2015年1月6日火曜日

藤島 昭和(ふじしま あきかず)

映画「渇き。」に登場。

失踪した娘を探す、暴力的で傲慢でろくでなしの元父親。
元大宮北署の刑事であり、現在は警備員の職に就いている。
かなり粗暴で精神的に不安定な部分があり、向精神薬を服用している。
妻の不倫相手を暴行し、精神を病み、家庭を崩壊させた過去を持つ。
しかしその心には常に夢に見る理想の家族像があり、
荒んだ一人暮らしをしながらも、それを心の拠り所にしている。
娘が抱えていた狂気を知るうちに、その凶暴性は増していくが、
同時に自分が忘れた過去によって、狂気へと駆り立てられる。
コンビニでの大量殺人の現場を発見してから間もなく、昭和に一本の電話が入る。
品行方正だった娘・加奈子が部屋に何もかもを残したまま姿を消したと元妻・桐子からだった。
娘の部屋を調べると覚せい剤を見つけ、公にせずに加奈子を自力で見つけ出そうとする。
加奈子の中学時代の友人や行動を辿るに従い、自身が想像したものとは違う、加奈子の素顔がわかる。
娘の部屋からは精神科へ通院していた記録があり、中学時代の担任だった女性教師の東によれば不登校気味であり、
通院先の精神科医・辻村によれば抗鬱剤を常用していた。女友達の森下と長野によれば不良グループと関係していたとも。
また部屋には同じ年頃の男子学生の写真があり、それは過去に亡くなった加奈子の恋人・緒方だとわかる。
昭和は不良グループのリーダーである松永が娘を誑かして、シャブ中にして監禁しているに違いないと桐子に伝える。
桐子は昭和の表情を見て、実の娘が薬に手を出して嬉しいのかと聞く。呆気にとられる昭和。
昭和は気づかなかったが、桐子には話をしている間の昭和は非常に嬉しそうだったのだ。
夜、寝てい桐子にキスをしようとして拒絶される昭和。昭和は「やり直したい」と言い出す。
桐子は娘の一件をダシに、昭和がよりを戻そうとしていることを察していた。
答えは激しい抵抗だった。そんな妻に襲い掛かる昭和。暴力を振いながら妻にのしかかる。
その翌朝、桐子の家は滅茶苦茶になっており、桐子自身も顔も体も傷や痣だらけだった。
そんな桐子に対して昭和は「愛している」と伝え、また加奈子も桐子も自分が守るという。
こんな訳のわからない発言に桐子は罵声を浴びせるが、昭和は逆に「とっとと朝飯作れ!」と怒鳴り散らすのだった。
元妻との会合を終え、早々と松永を捕えようとする。だが逆に自分が不良グループに捕まってしまう上に、
当の不良グループは謎の集団に襲撃され、行方をくらましてしまう。
自身も謎の集団に気絶させられ、気づいた時には警察に介抱されていた。
後輩だった刑事の浅井によれば不良グループはヤクザと抗争しており、昭和はそれに巻き込まれたのだと。
捜査状況をベラベラと喋る浅井にそこはかとない不信感を抱きつつ、昭和はボロボロな身体で娘を探す。
おそらくまだ隠し事をしていると踏んだ昭和は、娘の友人・森下を問い詰める。
激しく拒絶された後、森下は加奈子によって友人の長野がシャブ中にされたことを告げる。
娘は被害者だと思っていたばかりに昭和の前に、ヤクザたちが襲撃する。
ヤクザたちも加奈子を探していたのだ。さらにヤクザたちは加奈子自身よりも加奈子が“隠したもの”に用があるようだった。
昭和は何も知らなかったため解放されたが、事態の深刻さに精神が追い詰められていく。
そこへ森下から直接会いたいと連絡が来る。用件は長野から預かったロッカーの鍵を渡したいとのことだ。
その鍵は失踪する前に加奈子が長野に渡したものだと聞かされ、さらに長野が昭和が目撃したコンビニでの事件以来、
塞ぎこんでおり、「私も同じようにやられる」と言っていたと森下は告げる。
昭和は森下に長野がいる場所へ連れて行けと言い、長野がアルバイトしている店へと向かう。
しかしその先で待っていたのは、血を流して息絶えた長野の姿だった。
昭和は森下を一人置き去りにし、渡された鍵でロッカーを開ける。
中に入っていたのは写真とそのネガ。中高年の男たちが年端もいかない女児や男児と行為をしていたものだった。
その後、昭和は浅井とレストランで会う約束をするが、昭和はレストランに写真のコピーだけを置いて、電話で浅井と連絡を取る。
レストランに現れた浅井は昭和からの指示で、テーブルの下にあった写真のコピーを確認する。
昭和は写真に写っている男の一人は警察関係者じゃないかと問い詰める。
浅井はそれをあっさりと認め、持っている写真全てを渡すように要求する。
昭和は死んだ長野の携帯電話の発信履歴を確認しており、最後に履歴が昭和の元職場である警察署であったとことから
警察がこの事件に当事者として絡んでいるのではと踏んだのだ。元同僚たちに追われながら、昭和はとある場所へと向かう。
そこで昭和はもう一人の関係者に全てを語るよう脅す。脅されている相手は精神科医の辻村だ。
件の写真の中に辻村の姿を見つけた昭和は彼が真実を知っていると考えたのだ。
辻村は語る。誘惑してきたのは加奈子当人からだったと。加奈子は辻村の幼女に対する暗い欲望に気づいており、
診察中に加奈子から誘惑してきたのだと告白する。さらにチョウという男からその数日後に連絡が来て、
ホテルに向かうように言われたという。ホテルにいた加奈子に連れられ、辻村はとある部屋に向かわされる。
そこで待っていたのが自分と一緒に写っている幼女だというのだ。
加奈子の知られざる一面に、昭和は動揺し、そこへ畳み掛けるように辻村は「昭和が加奈子を暴行した」ことがあると言う。
否定するが脳裏に過去の記憶がフラッシュバックする昭和。自宅で酒を呷っているところ加奈子が家に帰宅する。
父親を一瞬見つめ、黙って自分の部屋へと入っていく加奈子。昭和は娘のそんな態度に怒りが湧き、
鍵がかかった加奈子の部屋を激しく叩き中に入ろうとする。加奈子は自分の部屋に父を招くと、呟く。
「パパは何がしたいの?」。さらに父親にキスをし、耳元で「愛してる」と艶めかしく囁く。
異様なほど冷静に、かつ妖しく誘う娘の様子に何故か激高した昭和は、加奈子をベッドに押し倒して、首を絞める。
しかし加奈子は表情を変えず「私のことが好きだからこういうことをするの?」と問いかける。
答えられない昭和に、加奈子は一人で奇妙にも笑い声を上げる。
辻村の告白と過去の自分の記憶を半濁させながら、一人路上で立ち尽くす昭和。
そこで何者かに襲われ、拉致される。廃屋のような場所で男たちに暴力を振われる昭和。
リーダーらしき男・咲山の言葉から、彼らはヤクザであり、加奈子を追っていることがわかる。咲山の口から加奈子の一連の行動が明かされる。
加奈子は実業家であるチョウのお気に入りであり、チョウはヤクザと不良グループと手を組んでいた。
三者は少年少女を金と薬で支配し児童売春クラブを経営しており、加奈子は少年少女の供給を担当していた。
チョウは街の有力者層をターゲットに儲けており、もしもの事を考えて現場の写真も抑えていた。
しかしそこで誤算が生じた。加奈子がお客全員に写真を送りつけた上、ネガを持ち逃げしたのだ。
チョウとヤクザは事態を収拾しようと、ネガの在り処を知っている人間を次々と始末した。
それが最初のコンビニ事件での真相であり、長野が死んだのもそれが原因だった。
また不良グループのリーダー・松永は加奈子に惚れており、ヤクザたちに反旗を翻したため、抗争へと発展したのだと。
咲山はそう言いつつ、足元の寝袋を蹴りつける。中には瀕死の松永が入っていた。
松永は息も絶え絶えに加奈子に惚れており、かつて加奈子の恋人・緒方を売春クラブに引き込み自殺に追い込んだこと、
そのため加奈子が恋人の復讐の為に自分たちに近づいてきたと分かった上で協力していたと告げる。
娘の仕出かしたことの重大さ、ヤクザたちの立て続けに振るわれる暴力に恐怖しながら昭和は咲山に命乞いをする。
「娘に会わせてくれ、そのためにはどんなことでもする」。咲山はこの言葉に興味を抱いたようで、
何故娘に会いたいのか問うと、昭和はこの手でもう一度ぶん殴りたい、ぶっ殺したいと答える。
咲山は面白いと感じ、ある男を仕留めれるかと提案を持ちかける。
その男とはチョウに雇われて、邪魔な人間を始末する役割を持つ愛川という男。
チョウは写真のことで自棄になっており、その男に依頼しコンビニの事件を起こし、さらに長野を殺したのだ。
さらにその愛川は現職の刑事であり、ヤクザ側としてはこのまま愛川に殺しをやらせると
警察側に余計な介入をされるおそれがあり、チョウの暴走の歯止めになると考えたのだ。
咲山は最後の一押しを昭和に伝える。愛川は昭和が失ったものを全部持っているのだと。
金、可愛い妻、可愛い子供、素敵な家、穏やかで幸せな生活も全部。
提案を受け入れ、愛川の自宅へと向かう。家には愛川はいなかったが、妻と子どもはいた。
