2009年3月3日火曜日

アレックス・デラージ

映画「時計じかけのオレンジ」に登場。
 
クラシック音楽の中でもベートーベンの「交響曲第九番」を
こよなく愛する15歳の少年。近未来のロンドン。
ギャング紛いの行いをするアレックス率いる少年4人組“ドルーグ”
(またはドルーギー、仲間の意)は今夜もコロヴァ・ミルク・バーで
ドラッグ入りミルク“ミルク・プラス”(ミルク割りの意)を飲みながら
無軌道的な暴力行為“ウルトラヴァイオレンス”(超暴力)な計画をたてて
夜の世界に繰り出し、浮浪者狩り、他の不良グループ・ビリーボーイズが
“デボチカ”(少女の意)を“フィリー”(弄ぶ、または強姦の意)すべく、
廃墟に連れ込み集団レイプを働こうとしたところを、叩きのめす。
乱闘中“ミリセント”(警察の意)が近づきアレックスたちは逃走。
盗んだスポーツカーで郊外へ走り、困窮を装い助けを求め
親切心から開いた作家宅の扉に“マスキー”(マスクの意)を被って
押し入り『雨に唄えば』を歌いながら作家の妻を陵辱する。
その次の夜、老婆が住む一軒家に侵入したときに男性器を
かたどったオブジェで老婆を“トルチョック”(殴るの意)撲殺した後、
仲間の裏切りに遭い、懲役14年の実刑判決が下った。
収監されて2年。聖書を読み、模範囚を装っていたアレックスは
「ルドヴィコ療法」の被験者になることを志願し、引き換えに
刑期の短縮の機会を得る。それは拘束服で椅子に縛り付け、
“リドロック”(まばたき出来なくなる道具)で見開いた状態にまぶたを固定し、
眼球に目薬を差されながら特殊な覚醒剤を注射した上で
残虐な映像を見せ、そのショックから生理的に暴力やセックスが
耐えられないような肉体に改造するといった方法だった。
偶然にもそこで流れていたBGMは彼の好きなベートーヴェンの第九であった。
治療は成功し、以後彼は性行為や暴力行為、好きな第九を聴くと
吐き気を催すようになる。完全に無抵抗な人間になった彼に
待っていたのは親からの拒絶、リンチした浮浪者の逆襲、
警官になったかつての仲間たちからの暴力だった。
ある家の住人に助けられるが、それは例の作家だった。
彼の妻は例の事件で自殺し、人道主義的信条にあるこの作家は、
被害者となった妻の死は、暴力事件を生み出した社会にあると考え、
打倒に憑かれていた。アレックスの話を聞き、悪政の横暴が施した
治療の実態を重く見て、マスコミを利用し世間に公表する事で政権を覆そうと考えた。
作家は入浴を勧め、アレックスのいない間に、電話で要人と熱心に
打ち合わせをはじめた。安堵感に浸るアレックスは
『雨に唄えば』を歌いはじめた。作家はこの歌声を以前どこで聴いたかと考えた。
かつて妻と自分を襲ったマスクの少年は彼であると気付き、良い妙案を思いつく。
翌朝、部屋に閉じ込められたアレックスは第九の響きで目をさました。
彼は拒絶反応で狂い、窓から飛びおりる。作家の狙いは、
アレックスを自殺に追いやり、私的な報復を果たすと同時に人格矯正法という
非人間的な行為を行なった政府を攻撃して失脚させることだった。
しかし、アレックスは一命を取りとめ、作家は逮捕された。
失脚を恐れた内務大臣は、アレックスを元どおりの人間に戻すと発表した。
やがてアレックスは、暴力とセックスとベートーベンの
第九交響曲に再び歓びを見い出すのだった…
 
結局檻によって無害になった野獣は檻がなければ危険な野獣であり
悪人もまた然り。そんなアレックスの暴力は一見無軌道に見えるけど、
無軌道なので気にすることはない。ついでにいうと
小説の完全版では自身の暴力は青春と同列と考えており
いつか自分の子ができたら自分と同じように一度は渡る道だとのたまった
やっぱり真性のどうしようもない悪人だよ、こいつ。

0 件のコメント: