える。
国章や国旗として双頭の熊が描かれており、カリフォルニア州旗がモチーフになっている。
NCRはアメリカの民主主義、個人の自由、法の支配という戦前の価値観の継承者であると考え、
ウェイストランドにおいて秩序と文化、民主主義、自由、法治といった旧世界の理念を敷くべく追求している。
そのため帝国主義的で膨張主義な側面があり、近隣地域を「文明化」するために植民地化や軍事遠征を行っている。
これらの政策は内外ともに批判されており、また土地の有力者による議員に対する賄賂や買収などの政治的な腐敗も進行している。
それらの問題点から敵対する勢力も多い。その起源はVault15の住人たちが小さな集落、シェイディサンズを築くまで遡る。
かつてVault15は様々な主義思想を持った人々が暮らしていた。
しかし年々、人口増加によりVault内は過密状態となり、環境は最悪なものとなった。
主張の違いから、住人たちは4つの派閥に分かれ、2097年の春にVault15は開かれた。
派閥はVault15を離れ、内一つはVaultから持ち出したG.E.C.Kを使用して、シェイディサンズを作った。
シェイディサンズ(公的な設立は2142年と記録)は牧畜と農業を主産業に発展していった。
それから月日が経ち、2161年頃。当初シェイディサンズは、あまり開放的なコミュニティではなく、
他の商人や他の町との交易は最小限であった。これは当時の村長アラデシュの考えであり、安全を懸念してのことだった。
同年に同じVault出身のレイダー、カーンズにアラデシュの娘タンディが誘拐される事件が発生する。
また野生動物ラッドスコルピオンの脅威が激化、村は疲弊していた。
そこへVault13からVault15にウォーターチップを探しにきた「Vaultの住人」が訪れた。
「Vaultの住人」はラッドスコルピオンを退治し、さらにタンディを救い、カーンズを壊滅させる。
思わぬヒーローの登場に、シェイディサンズはその功績を称えてVaultの住人の像を建てた。
この時村長アラデシュがヒーローに影響されたかは不明だが、娘タンディが前々から薦めていたこともあり、
シェイディサンズをより大きな町にすべく、>他の町との交易を活発化させることとなった。
「Vaultの住人」によりザ・マスターの脅威が取り除かれた後、数年に渡る貿易ルートの拡大化、町同士の合併、文化の交流が続き、
シェイディサンズはウェイストランドで最も有望なコミュニティの1つとして繁栄した。
そして村長アラデシュは2186年初めて、共和国の構想を提案した。
シェイディサンズの町は名前を「NCR」に変更し、憲法起草のために仮の政府を樹立した。
NCRの理想はカリフォルニア全土に広がり、多くの町がこれに賛同した。
3年後の2189年、ザ・ハブで行われた住民投票の結果、NCRが正式に結成された。
初代大統領はアラデシュが就任した。その後、彼と彼の娘はNCRに尽くした。
2196年、Vault13を求めたアラデシュが遠征中に亡くなると、娘タンディがNCRの市長兼二代目大統領に就任した。
彼女が就任して2年で、シェイディサンズは更なる発展を遂げ、NCRの最初の首都に選ばれた。
その後43年間、シェイディサンズは拡大、発展し、共和国の主要都市であり続けた。
シェイディサンズの名前は歴史に残ったが、頻繁にNCRと呼ばれることとなった。
2241年までには、共和国は5つの州を設けたNCR 、ロサンゼルス、マクソン、ザ・ハブ、デイグロー。
それまでのNCRにおける文明の推移は著しく、戦前の世界に近い、質の高い生活が提供された。
NCRにおける近代的生活の魅力の前に、厳しい自給自足のウェイストランドの日常を捨てるのに戸惑う者はいなかった。 最盛期のNCRにおいては、全国民が幸せになる夢のような生活が待っていた。
しかし安定した民主社会にも陰りはあった。
NCRの主な資源は大量の家畜バラモンの群れとその牧場であり、それで財を成す農民、バラモン長者たちが現れた。
この成金たちの政府への影響力は、タンディの在任期間中は制限されたが、遅くなるか早くなるかの違いだけだった。
2248年にタンディが亡くなった後、生存よりも個人の幸福度が重要視され、集団的福祉の問題、
個人の繁栄に対する懸念、資本主義経済の歪み、様々な問題が現れてきた。
2241年から2281年にかけて、NCR本来の共同体精神は失われていき、無料の奉仕といった活動を目にすることはなくなった。
生きるためのサービスを受けるには労働が必要不可欠になった。
そして工場や農場には雇用主がおり、時に互いに互いの不幸を願った。
有力者たちによる圧力は、軍や警察での賄賂や汚職の原因となった。
NCRが巨大になればなるほど、国民の生活は幸せからかけ離れていった。
国民たちに共通した想いは、“国内ではチャンスがない、本当のチャンスは東にある”ものだった。
領地拡大に伴う資源に対する飽くなき飢えは、更なる領地拡大へ駆り立てた。
そして2281年。かつてネバダ州と呼ばれ、今はモハビ・ウェイストランドと呼ばれる場所。
この頃、NCRはアーロン・キンバル大統領に率いられており、彼らは旧ラスベガス市(現在ニューベガスに改名) を発見する。
そこにはまだ稼働中の大規模水力発電施設フーバーダムが存在した。
比較的核の影響を受けていない、水と土地、そして電力が目の前にある。
NCRは即時占拠を画策した。しかしニューベガスの土地、フーバーダムの水は
Mr.ハウスのセキュリトロン軍と3つの部族によって管理されていた。
両者は短い睨み合いの末、ニューベガス条約を締結。
条約の内容はNCRがフーバーダムの管理、生み出された電力の95%を共和国の中核地域に送ること。
同時にNCRは軍をニューベガスの地に配備する。
またNCR市民はストリップ地区を干渉なく訪れることが許された。
条件としてニューベガスの独立を認め、残りの5%の電力をストリップ地区に供給すること。
NCR政府は条件を呑んだが、モハビ・ウェイストランドの完全支配を諦めたわけではなく外交と武力を振るう機会を伺った。
だが、ここにきて新たな問題が発生した。ブラザーフッド・オブ・スティール(Brothehood of steel=B.O.S)だ。
B.O.Sはテクノロジーを地元民から強引に取り上げるなど、NCR領内で度々問題行動を起こしており、遂には全面戦争に繋がった。
この戦争は結果的にB.O.Sが敗者となり、少なくともB.O.Sの所有する6つの支部とバンカーが失われた。
しかしNCRも大きな痛手を負った。2276年のモハビ、集光型太陽熱発電施設ヘリオス1でのサンバースト作戦。
NCRはヘリオス1を掌握していたB.O.Sを襲撃、最終的に施設を奪取し、B.O.Sを撤退させた。
この時の勝利はモハビ支部B.O.Sをバンカーに引きこもらせるほどの戦果であった。
しかし勝利のために支払った代価は、経済だった。
NCRの経済は金本位制であり、B.O.Sはその保証元である金鉱を破壊した。
新しい金を鋳造できなくなったことで、NCRの貨幣は価値が暴落。NCR領内の経済はパニックに陥った。
モハビにおいても例外ではなく、ニューベガスのストリップ地区ではそのほとんどの価値を失った。
NCR政府は経済崩壊を免れるために金本位制を捨て、貨幣はそのまま「価値を保証する」という口約束の元、続投した。
保証を裏付けられない貨幣が辿る末路は、避けられないインフレであり、多くのウェイストランド人の信用を失った。
これに対して、NCR領のザ・ハブでは水本位制を導入、同時に独自通貨としてボトルキャップが復活を遂げた。
経済の痛手が治る前に、新たな脅威が迫った。86の部族をまとめた巨大組織、シーザー・リージョンの軍勢だ。
リージョン軍はフーバーダムに押し寄せ、かくして第一次フーバーダムの戦いの火蓋が落とされた。
当初は練度で勝るリージョン軍が優勢だったが、NCRの巧妙な作戦の結果、フーバーダムの東側コロラド川にまで押し返した。
以降、両陣営はコロラド川を挟んだ睨み合いを続ける。また2278年ビタースプリングスにて、NCRはモハビのレイダー、
グレート・カーンズの非武装民に対して一方的な虐殺を行い、報復としてカーンズは
同じレイダーのフィーンドを間接的に支援することで、NCRの脅威となった。
さらにNCR矯正施設の囚人たちが暴動を起こし、ニューベガスへの直通道路インターステイト15の脅威となった上、
この騒動が原因で凶悪な獣デスクローを招く結果となった。
災難の連続により補給路は使用困難、人員と物資の不足が加速し、
NCRは迂回路としてハイウェイ93からのルートを選ばざる得なかった。
2281年において、NCRはリージョンとの戦争を目前に控えていた。
そしてモハビの「運び屋」の存在により、その運命を大きく左右される。
第二次フーバーダムの戦いの直後、首都シェイディサンズはVault-tecの理想に反するとして、
Vault-tec社員のある人物によって核爆弾によって攻撃された。
幸運にも生き延びた者は近くの町、居住地、Vault、さらにはB.O.Sに保護された。
戦前の科学者リー・モルデイヴァー率いるNCR残存勢力はグリフィス天文台に
新しい軍事本部を設立した。この部隊は、2296年のグリフィス天文台の戦いで
B.O.Sと交戦し、最終的にはB.O.Sによって全滅させられた。
(画像はNCRのシンボル)