昭和の頭の中では精神科医から「夢は見ますか?」と質問されている光景が浮かんでいた。
この問いに対して、昭和はほほえみながら答える。「夢は見ますよ。美人の女房と娘がいて、二人とも自分を愛している」。
現実ではその理想そのもの家に土足で上がりこんで、愛川の妻を銃で脅していた。
頭の中での昭和はさらに言葉を続ける。「そして、俺がその幸せをこの手でぶっ壊す夢だ!」。
言葉通りにその幸せをぶっ壊すために昭和は愛川の妻に襲い掛かった。その場に居合わせた愛川の小さな息子を尻目に。
数分が経過した後、愛川の妻の携帯電話へ電話が鳴る。電話に出る喜色満面な昭和。「ぶっ壊してやった!オマエの大切なもの!」。
電話相手は愛川であり、まだ加奈子は生きており、娘は返すので妻と子供と交換しろと要求される。
とあるデパートの屋上駐車場、愛川がそこへ到着すると、そこには愛川の妻と子供だけが乗っている車が放置されている。
昭和から愛川自身のことを全部聞いたのかと妻に問う。愛川の顔へ唾を飛ばすことで答える妻。
愛川は躊躇無く銃を妻に向けて、命を奪った。その直後、昭和が乗る車が愛川を跳ね飛ばす。
昭和は愛川が倒れている間に愛川の車のトランクを開けようとする。しかし中にいたのは死体となったチョウだった。
車に銃弾が撃ち込まれる。起き上がった愛川が銃を手に迫りながら話す。チョウが人を殺すなと五月蠅く言うので殺した。
これからは自身の考えと自分のルールで好きに人を殺すのだと。激しい銃撃戦の最中、愛川の子供の「パパ!」という呼びかけに
一瞬だけ動きが止まる。その隙に近寄る昭和。もつれ合いになるが、隠し持っていた刃物を使って、愛川の腹を縦に切り裂き、からくも勝利する昭和。
その場を去ろうとする昭和の背後で、しぶとく立ち上がった愛川の姿が。そこへ到着した浅井率いる警察。
愛川を確保し、浅井は愛川を自殺に見立てて、愛川の頭を彼の銃で撃ちぬく。警察の目的は写真だけではなく、身内の不始末の清算だったのだ。
浅井らから逃げるべくすぐさま車に乗って飛び出した昭和は、どこか嬉しそうな表情をして加奈子がいるとされるホテルへ向かう。
しかし加奈子がいると思われたホテルの一室にはもぬけの殻。部屋の中を漁ると、引き出しからは禍々しい刃物や写真が見つかる。
昭和は娘の正体を掴めず、一人絶叫する。時は過ぎ、加奈子が失踪してから約4ヶ月経過したクリスマスイヴ。
加奈子の中学校担任だった東は娘に置き手紙を残して、駐車場に停めていた車に乗り込む。
直後、銃を持った昭和が突如現れ、昭和は銃を突きつけながら東に語り出す。
自分が娘の事を全くわかっておらず、加奈子を探していく内にわかったのは「自分の娘は最悪である」ことだったと。
何もしゃべらない東に昭和は、娘が失踪する前からシャブや売春について知っていたのではないかと尋ねる。
昭和は懐から写真を取り出す。それは件の売春現場の写真であり、そこに映っている少女は東の娘である「昌子」。
加奈子の失踪の真相は自分の娘に売春行為をさせた事に対して激怒し殺害、死体は埋めたと東は認めた。
東は「あの子は悪魔よ!」と自分を正当化するが、それに対して昭和は「そんな悪魔に対して、アンタは何をしたんだ!?」と怒声を浴びせる。
その後、昭和は東に加奈子を埋めた場所へと連れていかせる。冬の豪雪により雪原となった場所へ。
昭和は東にスコップを1本渡して、加奈子を埋めたところを必死に掘らせる。
東が掘る間、昭和は一切手伝わず、タバコを吹かせて待った。数分も経たないうちに東は「無理よ、こんな」と泣き言を言う。
昭和は「何年経とうと見つけないと、アンタの娘には会えないぞ」と言い捨てる。
それに対して東は「狂ってる。あなたもあなたの娘も!」と言い放つ。昭和は「当たり前だ。同じ血が流れているんだから」と返す。
日が落ちたあと、二人は車中で寒さを凌ぐ。「加奈子を見つけるまではずっと続くと思え」と伝え、昭和は車内でシャブを打つ。
翌日、東は隙を見て、雪原の中を逃げようとする。しかし、すぐに昭和に捕まる。
しかし東はスコップで昭和を殴りつけ、再び逃走するが、またしても捕まってしまう。
激昂した昭和は「あいつはどこだ!!」と怒鳴りつけ、東を放っておくと自らスコップを手に持ち
加奈子を見つけるべく掘り始める。呆然とする東を尻目に、昭和は「あいつは俺が、俺の手でぶっ殺す」という呟くのだった。

俺の娘をどこにやったぁ!?

俺が・・・・家族愛して何が悪い?

あいつは俺が、俺の手でぶっ殺す!

別れた女房の頼みで娘探したら、自分の知らない娘の一面を知り、
訳の分からない連中に絡まれ、最終的に自分自身と娘の見たくない部分を見つめて
自分と娘が最悪の人間だと認識しつつ、それでも娘を見つけて
この手で“ぶっ殺さなければならない”と絶叫する映画「渇き。」。
役所広司演じる藤島昭和は、かなりクレイジーである。
暴力と傲慢、そしてすぐにキレるという三重屑が揃った筋金入り。
妻が浮気したことを切欠(この奥さんも浮気したことは一切謝らず、
実家の金と権力で娘の養育権を剥奪、全部お前が悪いとのたまう上に、
娘の悪い所は全て元夫に責任転嫁という類友なお似合い夫婦である)
浮気相手を半殺し、家庭を崩壊させて以降、心のお薬とお酒を仕事終わりに飲んで
喰っては吐いて、喰っては吐いてを繰り返す、ろくでなしだ。
一方で夢に見る理想の家族像を心の拠り所にして、日夜堪える毎日。
そして娘を探すためには自身を刑事だと偽りなど、あらゆる手を尽くす、良い父親・・・のはず。
しかし実は自分が知ってると思っていた娘は、自分以上に手の尽くしようのないものを抱え、
そこら中に問題を山積みにし、消えてしまった。普通なら親の縁を切って、トンズラしてもいいはず。
だがこの親父、明らかに一人では手に負えないレベルの問題なのに、一つ一つの問題を“ぶち壊し”つつ、
(成り行き上、そうなったともいえる)、本来の目的である「娘探し」も一切ブレさせず、突き進む。
何がそこまで彼を動かしているのかわからないが、この最高にアグレッシブかつエキセントリックなお父さんは
原動力が「娘」であることは確かな模様。このブレない部分に限って言えば、作中に登場する他の問題人物に比べると、
一周してマトモなように見えてくる。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

更新楽しみにしています。『渇き』、非常に興味を持ちました。観てみます。