2013年11月1日金曜日

MNU

映画「第9地区」に登場。

エイリアンの管理を任された企業の略称。正式名称は「Multi-National United」。
世界第2位の軍需メーカーであり、独自の傭兵部隊を持つなど民間軍事会社(PMC)的な側面もある。
傭兵部隊の装備は南アフリカの軍需メーカーが開発したものが多く、キャスパー装甲兵員輸送車やヘリを多数保有しているほか、
第9地区に光学照準タイプのレイピアミサイルシステムを設置するなど軍隊並みである。
MNUは1965年にアメリカのミズーリ州のウィラードの小さな会社としてヘンダーソン・マニュファクチャリング社の名前でスタートした。
10年以上安定的な成長を果たし、1981年2月に初めて海外に拠点を構え、1982年の6月には24以上の工場を全世界に展開するまでになった。
その年に社名を現在の名称に変更し株式を公開。以降、世界でも有数の巨大企業へと発展した。
母体は軍事企業(民間軍事会社)でありながら、複合企業へと発展し、遂には超国家的企業へと躍進したのである。
過去20年においてMNUは中規模の製造業者から国際的な技術革新の指揮者となっており、
2002年以降、実に500,000人もの新規雇用機会を鉄鋼事業において生成した。
MNUのプライベートセキュリティーフォースは私的法執行機関として世界をリードし、
悪化する世界経済の中、MNUの株価は常に上昇していた。MNUは技術移管と統合のグローバルリーダーとして
世界で100以上のオフィスを持ち、大規模なだけでなく、成長率も高い企業として邁進し続けた。
その技術は年間10億人以上に使用され、MNUのリサーチと製造技術は幅広い分野で活躍している。
最たるは薬品、ヘルスケア、教育、農業、鉱業、化学、ナノテクノロジー、都市計画、私的セキュリティーなどである。
多種多様な事業への取り組み、多くの国での活動を行い、超国家機関として認知されるようになったMNU。
1989年に南アフリカ共和国のヨハネスブルク上空に突如宇宙船が出現した時、MNUはこれを世界を変えるチャンスと捉えた。
南アフリカ共和国に雇われる形で、エイリアンを管理する権利を一任され、隔離地区「第9地区」に
エイリアンたちを移住させ、管理と監視を行った。管理業務を委託された後、エイリアンたちと地元住民による犯罪・治安の悪化、
地元住民とエイリアンのと争いが大きな社会問題となり、超国家機関としてMNUは問題を解決すべく、
積極的にヨハネスブルグの治安維持とエイリアンへの警戒監視を行うようになる。
世界の平和とエイリアンとの共存を建前にしているが、エイリアンの中絶を目的とした傭兵部隊、通称「スネーク」部隊の存在や、
同意が曖昧なまま移住を強制しようとするなど、エイリアンの人権を無視した活動も行っていた。
更にその裏ではエイリアンを生き死に関係なく不当に捕縛、エイリアンたちの持つ技術を回収していた。
その真の目的はエイリアンの技術や兵器の回収とその実用化であった。ヨハネスブルグのMNUビル地下には大規模な実験施設があり、
回収した物品のテストやエイリアン相手の実験が極秘に行われていた。
しかしエイリアンの技術を用いたものは全て、遺伝子認証を使ったロックが欠けられており、
エイリアンかエイリアン同様の遺伝子を持つ者にしか使えず、宝の持ち腐れとなっていた。
だが、MNUは幸運に恵まれていた。同社の男性職員であるエイリアン対策課のヴィカス・ファン・デ・メルヴェが
偶然にもエイリアンの宇宙船の液体燃料に触れたことにより、遺伝子が変化してエイリアンに近い存在になったのだ。
MNU南アフリカ代表のピエト・スミットは直ちにヴィカスの生体解剖を行う決定をした。
この時スミットはヴィカスが娘タニアの夫であることを理解した上で、会社の利益のためにMNUの実験施設へと収容した。
しかし幾つかの実験後、臓器の摘出を図ろうとしたところヴィカスが脱走。
早急に捕獲すべく、ヴィカスがエイリアンとの性交渉によりウイルスに感染しているという旨で指名手配、スネーク部隊による追跡を開始。
しかしエイリアンの兵器を使用できるようになったヴィカスの決死の抵抗により、スネーク部隊はほぼ壊滅。
ヴィカスが完全に姿を消したことで追跡は失敗となった。さらに同じ課でヴィカスの後任だったフンディスワによって、
MNUはエイリアンに対する極秘実験を暴露された・・・

モキュメンタリーかつバイオレンスアクションな映画「第9地区」。
この作品に登場する企業MNUは上にも書いたように大規模な組織図を持っており、
さらに元々は傭兵や軍需産業が根っこながら、多彩な事業に取り組むやり手として名を馳せている。
しかも根っこは変わらずに、超国家機関or超国家企業として活動。
これはエイリアンがやってくる前から、この状態だったことを考えると
人類が如何に考え無しに、MNUへ期待を寄せているのかがわかる。
だが期待に反してやってることと言えば、社会にその存在を認知させた上で平和を嘯き、
倫理的な面で悪であるはずの傭兵や軍需産業をやり続ける。
さらにエイリアンや現地住民を無理やり立ち退かせたり、エイリアンから技術を奪い、
虐殺、生体実験。自社の人間ですら必要とあらば犠牲にする。
善を装って悪を為す、まさに世界を我が物とする、典型的な悪の企業そのものである。
ここで注目すべきは本作のテーマがアパルトヘイトによるヨハネスブルグの現状であり、
この企業がアパルトヘイトの実行側を象徴しているのは明白であり、
同時に人間の醜さとエゴ、そして無関心を形としたものでもある。
MNU自体の見解はエイリアンという異人種を差別することで、利益を得ている。
だがMNUに勤める主役のヴィカスを含む末端の人々自体は、エイリアンに対して全く無関心である。
別に嫌いという訳ではない。ただ興味がなく、相手をするのは仕事なのでやっているのだ。
この辺の無関心さは、実行側の人間を象徴するのではなく、実行側の恩恵を間接的に受けている人間や、
人種差別に対して全く興味を持たない人々の無関心さを表しているように私は思う。
このMNUが巨大な組織ゆえに、世界中の人々が自分のこと以外無関心のような、
他者への慈愛がない絶望的な世界のようにも感じさせる。
しかし本作はエイリアンのために命を張るヴィカスや頑なに夫の善意とその帰りを待つ妻、
MNUの悪事を暴露したフンディスワのように決して善自体が存在しないわけではなく、希望は少なくともあるのだ。

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