アメリカの復興はまだまだかかりそうなゲーム「Fallout」。
新カリフォルニア共和国はそんな世も末なウェイストランドで文明的勝利に王手がかかっている組織。だった。
作中で描かれるように一集落から国家に至る過程はちょっとしたサクセスストーリーである。
しかし歴代の主人公が介入するかしないかで命運が決まるというと、ちょっと綱渡り感が強くなる。
牧歌的な集落から近代的な都会の姿へと様変わりし、裏表ある民主主義の街へと変わる姿は
正当な進化の過程だが、賄賂や買収、強引な領土拡大、負の部分が見え始めるのは少し悲しい。
もしNew Vegasをプレイして、この勢力に何某かの思いを抱いて対応する場合は二択を迫られる。
外交的手段をとるか、それとも武力で黙らせるのか。
どちらをとっても、プレイヤーはNCRが他勢力に取る手段と同じように対応せざる負えない。
そう考えると、非常に人間臭い勢力だと筆者は思う。
ドラマ版の内容については、シーズン2が放送されるまで確定した情報とは言い難い。
なので手短に記した。これから更なる情報が公開されるのを待とう。

2015年11月30日月曜日

カーンズ(Khans)

ゲーム「Fallout」「Fallout 2」「Fallout:New vegas」に登場。

モンゴル風レイダーの集団。当初はカーンズと名乗っていたが、後にニュー・カーンズに変わり、
現在の名称はグレート・カーンズになっているが、基本的にはカーンズの通称で通っている。
現在、西部のレッドロックキャニオンを拠点にしている。
現存する部族の中でもかなり古い歴史を持ち、暴力的な集団とされているが
実態はヒッピーとアウトローの集団と言った方が適切で、閉鎖的で他勢力を積極的に襲う事は無い。
加入の際には厳しい試練を受けねばならないが、その為もあって各員の戦闘力及びメンバー同士の絆は強い。
その絆はお互いの事を「家族」と呼び合う、仲間の弔い合戦を行う、受けた恩は必ず返す、
決して仲間を見捨てないなどレイダーの中でも倫理を重んじ、掟に従って行動する社会規範を持っている。
エンブレムが入った革のベストを着ており、特殊な格闘術を使う。
ただしこれは現在のグレート・カーンズにいえることであり、新カリフォルニア共和国がない時代では
一つの町を食い物にする、典型的なレイダーだった。
彼らの起源はVault15の住人たちであり、Vaultには異なる信条を持つ人々がいれられており、
後に4つの派閥へと別れることになる。
2097年の春にVault15は開かれ、住人たちは地上へ進出した。
4つの派閥の内、3つはレイダーとなった。その内の一つがカーンズだった。
残り一つの派閥は独自に平和な村を築いたが、その後、皮肉にも同じ先祖を持つ人々から
襲撃されるようになった。2141年の冬に結成されたカーンズは当初、冬の厳しさによる
食糧難からまとまったものだったが、Vault15の元住人あってか
他のレイダーと違い、比較的文化的な生き方をしていた。
彼らの部族名もモンゴル人のチンギス・カーンに由来し、遊牧民的な生き方と
モンゴル帝国のような存在を目指したものだった。
2161年にガルという男が、リーダーだった父を殺してリーダーに収まった。
この残忍な男は仲間を率いて同じVault15の元住人たちが作った村シェイディ・サンズを定期的に襲撃し、
奴隷にすべく誘拐や強盗殺人を繰り返した。また通りすがりの商人への略奪や殺人も行っていた。
だが村のリーダーであるアラデシュの娘タンディを誘拐したのは間違いだった。
たまたま村を訪れた「Vaultの住人」が救出に乗り出し、ガルとその仲間たちはほとんどが皆殺しにされた。
このとき唯一生き延びたのはダリオンという男だけだった。後に彼が第2世代のカーンズの指導者となる。
しかしダリオンが作った、ニュー・カーンズの歴史は長くは続かなかった。
ダリオンは仲間を皆殺しにされて以来、精神を病んでおり、「Vaultの住人」とタンディへの復讐を目論んだ。
当初は生き延びるためにひっそりと暮らしていたが、自分だけ生き残ったことへの罪悪感、
年を重ねる事に被害妄想と強迫観念に駆られた。80年後、人員を集めることだけに時間を割いたダリオンは
遂にニュー・カーンズを結成した。そして新カリフォルニア共和国(NCR)の大統領になったタンディと
「Vaultの住人」への妄執から、より具体的な行動へと移るようになる。
まずNCR議会にファーガスというスパイを置いた。この男は会議内容を報告する役目を担った。
さらにカーンズはNCRやキャラバンを襲うことで水や食料を得て、NCR領内の不法占拠者たちをへと供給した。
不法占拠者たちは見返りにカーンズの住処であるVault15などのアジトを隠蔽した。
そしてNCRが疲弊していく様を見続けるために、高齢のダリオンは誘拐した医師ジョーンズに看護されながら
復讐が完了されるのを待った。しかし運命は皮肉なことに、彼に二度目の悪夢を齎す。
NCR領内の不穏な動きの調査を依頼されて、「選ばれし者」と呼ばれる人物が現れた。
この人物こそ、ダリオンの昔の仲間を殺した「Vaultの住人」の孫であった。
2241年、ニュー・カーンズが結成した年にリーダーであるダリオンは「選ばれし者」によって殺害され、
リーダーを失ったニュー・カーンズもまた、事態解決に動いたNCRにより壊滅させられた。
だが、またしても生き残りはいた。彼らは散り散りになってしまったが時間をかけて力を蓄えた。
自らの生き方を変えることをせず、部族名をグレート・カーンズに改め、
NCRや周辺の人々への襲撃を始め、複数の部落を持つに至った。
新リーダーのパパ・カーン率いるグレート・カーンズは2267年に結成され、
NCR領から離れたモハビ・ウェイストランドに拠点を置いた。
そこで彼らはNCRとは違う、新たな街と勢力に遭遇する。
謎の人物Mr.ハウスと彼の管理するニューベガス・ストリップ地区。
Mr.ハウスは自らの所有する旧時代の技術と文化を提供することを条件に
ニューベガス地区周辺のレイダー三部族を纏め上げ、かつてのラスベガスと同様の街を作り上げようとしていた。
グレート・カーンズもまたMr.ハウスから声をかけられた。
しかしカーンズはすでに得ていた自分たちの土地の権利を主張し、Mr.ハウスからの施しを拒否した。
2274年、カーンズはMr.ハウス率いる三部族によって住んでいた土地を強制的に追い払われた。
それから新たにビタースプリングスに居を構え、いつも通り旅人や村への略奪を行った。
そこへどういうわけかNCRの軍勢が現れた。カーンズがNCR領から離れた後、
NCRは急速にその領土を広げるべく進軍を開始、モハビにもその範囲を広げていた。
NCR軍がMr.ハウスと出会うのは必然と言えるだろう。ここで両陣営はニューベガス条約を締結。
こうしてNCRとMr.ハウスの形だけの同盟が結ばれた。
そしてニューベガス地区の周辺地域にNCRの前哨基地が作られ始めたのだ。
これに対してカーンズはNCRが自分たちの土地を侵略したと感じ、NCR市民や前哨基地を襲撃するようになった。
NCRはこの襲撃者たちに対抗すべく主要拠点を叩こうとした。
2278年。両陣営に深い禍根を残す事件、ビタースプリングスの虐殺が起きる。
事件は、NCR軍はビタースプリングスを静かに包囲したことから始まった。
ビタースプリングスのカーンズは戦闘員のみで、これを徹底的に叩くことで
勢力の弱体化とNCRの武力を知らしめるのが狙いだった。
そのため当時、NCR軍でエリートとされる第一偵察隊も作戦に加わっていた。
だが戦闘員の情報は誤報であり、女子供や老人、怪我人といった非戦闘員しか
ビタースプリングスにはいなかったのだ。誤報であるのが伝わる前に、
NCRの包囲に気づいたカーンズの人々は逃げだそうとした。
当時の指揮官ギレス少佐はこれを戦闘の意思ありと判断。カーンズへの一斉攻撃を開始。
結果、非戦闘員への一方的な攻撃が行われ、誤報が伝わったときにはすでに多くの死傷者を出していた。
この事件は陣営を問わず、その場にいた多くの人に深い心の傷を与えることとなった。
皮肉にも同行していた第一偵察隊の冷静な判断により、一部のカーンズは生き延びた。
カーンズは人目のつかない不毛の地レッドロックキャニオンへの退却を余儀なくさせられた。
NCRはこの予期せぬ事態に、カーンズへの正式な謝罪を行い、生存者への支援提供を行った。
だがリーダーであるパパ・カーンはこれを不服とし、虐殺を行って土地を奪い、
わずかな支援提供で、真実を誤魔化そうとしているとした。
事実、NCRはビタースプリングスから撤退はせず、キャンプ地としていた。
しかしカーンズはNCRを非難しても、ビタースプリングスを取り戻そうとはしなかった。
一介のレイダーに過ぎない彼らにとって、虐殺による痛手を癒す方法はなかった。
怨みと怒りを抱えたまま、それを解消することもできないカーンズ。そこに救いの手があった。
アポカリプスの使徒を名乗る集団は無償でカーンズに支援を施し、さらに医療技術を伝授した。
カーンズはこの善良な組織の支援により、幾許かの力を取り戻した。
だがカーンズは与えられた医療技術を、本来とは違う使い方をはじめる。
支援で得た薬品の知識を応用して、各種麻薬を精製することに成功したのだ。
こうして麻薬分野に秀でるようになったカーンズは、次に取引相手を選んだ。
同じレイダーであり、フィーンドと呼ばれる集団は薬物中毒者で構成されており、
カーンズはニューベガス周辺を根城にするこの集団に麻薬を売りつけ、
生活費を稼ぎつつ、NCRへの牽制とした。麻薬の安定した供給はフィーンドを凶暴化させ、
強化されたフィーンドは麻薬代欲しさにニューベガス周辺を荒らしまわった。
またNCRの物資輸送を担うクリムゾンキャラバン社などの商人とも違法取引しており、
NCR内では麻薬の蔓延が深刻化している。弱体化されても彼らはNCRを悩ますには十分な存在であり、
よりNCRとカーンズの溝は深まるばかりだった。しかしパパ・カーンはNCRへのさらなる報復を与えようと、
NCRと敵対するシーザー・リージョンと同盟を視野に入れている。
カーンズの中ではそれに同調する者や、NCRとの仲を改善すべきとする者とで意見が割れている。
しかしリージョンは薬物の使用と製造の禁止および女性を奴隷としているのだが、
あえてその事実を伏せ、カーンズを利用しようとしている。
2281年、さまざまな問題を抱えたまま存続の岐路に立たされているカーンズは
モハビの「運び屋」の存在により、その運命を大きく左右される…
(画像はカーンズのシンボルと、グレートカーンズのシンボル)

主人公の選択により、死か繁栄が齎されるゲーム「Fallout」シリーズ。
カーンズは最古のレイダー部族にして、とてもユニークなレイダーである。
Vault15の住人だった彼らだが、外に出てから一致団結し、モンゴル民族を基にした
遊牧民ならぬ「遊奪民」として、レイダー生活を享受している。
なお、彼らの中に本当のモンゴル人はいない。あくまでモンゴル風のレイダーなのである。
しかし所詮はレイダー、場当たり的な部分が多く、その場のノリと勢いで
近くの村娘を浚っちゃったがために、第一作目の主人公「Vaultの住人」により
ほとんど皆殺しにされた挙句、生き残りはトラウマを抱えて精神的に不穏な生活を送らせられた。
そこで大人しくすればいいものをトラウマ故に、精神の安寧のため八つ当たりを敢行。
村娘への見当違いな復讐を誓った残党が、二作目に名前を改めて復活。
だが、二作目の主人公にして仇の孫「選ばれし者」によって復活直後に崩壊させられる。
さらに心機一転、新天地を目指した彼らだが、戦前の亡霊じみた資産家の企みにより
その新天地を追い出され、かつての村から国へと育ったNCRにより根絶やし一歩手前という
シリーズを重ねるごとに扱いが酷いものになっていく。
しかし弱者を殺したNCRに復讐したいという熱心な心がけも、そもNCRに手を出さなければ
何もそんな目に会う必要もなく、更にいえば善意の団体から支援と知識を得て、
恩返しするでもなく悪用する、極悪麻薬中毒集団フィーンドにビジネスライクとはいえ
手を貸した時点で、最早彼らに立つ瀬はないのかもしれない。
だがこれだけ酷い目に会ったせいか、一作目に比べてだいぶマトモになってきたのも事実。
フィーンドがとある村を襲うのを見て、トラウマからフィーンドを倒そうとしたり、
不満たらたらでも仲間の窮地を救おうとする、受けた恩は必ず返すなど、
決して非道なだけの集団ではなく、また新たな出会いの度につっけんどんな対応の中、
カーンズは出会ってもかなり友好的な対応をしてくれる。
ピンきりではあるが、科学や商売や文学に長けているなど、かなり理性的な集団になった。
悪事をしない理由にカルマに良くないからという集団はコイツらぐらいだろう。
しかし切羽詰ってる彼らにはシーザー・リージョンの魔の手が。
リージョンに取り込まれた部族は、本来の部族名や習慣を全て失い、
代わりにリージョンの文化を突っ込まれる上、薬物は禁止、女は皆奴隷という、
今まで文化を大切に保持してきたカーンズにとって、天敵といえる存在だ。
もしこの小物染みた勢力に愛着を覚えたら(各種薬物の販売はかなり助かるので利用することは多いだろう)
少しばかり贔屓目にしてもいいかもしれない。ただし薬物の用がなければ別段いなくても
問題ない集団でもあるので、絶滅させるのも良しである。
筆者は程よいお付き合いとリージョンの同盟を破棄させる程度にしている。
ちなみに場合によって、帝国を築くほどの存在になる。

2014年8月18日月曜日

レイダー(Raiders)

ゲーム「Fallout」シリーズに登場。

ウェイストランドに存在する無法者たちの総称。過酷なウェイストランドで生き残るため
他者に対して略奪、強盗、殺人を躊躇なく行い、ウェイストランドに住む人々の脅威となっている。
ある程度大規模な集団になると部族名を名乗り、中には大戦争(グレートウォー)近くまで遡る歴史を持つものもある。
最も歴史ある部族はカーンズ、ジャッカル、バイパーである。これら三つの部族はVault15の住人たちの子孫であり、
Vault15は50年間閉じたままになるように意図され、全く異なった信条をもつ人々が入れられていた。
Vault15は最終的に4つの派閥を作り出すことでその役目を終えることとなる。
大戦争から20年後、人口飽和により出て行った集団はバイパーとなった。
それから30年後にVault15の扉が解放されたことで住人たちは3つの集団に分かれた。
そのうちの一つがシェイディ・サンズという町を作ったが、残り2つの集団はカーンズとジャッカルになった。
その後、皮肉なことにシェイディ・サンズはレイダーとなった同郷の者たちに襲撃されることとなる。
しかしシェイディ・サンズはレイダーに屈せず、後に新カリフォルニア共和国となり、
レイダーとなった他の同郷の者たちよりも繁栄することとなり、逆にレイダーたちは狩り立てられ、衰退化していった。
逆に歴史は浅いが、繁栄を遂げたレイダーたちもいる。ピットのレイダーやニューベガス・ストリップ地区の3部族とシーザー・リージョンである。
ピットに住むレイダーたちは大量の奴隷を支配下に置き、奴隷たちに武器工場での重労働を強いている。
街全体に充満する濃密な放射能と奇怪な風土病に悩まされながらも、近隣一帯にはない技術力で大量の武器を量産し続けている。
支配する側とされる側、完全に二分化されたこの街の支配構造は元々あったものではない。
レイダーたちはかつてピッツバーグと呼ばれたピットへ、略奪を行うべくやってきたところを
元BoSのイスマイル・アッシャー率いるスカベンジャーの集団によって返り討ちに遭い、吸収合併された。
そのアッシャーによってレイダーたちは統率されており、レイダーたちは奴隷たちの監視役として街の発展に従事している。
ニューベガス・ストリップ地区の3部族は元々ラスベガス跡地のストリップ地区の周辺に住んでいた者たちである。
彼らは小さな部族に過ぎなかったが、突如現れたMr.ハウスにより劇的に変化する。
Mr.ハウスは彼らに新しい名前と服を与えた。3つの部族はそれぞれオメルタ、ホワイトグローブ協会、チェアメンと名乗るようになった。
また彼らはMr.ハウスによってカジノの経営法を教授され、その経営を一任されたことで戦前のカジノ街を復興した。
そうして誕生したのが「ニューべガス・ストリップ地区」である。オメルタは大戦争前のマフィア風になり、退廃的な「ゴモラ」というカジノを経営した。
ホワイトグローブ協会は大戦争前の洗練されたセレブ風になり、高級感溢れるカジノ「ウルトラ・ラグジュ」を経営した。
チェアメンは大戦争前のショーマンシップ風になり、華やかなラスベガスらしいカジノ「ザ・トップス」を経営した。
同じくシーザー・リージョンは元はレイダーながら大国と呼べるほど、大規模な組織を展開していた。
古代ローマを彷彿とさせる服装や名前、君主制が特徴であり、彼らは86の部族からなる複合組織であるが、
組織としての統合の際に元の部族の習慣や生活といったものは全て失っている。
構成員は全て男で、女は所有物という扱いであり、レイダーの残虐性や横暴さが煮詰まった組織ながら
基本的に軍隊のように規律や戒律を順守しており、他にはない統率力がある。
この他にも奴隷商人のレイダーや大戦前から存在する日本人で構成されたヤクザやキャピタル・ウェイストランドの人喰いレイダー、
重度の薬物中毒者で構成されたフィーンド、地下下水道に住むグリーサー、スコルピオン・ギャングなど、
様々なレイダーたちがウェイストランドには存在している。
(画像は一般的なレイダーのシンボル)


世紀末、荒廃した世界、ヒャッハー!という3つの言葉で説明がつく存在、それがレイダーである。
マッドマックスや某世紀末漫画でいうところのモヒカンであり、そもそもraiderの意味は襲撃者や強襲者、侵入者を指し
raid自体が襲うという意味であり、つまるところ映画や漫画、ゲームに出てくる襲ってくる奴らの大半がこの言葉でまとめられるのである。
Falloutに登場するレイダーたちは対外、非生産的(奪えばOK!)な心情の下、日々を過ごす愚か者どもである。
しかし彼らも一応、現代っ子(?)らしくVaultの設備をつかえたり、薬物を作ったりと決してアホではない。
ただ彼らの根っこは「明日のためより、今生きること」なため、後のことなど知ったことではない精神まっしぐら。
それ故に売ってはいけない相手に喧嘩を売ったり、今までの悪行への報いとして根絶されたり、
ともかく後先考えないハイリスクなサバイバル生活を行っている。
一方で他者からの援助ありだが、先進技術をモノに出来れば、一つの街を形成できたりなど
必ずしも繁栄を遂げられないわけではない。というか街一つ作ったり、地域を併合する組織を作るあたり、
BoSやエンクレイヴよりは戦後アメリカ復興に役立ってる。
そういった奴らを除いた極普通のレイダーの場合は、まぁ良くも悪くも、いる時はウェイストランドの日常的風景、
いない時は極端に平和か、極端に環境が劣悪かの二択というウェイストランドの危険指数のバロメーター代わりである。
ただし彼らが現れるということは=そこは人が住める場所であるため、サバイバル的観点からいえば結構重要な存在だったりする。
あと主人公にとっては殺してもケチをつけられない歩くお財布、序盤の金策として丁度いい奴らでもある。

2014年8月7日木曜日

X9

アニメ「サムライジャック」第50話「Tale of X9」に登場。

暗殺ロボット。簡素な帽子にコート、革靴に身を包む。
二丁拳銃の使い手であり、引退していたが、愛犬のために今一度銃を取る。
雨の降る街を一台の車が駆け抜けていく。運転するのは一体のロボット。
ロボットは車のオーディオにCDを入れ、車の中をトランペットの音で満たす。
「可愛いルル」。ロボットは一人呟く。ロボットの名前はX9。
彼は雨が嫌いであり、それは感傷的な気分に彼をさせるからだ。
本来ロボットは感傷などという感情を抱かない。何故、その矛盾が生まれたか。
機械の頭から自身の記憶を辿りつつ、自分の出自を独白する。
かつて彼は、アク配下の科学者たちによって生み出された暗殺ロボット「Xシリーズ」の中の一体であった。
Xシリーズが生まれた理由は、アクが世界征服を手早く行うため、反対勢力の制圧のため用いられた。
彼らの仕事に感情は必要なかったが、生みの親の一人である風変わりな科学者が「面白そうだから」という理由で
物事を学んで理解し、感じる特殊な学習チップをその中の一体に組み込んだ。それがX9だった。
彼は起動後、チップによって他のXシリーズが得られない情報を学んだ。感情と善悪の知識を。
自分と仲間が行っていることは悪であると認識しつつ、反対勢力を狩り続ける。
ロボットは死や生を感じることはなかったが、X9は生きるために仕事を続けた。
彼らXシリーズの欠点は死を恐れないため愚直に攻撃し続ける事しかできず、攻撃を避けることをしなかった。
しかし他のXシリーズにはない感情を得たことから、X9は暗殺において戦略的な行動を取ることが出来た。
次々と仲間が破壊されていく中、ただ一体あらゆる攻撃を避け続けながら戦うX9。
全ての仲間が破壊された激戦の最中、湧き上がるのは仲間たちを奪われたことによる怒りの感情だった。
その感情の赴くままに破壊を繰り返す。街を火の海に変えたX9。そんな彼に奇妙な出会いがあった。
それは一匹の犬、大きくて奇妙なハート型の舌を持ち、そんな舌を出す笑顔が特徴的で、犬種はパグだった。
炎が燃え盛る中、彼はこの小さな生き物を見つめ、犬もまた彼を見つめた。
犬の笑顔に釣られてか、X9の金属で出来た顔にも笑顔が浮かぶ。彼は座り込むと犬の頭を撫で、犬を持ち上げて顔に近づける。
犬は嬉しそうに金属の顔を舐め上げた。X9はこの奇妙な出会いに感動を覚え、犬をルルと名づけ、連れ帰った。
この小さな生物との遭遇は怒りに包まれていた彼の感情を和らげ、慈愛を、そして同時に疲れを感じさせた。
彼は自らの感情に従い、仕事を辞める決意をした。丁度その頃、アクの下に主力となる次世代のロボット「バグドロイド」が完成した。
必然的に彼はお役御免となったが、彼は気にしていなかった。ルルとの新しい生活が待っているからだ。
X9はトランペットの演奏に楽しみを見つけ、ルルはそんな彼の演奏を満足そうに聴くのが日課となった。
彼はこの幸せな時間が長く続くものと思っていた。だがある日、ルルが急に姿を消した。
X9の心は嵐のように混乱したが、一本の電話が彼の平和な時間を奪った理由を告げる。
電話はかつての上司であるアクからであり、自身の王国を揺るがす存在、ジャックを始末しろという命令だった。
ルルはアクに誘拐されており、命令に従わなければ、愛犬の身に何が起こるかわからない。
X9は最早手に取ることはないと考えていた銃に手を伸ばし、仕事着に身を包む。
街に車を走らせると、何処かで煙が上がっている。車を止め、煙の発生場所を探る。
バグドロイドの残骸が転々としており、その先にはバグドロイドたちの残骸の山が出来ていた。
自身よりも高性能なはずのドロイドたちが破壊されたのを見て、X9は自身の勝算は低いと感じた。
そして雨の降る街。自身が生み出された工場の前で、X9は車を止めていた。
雨が降るのを待ちつつ、ルルの写真を眺める。雨が止み、ルルを取り戻すためにX9は車を降りた。
薄汚い工場の奥で焚火の音。焚火の明かりがターゲットの影を壁に映す。
壁に背を預け、にじり寄る。ブランクからか足下にボルトがあることに気づかず、音が響く。
銃を構えながら飛び出す。すでに相手は姿を消していた。身を隠せる場所を虱潰しに発砲する。
背後に影と下駄の音。すぐにX9は音がした方へと向かう。迷路のような工場の中での追跡劇。
弾は一発も当らず、いつの間にか電源を入れられて蘇った工場の騒音が、X9を混乱させる。
いつしかパイプが張り巡らされた区間に入り、相手の姿は全く見えなくなっていた。
音と気配のみを頼りに、銃を向ける。弾は一向に相手を捕えず、パイプを打ち抜くだけ。
パイプから溢れ出た蒸気が周囲を巡り、X9の銃身に水滴が垂れ、X9の金属の顔にも汗のように浮かぶ。
彼の焦りを、敵は自分を捉えていながら、自身は敵を捉えていない。そんな状態を水滴が表したようだ。
X9は敵の姿を捉えられないなら、相手も同じ状況に引きずり込もうと考えた。
全てのパイプに銃弾を撃ちこんで破壊すると、蒸気があたり一面を包む。
これでお互いに姿は見えず、障害物となるパイプが消えたことで、銃弾が阻まれることはない。
視界いっぱいの蒸気溢れる中で、影が一つ浮かび上がる。X9はすかさず銃弾を撃ち込む。
影は倒れた。影が倒れた場所に近づき、蒸気が晴れるのを待つ。
そこにあったのはターゲットの死体ではなく、Xシリーズの残骸。
驚愕する彼の背後で影が音もなく現れ、刀の一閃が金属を貫く音を響かせる。
敗北したX9はくずおれ、サムライ・ジャックは静かに刀を鞘に納める。
ジャックはゆっくりとその場を後にする。ジャックの背後で一瞬、倒れたロボットから音声が流れ出る。
「ルル、ルルの面倒を見なければ」。直後にロボットは完全に機能を停止した……

未来世界に現れたサムライの活躍を描くアニメ「サムライジャック」。
その中の1エピソード、「Tale of X9」。それまでの作風と打って変わって、
主人公ジャックの敵側に焦点をあてた、全体的にシックな映像とどこかノワール風な作品。
引退した暗殺ロボットであるX9の独白で始まる、この話。
本筋は、X9の生い立ちと愛犬ルルとの出会い、そして無常にも敗れ去るというだけの話であり、
X9とルルに対して何の救いもない、ひたすら「やる瀬無さ」だけ残る、子ども向けカートゥーンながら
かなり陰鬱とした話である。ここで注目すべきはX9が勝算は低いことを理解しながらも、愛犬のため、
主人公ジャックとの対決に向かうという、「生きるため」に行動することである。
このロボットには心があり、怒りといった感情、善悪の判断まで備えており、
まぁよくある設定といえるかもしれない。しかし彼の突出した部分はそこではなく、
ロボットにあるまじき「生きる」ということへの執着だろう。
暗殺ロボットとして活躍してきたときも、X9は他の仲間と違い、「破壊」されないよう、
言い換えれば「死なない」ように、立ち回り続けた。
しかし生物の場合、そこに付随する死への恐怖や、生への喜びといったものは彼に備わっておらず、
自らの仕事を「」だと感じつつ、やめるという選択肢はない。
さらに己と同じロボットが破壊されることに怒りは感じても、自らが殺すものに対しては
何も感じないことから、そこに他のロボットと大した違いはなかった。
それはあくまで「戦闘」において、より戦略的行動へと結ばせるための手段に過ぎなかった。
ここまでは彼がまだ、与えられた学習チップに反応していただけと思える。
しかし焼け野原になった街で出会ったちっぽけな犬の存在が、彼に変化を与える。
自分とは全く違う存在に対して、これからの生活を考え、そこから「喜び」や「慈愛」という感情を得た。
そして今までの不毛な生活に「疲れ」を感じ、自らそれを辞退した。
そして「喜び」を与えてくれた犬が消失したとき、彼は「悲しみ」を感じ、
犬に危機が迫ったとき「恐怖」とそこから「愛犬との生活を守るため」、銃を手に取る。
敵との圧倒的戦力差を目の当たりにしても、彼は「戦う」のをやめるつもりはない。
彼は生物が備えている感情を全て持ち、本当に「生きるため」に行動する。
これら一連の行動は彼が作られた本来の理由「戦闘」には全く関連しない事柄であり、彼は本当の意味で逸脱した存在になったのだ。
だが非情にも、彼は敗れ去った。愛犬のことを考え続けた彼の最期は、他のロボット同様に何ら劇的な結末はなかった。
彼の存在の消失は、またしてもジャックに敗れたアクの配下だという、たったそれだけの事実しか残らなかった。
この物語が他よりも悲愴感たっぷり且つ、白眉な理由は、主人公ジャックにとってこれが極「普通」の戦いに過ぎず、
X9の存在は、彼にとって何ら影響を与えない、取るに足らないものなのだという事実なのだ。

2014年3月4日火曜日

近隣監視同盟(Neighbourhood Watch Alliance)

映画「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」に登場。

のどかな田舎町サンドフォードの治安に貢献している近隣住民の寄合。略称はNWA。
フランク・バターマン警察署長を筆頭に、監視役のトム・ウィーバー、
スーパーの店長サイモン・スキナーとその従業員、ホテル経営のクーパー夫妻、
パブのポーター夫妻、農家のジェームズ・リーパーとその母親、
ロビン・ハッチャー医師、フィリップ・シューター牧師、
雑貨店のアネット、学校長のアマンダ、ファウラー夫妻とトリーチャーさんで構成されている。
警官を含む、サンドフォードのほとんどの住人が参加しており、
町中にあるカメラと住民たちの連絡網を通して、町の安全を守っている。
実は町のイメージや公共の利益を著しく損なう人物を殺害している組織。
実情を知っているのは町の有力者と一部の者だけである。
かつてサンドフォードの町で一人の女性が町を立派にしようとした。
警察署の署長フランク・バターマンの妻が町の景観を良くしようと努力したのは
ビレッジ・オブ・ザ・イヤー(イギリス国内最優秀の村)を受賞するためだった。
しかし彼女の健闘むなしく、審査員が町を訪れる前に旅行者たちによって、
町の景観は酷い有り様となり、受賞を逃した。彼女はこれを苦に自殺。
その後フランク・バターマンは妻の願いを叶え続けるために、近隣監視同盟を結成。
毎年ビレッジ・オブ・ザ・イヤーを受賞する為、邪魔者を始末し続けた。
それは例え同じ町に住む住民や同盟員、警官から路上パフォーマー、子どもまで殺害の対象とした。
しかし真実にたどり着いたニコラス・エンジェルと事実を知らなかったサンドフォード署員一同、
そして父の暴走を止めたいダニー・バターマンの活躍により全ての同盟員は逮捕(内一名死亡)。
サンドフォードの町は本当の意味で平和な町になった・・・・
(画像はフランク・バターマン署長)

小さな田舎町の地味な寄合、と思ったら町を牛耳る秘密結社だった!?
映画「ホットファズ」の田舎町サンドフォードは事故死が多いことを除けば、
極普通の平和な町。しかし事故死の多くがあまりにも血生臭い。
それもそのはず。妻の死に狂った署長が住民を率いて町を荒らす人間を内密に処理していたのだから。
ただしその対象の基準は凄まじくアバウト。町の演劇で下手糞な芝居した、
園芸が上手いけど余所に引っ越すから、酷いデザインの家建てた、地元新聞のタイプミスが多い、
ともかく町のイメージを悪くするヤツは片っ端からぶち殺す、というスタンス。
どんな不自然な死に方でも、署長は全て事故死と判断。
犯行は全て交代制なため、全て同一犯と考えていたエンジェル巡査を欺き
怠け者な他の警官たちに、エンジェル巡査の思い違いと判断させる。
長年、町のイメージを保とうとしたことあって、普段の純朴そうな田舎者のイメージとは反する頭脳派な組織である。
一方で犯行がバレると常に武装しているのか、銃やら刃物をすぐに出せるようにしている凶悪なヤツラでもある。

2014年2月27日木曜日

スーパーミュータント

ゲーム「Fallout」シリーズに登場。

スーパーミュータント(以下SMと表記)またはメタヒューマンはFEVの産物であり、人間の変異種でもある。
彼らは人間よりずっと体格が良く、肌は緑、灰、黄からなり、病、放射能に対して免疫を持ち、
そして超人に相応しい怪力と頑丈さを兼ね備えている。またFEVにより細胞が絶えず再生しているため
生物学的に死ぬ事はない、不老不死の体を有する(外傷によるものはその限りに在らず)。
SMの出生はコア・レギオン(西海岸)のマリポサ軍事基地、キャピタルウェイストランド(東海岸)のVault87の二つの場所が確認されている。
二つの母集団はそれぞれの歴史があり、そしてこの二つに接点があった記録は確認されていない。
SMの平均身長は約3.2m(猫背のように背中を丸くしているため、約2.43mほどに見えるが)、体重は約360kgにも及ぶ。
肌の色は主に灰色で緑の体毛を持ち、他にも様々な色をしたSMが存在する。
尚且つ肌はとんでもなく頑丈で、筋肉、骨格も同様に強化されている。
SMは純正であろうが変異であろうが、いずれにせよ人間以外の他の生物では再現できない。
その細胞は高い増加率の細胞分裂をうけている。有糸分裂(染色体、紡錘体などの形成を伴う核分裂)は
通常の人間の+15%のスピードで終了するものの、細胞構造はとても良く似ていると言える。
DNA鎖はほぼ完全で、病に対する劣性遺伝子は組織から除去されている。
この劣性遺伝子は通常の人間から見つけられる“それ”であり、細胞分裂で常に最適な結合になるよう操作されている。
RNAもまた、より最適な情報伝達を行うよう操作されている。しかし突然変異は副作用ももたらし、
第一に生殖が行えない。これは生殖系の配偶子が元々割けたDNAを使用、"半分の細胞"で成り立っており、
これはFEVによる損傷だと考えられ、ミュータントは不妊症であると解釈される。さらに肌の色素の変異も含まれる。
マリポサで生み出されたSMは不妊症ではあるが、生殖器官までは失っていない。
逆に、Vault87のそれはFEVの影響で全くと言っていいほど欠落している。彼らは細胞の老化による死は無いが、ボケに似た症状に罹り易い。
主な死の原因となるのは、人や他種との交戦である。SMは進化実験プログラムの一環であった改良されたFEVにより生み出され、
より強大な存在となり、二通りの結果が出来上がった。西海岸はザ・マスターによって、東海岸はVault87の科学者たちによって生み出された。
西海岸のミュータントはザ・マスターの忠実な下僕であり、マリポサ基地に存在したFEVを利用して生み出された。
西海岸と中西部に生息しており、一部は野蛮かつ原始的であるが、遠縁ともいえるVault87の彼らと比べ、多くは遥かに知性溢れかつ文明的である。
マスターズ・アーミーと呼ばれたこれらのSMは、マスターと共にSMによって統一された世界の実現を目論んだ。
またSMの中でもマスターの近衛兵を務めたものはナイトキンと呼ばれていた。
東海岸のミュータントは進化実験プログラムをテーマにしたVault87で極秘研究から生まれた。
改良したFEVによって歳を取ると共に巨大化し、より凶悪な怪物へ成長する新しいSMが誕生することとなった。
西海岸と違い、性別に関するあらゆる特性は消去され、無性別の状態へ変えられてしまう。
彼らは研究者たちが死亡した後も、仲間を増やすために定期的にウェイストランド人を捕えている。
西海岸のSMに比べ知性に劣り、非常に好戦的な存在であるが、極稀に理性的な者がいることが確認されている。
彼らの行動目的は戦うことに尽き、特に人間を殺すことに終始している。
そのためにより多くの仲間を生み出すべく、領土を増やし、戦前に保管されていたFEVの確保を目指している。
西海岸と東海岸に共通するのは、同じFEVから生まれたケンタウロスという従僕をしたがえていることだ。
彼らはこれを番犬代わりにしており、ペットとして飼っていることが多い。

核戦争により全てが終わった・・・・かのようなゲーム「Fallout」。
スーパーミュータント(以下SMと表記)はかつて人間だったものであり、同時に次世代の新人類でもある。
ザ・マスターと呼ばれるイカれた存在に生み出されたものもあれば、Vaultの実験で生まれたものもおり、
とにかくその存在を一言で言えば、マッチョで危険な生き物である。
マスターが倒されて以降の西海岸のSMたちは散り散りになり、一部は人間との共存を目指している者もいる。
ただし基本的に変わりなく人間を襲っている者が大半のようだ。
一方西海岸はVault101のアイツがどう転ぼうと未だ脅威として残っている。
マスターは自分が生み出したSMに対して、究極的な生物だと自負していた。
しかし、自身の作り出した知性溢れるSMが衰退し、愚鈍なSMが増えているのは運命の皮肉だろう。
両海岸共に生き残っている大半のSMは明らかに知的とは言い難いのだ。
ただ一方で、マーカス、フォークス、アンクル・レオといった理性的なSMも確かに存在しており、
彼らの隆盛はまだまだこれからかもしれない。

2014年2月21日金曜日

Military(ミリタリー)

ゲーム「S.T.A.L.K.E.R」シリーズに登場。

ウクライナ内務省からZONEの監視を命じられているウクライナ正規軍。
正式名称はState Security Service。基本的にZONEの人々からは単に「軍(Military)」と呼称される。
ZONEを封鎖し何人の出入りも禁じるのが大きな目的とし、
ZONEの主要な道を監視し、ミュータントやStalkerを見つけると発砲する。
最も長くZONEと対峙している組織であり、ZONEがまだ世界に認知されていなかった頃にまで遡る。
2006年、チェルノブイリ原子力発電所での原因不明の大爆発が発生した。
この影響により半径30kmが放射線汚染の被害に遭った。これに対して一カ所に集結した正規軍は、
汚染地帯を想定される限り最高の制御下に置くべく多くの陣地を確立した。
瓦礫と放棄された要塞での正規軍による監視は単純なもので、汚染地帯のほとんどがその状態だった。
しかし最初と2番目のエミッションの発生により、その管理下は着実に崩壊することとなった。
このとき内務省はZONEに軍人と科学者で構成された調査隊を派遣したが、
汚染地帯の内部での異常現象アノーマリーの発生、ますます蔓延るミュータントたちにより成果はほとんど得られなかった。
この大失敗により、調査は打ち切られ、正規軍は無許可にZONEへ侵入する者は発砲する旨を布告した。
だが不十分な対応とそれまでに伝えられたZONEの驚異的な物語から訪れる者が多く、
正規軍はZONEの立ち入りを全面禁止にし、ZONE内外全てのものを排除の対象とし、現在に至る。
その後、何度かZONE内に陣地を広げようと試みているが、Stalkerたちやミュータントに阻まれている。
彼らはZONEの殆どの派閥と協力関係を持たず、ほとんどの派閥と敵対しており、
皮肉にもZONEを管理する立場ながら、管理しきれていないというのが現状である。
しかし管理しきれていないとはいえ、事実上の最高の武力を持つ派閥であり、
必要と有らば戦闘ヘリの要請や特殊部隊を派遣してくる。
Spetsnaz(エリート部隊)は救出任務やその他の特別任務でZONEに派遣されており、
また正規軍お抱えのStalkerが存在している。これらはMilitary Stalkerと呼ばれ、
特殊な訓練を受けStalkerとして活動している軍人、もしくは軍と契約したStalkerがこれに該当する。
これらのことから過去の失敗を繰り返さないように彼らがZONEを軽視していないことが窺える。
一方で、境界線付近やZONE内の一般の兵士たちの置かれている状況は非常に劣悪であり、
士気も低い為に裏でLoner等と接触し物資の横流しや食糧の調達などをしたり、
Lonerの動向に目を瞑って賄賂を受けたりする者も居る等、決して一枚岩とは言えない。
その状態から最も腐敗している派閥ともいえる。装備は主に東側の物だが、地域や部隊によって装備の質は大きく異なる。
科学者集団Ecologist(Scientist)とは協力関係にあり、援助を行っている。
Dutyの隊員の多くははかつてMilitaryに所属していた者たちであり、しかしZONEの調査を打ち切られると同時に見捨てられた。
その過去から積極的に関わりを持とうとはしないが、一部では交流を行っている。

ZONEとは最も長い付き合いをしている派閥、Military。
なのだが、未だ決定打を与えられず、持て余し続けているのも事実。
そして日々やることは、ZONEに侵入する者、ZONEから出てくるものを攻撃すること。
一部ではStalkerとズブズブな関係だったりと、ほとんど機能してないのには目も当てられない。
1作目、2作目では事実上、文字通り蚊帳の外な組織であり、道中邪魔をしてくる厄介者程度である。
だが3作目になると主人公であるMilitary Stalkerを支援してくる組織として出世する。
3作目にしてやっと重い腰を上げたのだが、すでに1作目の主人公がZONEに決定打を与えてたりするので、
やはり出遅れた感が否定できない、なんとも不遇な組織である。
しかしやはり国家の軍。最大の軍事力を持つことあって、彼ら自体はそのイメージを払拭するが如く、
猛烈な攻撃を仕掛けてくるため、敵としては大変手強い相手である。

2013年11月13日水曜日

ソル

映画「ドゥームズデイ」に登場。

略奪者グループのリーダー。モヒカン頭の人食いであり、隔離されたグラスゴーに君臨する。
2008年、スコットランドのグラスゴーで殺人ウイルスが蔓延、イギリス政府は最終手段として
スコットランド全体を城壁で完全封鎖し、他地域への飛び火を食い止めた。
封鎖まで殺人ウイルスの研究を続けていたマーカス・ケイン博士は取り残された。
娘カリーと息子ソルと共に。ソルは父親から「壁の外には何もない」と言われ、それを信じ続けた。
それから27年後、根絶したはずのウイルスが今度はロンドンで猛威を振るい始める。
壁の外側の人間は壁の内側に生存者はいないと考えていたが、生存者らしきものを見つける。
ウイルスの抗体が手に入る可能性が高まり、すぐさま女性兵士エデン・シンクレアをリーダーとする
スペシャリスト・チームが組織され、隔離地域内部へと送り込まれた。
目的はマーカス・ケイン博士を探してワクチンを手に入れること。
しかし荒廃したグラスゴーで待ち受けていたのは、熾烈な環境下で生き残り続けた凶悪な略奪者たちであった。
隊員のほとんどが死に、エデンは捕らわれてしまう。成長したソルは略奪者たちのリーダーになっていた。
壁の外には誰もいないと思っていたソルはエデンを尋問し、壁の外には他の人間がいることを初めて知った。
父親に騙されていたことを怒りつつ、エデンを利用して壁の外へと脱出しようと考える。
しかしエデンは脱走し、しかもソルの情婦バイパーを殺した上に、捕虜にしていた実の妹カリーを連れ去って行った。
怒り狂ったソルは目的を遂げる為、エデンを追跡する。ケインの下へとたどり着いたエデンは
治療薬がないことを知り、そこでウイルスへの抗体を持っているカリーを壁の外へと連れ出そうとする。
独裁者と化したケイン博士から逃げ切ると、ソルが待ち構えていた。
カーチェイスの末、車のルーフに飛び乗ってきたソルは、手下が妨害のために置いたバスに首を跳ね飛ばされた・・・

闇鍋世紀末映画「ドゥームズデイ」。無法地帯と化した都市を支配者であるソルの見た目は
マッドマックス2」から続く、正統派略奪者のモヒカンである。しかも人食い。
捕まえた捕虜を火炙りにするシーンは、近年稀に見ないイカレたシーンであり、
情婦のヴァイパーさんのド派手な刺青も相まって、暴走族やパンクロッカーというよりも
蛮族という言葉が一番しっくりくるモヒカン野郎である。
しかしラストのカーアクションは明らかに完全に「マッドマックス2」を意識したもの。
そしてソル自身も本家本元であるウェズ同様に恋人を殺されている共通点があり、驚くべき執念深さで襲ってくる。
親父さんであるケイン博士との関係は深く描かれておらず、彼らが何故別々の場所に住んでいるのか
色々なドラマがありそうだが、「ヒャッハー!そんなことより殺人タイムだ!」とばかりに
暴れるソルさんを見ると、「こんな息子とは一緒に居たくない」というのが一番納得できる理由ではなかろうか。

2013年11月7日木曜日

グール

ゲーム「Fallout」シリーズに登場。

核爆発による高熱と放射線の影響で、遺伝子が変質したと信じられている人間の総称。
共通して皮膚が焼け爛れたような醜悪な外見となり、肉の腐ったような悪臭に見舞われる。
代わりに肉体的な老化現象が抑制され、寿命が大幅に伸びている(なかには大戦時から現在も生き続けている者もいる)。
基本的にウェイストランド人の間では放射線により変化したと噂されているが、実際はF.E.V(強制進化ウイルス)の影響である。
F.E.Vの影響を受けたものは遺伝子が変化し、必然的に肉体が頑強になる。
しかし放射線を長時間浴びる、または大量の放射線を浴びるとF.E.Vが放射線から肉体を守ろうと
放射線に強い肉体へと変化させようとする。これがグールの成り立ちである。
これにより放射線による害を受けないばかりか、放射線を取り込むことで体力が回復するという副産物が生まれた。
そのため過酷なウェイストランドでの生存能力は著しく高い。ただし生殖能力は失われる。
彼らの多くは人目のつかない場所に住んでおり、これは知性や精神は人間と変わらないが外見のため差別や迫害を受けているためである。
それらの経緯から非グールの人間に恨みを持つ者も少なくない。忌み嫌う者からはその性質も含めてか「ゾンビ」などと侮辱される。
また知性が失われ凶暴化したフェラル・グールも無数に存在し、ウェイストランドに住まう人々の脅威になっている。
これがさらに理性あるグールへの風当たりが強くなる原因にもなっている。
しかしフェラルと通常のグールはもはや別種であり、理性を持った通常のグールがフェラル化することなど無い。
だが理性のあるグールについても「脳が腐りいずれはフェラル化する」という偏見が一部で存在し、
差別どころか問答無用で「害悪」と見なされることもある。これに対してグールたちは自らを「ゾンビ」と呼ぶ、
多くの「普通」のウェイストランド人に対して、皮肉と侮蔑が混じった「スムーススキン」という渾名で呼ぶ。
エンクレイヴやBoSもまた彼らに対して差別的であり、エンクレイヴがウェイストランド全てなのに対し、BoSはデイグローの一件が引き金となっている。
彼らが最も多く住んでいると知られているのは、Vault12と戦前はベーカーズ・フィールドだった都市ネクロポリス。
Vault12の研究テーマは「放射能の人体への影響」であり、本来住人を核戦争から守るはずだったVaultは
意図的に住人が放射能に晒されるよう、Vaultの扉が閉まらないように設計されていた。
これによりVault12の人々は大量の放射能と熱線を浴びることとなった。
しかし本来死ぬだけだったはずの彼らはF.E.V(強制進化ウイルス)によって遺伝子が変化しており、
居住者の一部は耐えきれず死に、一部はグールとなった。グールになって生き残ったVault12の居住者たちだったが、
その後の内乱により更に数は減り、生き残った者は地上へと出て行った。
現在ネクロポリスで確認されているグールはこのVault12の出身者とされている。
こうして悲劇的な結末によって生み出されたVault12のグールたちだったが、
皮肉にもVault-Tec社とエンクレイヴによって意図的に生み出された彼らは特別な存在ではなかった。
彼ら以外にもVault居住者の抽選から落とされた元アメリカ合衆国民の多くは、核の影響により同様の道を辿ったのだ。
グールたちが地上に出た後、自分たちの町ネクロポリスに作るが、ザ・マスターに発見され、Vaultを手に入れるためスーパーミュータントが派遣された。
この襲撃で多くのグールが死んだ。スーパーミュータントは無傷のVaultを発見できなかったことと、
グールの正体がVault12の住人だということに怒り、グールたちを監視し、服従させるために駐屯地を設けた。
その後、浄水チップを求めてやって来た「Vaultの住人」によりスーパーミュータントは倒され、
ネクロポリスのグールたちは別の場所へ移り、デイグローやゲッコなどの町を作った。
ゲッコは比較的に平和だったが、しかしデイグローはBoSの求める戦前の技術がある場所であり、BoSとグールは敵対することとなった。
その後、ザ・マスター率いるスーパーミュータントの軍が敗北して何年も経ち、
スーパーミュータントと人間、そしてグールが共存する町ブロークンヒルズが出来たことで、BoSのグールに対する態度は軟化してきている。
またデイグローのグールたちはハブなど、人間の町との交易を重ねた結果、最終的に2189年にデイグローは
NCR(新カリフォルニア共和国)の領土となった。こういった経緯から、NCR領では比較的グールに対する偏見は少なくなった。
モハビ・ウェイストランドでも同様であり、グールが人間に交じって様々な職業に就いている。
西海岸のグールたちは運があった。しかし東海岸のグールたちには過酷な運命が待っていた。
元ワシントンDCであるキャピタル・ウェイストランドでは、2288年に敵対するミュータントや人間によってグールは地下に追われた。
彼らは自分たちだけの町を作るべく、博物館を利用してアンダーワールドを作った。
彼らの敵はキャピタルの民間人、BoS、エンクレイヴ、レイダー、奴隷商人、タロン社、様々なミュータントや危険なロボットたちである。
キャピタルに平和を与えることを目的としているキャピタルBoSだが、浄水施設を稼働させ、
汚染されていない水の生産に乗り出した現在、グールに対する水の配給は考えられていない。

核の炎に包まれた世界、ゲーム「Fallout」シリーズ。
本作に登場するグールは、所謂肉の腐ったゾンビの様な外見とは違い、基本は普通の人間である。
普通の人間と違い長生きで、放射能に対して強い抵抗力があり、放射能で体力を回復する以外は。
勿論良い奴もいれば、悪い奴もいる。さらにフェラルなんていう殆んどクリーチャー扱いな奴もいる。
しかしその見た目から一概に差別的な扱いを受けている。
放射能に適応した人種と言えば凄いのだが、見た目が見た目だけにそれを考える事は滅多にないのだろう。
NCRでの扱いは割と良い方だが、キャピタルでは歩み寄ろうとする団体自体が皆無なため、致し方なし。
(キャピタルには人造人間の権利を守ろうとする団体がいるが、そんなことより奴隷やグールにどうにかしろと言いたい)
比較的穏健派であるキャピタルBoSでも、グールは心底嫌われている。
おそらくデイグローの件を引きずっているようで、デイグローと全く関係のないキャピタルのグールにはとんだとばっちりである。
ちなみにグールの中には戦前から生きているものもいるため、そういったキャラクターから昔話を聞くと
なかなか面白い、ゲームの設定背景が見える為偶に聞くのもいいだろう。

2013年11月1日金曜日

MNU

映画「第9地区」に登場。

エイリアンの管理を任された企業の略称。正式名称は「Multi-National United」。
世界第2位の軍需メーカーであり、独自の傭兵部隊を持つなど民間軍事会社(PMC)的な側面もある。
傭兵部隊の装備は南アフリカの軍需メーカーが開発したものが多く、キャスパー装甲兵員輸送車やヘリを多数保有しているほか、
第9地区に光学照準タイプのレイピアミサイルシステムを設置するなど軍隊並みである。
MNUは1965年にアメリカのミズーリ州のウィラードの小さな会社としてヘンダーソン・マニュファクチャリング社の名前でスタートした。
10年以上安定的な成長を果たし、1981年2月に初めて海外に拠点を構え、1982年の6月には24以上の工場を全世界に展開するまでになった。
その年に社名を現在の名称に変更し株式を公開。以降、世界でも有数の巨大企業へと発展した。
母体は軍事企業(民間軍事会社)でありながら、複合企業へと発展し、遂には超国家的企業へと躍進したのである。
過去20年においてMNUは中規模の製造業者から国際的な技術革新の指揮者となっており、
2002年以降、実に500,000人もの新規雇用機会を鉄鋼事業において生成した。
MNUのプライベートセキュリティーフォースは私的法執行機関として世界をリードし、
悪化する世界経済の中、MNUの株価は常に上昇していた。MNUは技術移管と統合のグローバルリーダーとして
世界で100以上のオフィスを持ち、大規模なだけでなく、成長率も高い企業として邁進し続けた。
その技術は年間10億人以上に使用され、MNUのリサーチと製造技術は幅広い分野で活躍している。
最たるは薬品、ヘルスケア、教育、農業、鉱業、化学、ナノテクノロジー、都市計画、私的セキュリティーなどである。
多種多様な事業への取り組み、多くの国での活動を行い、超国家機関として認知されるようになったMNU。
1989年に南アフリカ共和国のヨハネスブルク上空に突如宇宙船が出現した時、MNUはこれを世界を変えるチャンスと捉えた。
南アフリカ共和国に雇われる形で、エイリアンを管理する権利を一任され、隔離地区「第9地区」に
エイリアンたちを移住させ、管理と監視を行った。管理業務を委託された後、エイリアンたちと地元住民による犯罪・治安の悪化、
地元住民とエイリアンのと争いが大きな社会問題となり、超国家機関としてMNUは問題を解決すべく、
積極的にヨハネスブルグの治安維持とエイリアンへの警戒監視を行うようになる。
世界の平和とエイリアンとの共存を建前にしているが、エイリアンの中絶を目的とした傭兵部隊、通称「スネーク」部隊の存在や、
同意が曖昧なまま移住を強制しようとするなど、エイリアンの人権を無視した活動も行っていた。
更にその裏ではエイリアンを生き死に関係なく不当に捕縛、エイリアンたちの持つ技術を回収していた。
その真の目的はエイリアンの技術や兵器の回収とその実用化であった。ヨハネスブルグのMNUビル地下には大規模な実験施設があり、
回収した物品のテストやエイリアン相手の実験が極秘に行われていた。
しかしエイリアンの技術を用いたものは全て、遺伝子認証を使ったロックが欠けられており、
エイリアンかエイリアン同様の遺伝子を持つ者にしか使えず、宝の持ち腐れとなっていた。
だが、MNUは幸運に恵まれていた。同社の男性職員であるエイリアン対策課のヴィカス・ファン・デ・メルヴェが
偶然にもエイリアンの宇宙船の液体燃料に触れたことにより、遺伝子が変化してエイリアンに近い存在になったのだ。
MNU南アフリカ代表のピエト・スミットは直ちにヴィカスの生体解剖を行う決定をした。
この時スミットはヴィカスが娘タニアの夫であることを理解した上で、会社の利益のためにMNUの実験施設へと収容した。
しかし幾つかの実験後、臓器の摘出を図ろうとしたところヴィカスが脱走。
早急に捕獲すべく、ヴィカスがエイリアンとの性交渉によりウイルスに感染しているという旨で指名手配、スネーク部隊による追跡を開始。
しかしエイリアンの兵器を使用できるようになったヴィカスの決死の抵抗により、スネーク部隊はほぼ壊滅。
ヴィカスが完全に姿を消したことで追跡は失敗となった。さらに同じ課でヴィカスの後任だったフンディスワによって、
MNUはエイリアンに対する極秘実験を暴露された・・・

モキュメンタリーかつバイオレンスアクションな映画「第9地区」。
この作品に登場する企業MNUは上にも書いたように大規模な組織図を持っており、
さらに元々は傭兵や軍需産業が根っこながら、多彩な事業に取り組むやり手として名を馳せている。
しかも根っこは変わらずに、超国家機関or超国家企業として活動。
これはエイリアンがやってくる前から、この状態だったことを考えると
人類が如何に考え無しに、MNUへ期待を寄せているのかがわかる。
だが期待に反してやってることと言えば、社会にその存在を認知させた上で平和を嘯き、
倫理的な面で悪であるはずの傭兵や軍需産業をやり続ける。
さらにエイリアンや現地住民を無理やり立ち退かせたり、エイリアンから技術を奪い、
虐殺、生体実験。自社の人間ですら必要とあらば犠牲にする。
善を装って悪を為す、まさに世界を我が物とする、典型的な悪の企業そのものである。
ここで注目すべきは本作のテーマがアパルトヘイトによるヨハネスブルグの現状であり、
この企業がアパルトヘイトの実行側を象徴しているのは明白であり、
同時に人間の醜さとエゴ、そして無関心を形としたものでもある。
MNU自体の見解はエイリアンという異人種を差別することで、利益を得ている。
だがMNUに勤める主役のヴィカスを含む末端の人々自体は、エイリアンに対して全く無関心である。
別に嫌いという訳ではない。ただ興味がなく、相手をするのは仕事なのでやっているのだ。
この辺の無関心さは、実行側の人間を象徴するのではなく、実行側の恩恵を間接的に受けている人間や、
人種差別に対して全く興味を持たない人々の無関心さを表しているように私は思う。
このMNUが巨大な組織ゆえに、世界中の人々が自分のこと以外無関心のような、
他者への慈愛がない絶望的な世界のようにも感じさせる。
しかし本作はエイリアンのために命を張るヴィカスや頑なに夫の善意とその帰りを待つ妻、
MNUの悪事を暴露したフンディスワのように決して善自体が存在しないわけではなく、希望は少なくともあるのだ。

2013年9月6日金曜日

Freedom(フリーダム)

ゲーム「S.T.A.L.K.E.R」シリーズに登場。

ZONEの二大勢力の一つ。ZONE内外で反政府勢力、アナーキストと見なされている団体。
打ち捨てられたMilitaryの基地を拠点としている。ZONE内での超自然的な事象の情報を共有、
公開することが人類にとって大きな躍進につながると信じており、ZONEの保護、存続を求めている。
その目的上、Dutyやウクライナ軍Military、軍に所属するMilitary Stalkerとの対立が絶えない。
ZONEの無政府主義者と呼ばれる彼らは元々フリーのStalkerたちであり、
超常現象アノーマリーや不思議な物質アーティファクトといったZONEの奇妙な事象を目撃し、
その驚異と神秘性から、ZONEには有用性があると考え、これを守り管理するために発足された。
以来、自分たちはZONEに自由に出入りする戦士であると表明し、ZONEの情報を世界へと公表するため活動している。
彼ら曰く、MilitaryやDutyらの破壊活動は世界を危険に晒しており、
ZONEへの破壊活動はミュータントやアノーマリーを増やし、放射能を強め、
異常な災害ブロウアウトを誘発する引き金であり、ZONEはその度に範囲を広げているらしい。
そのため結果的にZONEの破壊を目的とするDutyや支配を目的とするウクライナ軍Militaryと争うこととなった。
彼らの多くは反社会的なメンバーで構成されており、Dutyとは対照的にその名の通り自由主義であり、
その信条は「したいことをしろ。余計なことはするな」となっている。
Dutyのような厳格な規律とは違い、仲間同士お互いに「ブラザー」と呼び合う、
アルコールやドラッグを娯楽目的で使うなど非常にカジュアルな気風となっている。
Dutyが結束に“規律”を用いるのに対し、Freedomは精神的な繋がりを重視する傾向である。
彼らはZONEは自由の聖地であり、法律や規則、政治といった外の世界のものからは隔絶されていると考えている。
反社会的な行動と思想とは裏腹に、彼らはZONEの秘密や神秘に対する国家の独占に異議を唱えており、
自由にZONEを出入りし、アーティファクトや物資の輸出輸入が出来ることを求めており、
他の国々とZONEに関するすべての情報を共有することを信念としている。
ZONEの存続を謳っている彼らだが、ZONEの拡大に関しては懸念を感じており、
皮肉なことにZONEの破壊を目的とするDuty同様にZONEの危険を排除する活動もしている。
しかしFreedomの目的はあくまで存続なため、破壊するだけのDutyを目の敵にしており、日夜争っている。
主に西側の銃器と対アノーマリー耐性重視の装備で武装しており、装備の質はDutyをやや上回る。
天敵であるDutyとは基本的に敵対しているが、協定を結ぶ場合もあり、
逆にMilitaryとEcorogistとは完全に敵対している。研究者であるEcorogistは軍に支援されているため、
政府寄りなその行動が、彼らの精神を逆なでにしている。またLonersに対しては中立を保っているが、
Lonersと敵対しているならず者Banditsと繋がりを持つこともあり、どちらも無政府主義なために友好的なようだ。
また狂信者Monolithやゾンビのような廃人Zombified Stalkersはミュータント同様、
ZONEの危険の一つであると考え、積極的に排除している。

放射能と異常な世界が待ち受けるゲーム「Stalker」シリーズ。
本作でZONEを二分する勢力であり、ZONEはもっと開放的であるべきだと主張する派閥、それがFreedomだ。
杓子定規なDutyと反し、気風も自由奔放であり、Dutyとつるまない限りはとてもフレンドリー。
なかなか良い装備も持っており、彼らの実力のほどが伺える。
気に入ったら彼らとフリーダムトゥギャザーするのも悪くないかもしれない。
ただ、彼らの仲間になればDutyと敵対せざる負えなくなるため
両方と仲良くしたい人は、程よい距離の空いた付き合い方をしよう。
その自由さと打って変わって、かなり慈善家的な目的を持っており、
ZONEは人類にとって宝箱であり、世界の発展に繋がる重要なものと定義している。
これを存続させることは必然であり、破壊は以ての外、ましてや一国家だけが独占するものではない。
さらに破壊はZONEのバランスを崩し、人類に対する脅威となり得ると考え、
Dutyとはまた違った秩序を築こうとするなど、理性的な部分が目立つ。
しかしその真っ当な主義主張は別として、その自由は反社会的、はっきり言えば悪党然としている部分もあり、
「Stalkerを傷つけるな」とか言いながら、平然とLoner狩りする奴、
創設初期の古株でも平然と裏切るなど、君子豹変の言葉がよく似合う組織でもある。
またBanditsと仲が良かったりするときもあるため、ダブルスタンダードともいえる。
それにDuty同様にその目的が果たせるかどうか、非常に微妙と言わざる負えない。
混沌としたZONEの世界で、彼らがやっているのは普通のStalkerと同じように
アーティファクトを外部に売りつけることで、目的に達する具体的なビジョンは語られていない。
Dutyはその辺によく突っ込み、「金儲けしか考えていない」と指摘されている。
彼らを一概には言えないが、反社会的というよりも、色々な思惑を持ったギャングに近いような気がする。
ZONEという異常な世界において、真っ当な組織などというものは存在しないのかもしれない。