2011年2月21日月曜日

ティンダロスの猟犬

クトゥルフ神話」シリーズに登場。

生命創生以前の深淵、時間が生まれる以前の超太古、
異常な角度をもつ空間に住む不浄な存在。
こちらの世界に姿を表すときの特徴的な形態として
「太く曲がりくねって鋭く伸びた注射針のような舌」と、
「原形質に似ているが酵素を持たない、青みがかった脳漿のようなもの」を
全身からしたたらせるとされている。
絶えず飢え、そして非常に執念深く、
四つ足で、獲物の「におい」を知覚すると、
獲物を捉えるまで、時間や次元を超えて永久に追い続ける。
その執拗な追跡には時間も場所も関係なく、
一度目を付けられれば最後、逃れ得る術はない。
獲物を追う様子から「猟犬」と呼ばれるが、
イヌとは全く異なる存在である。
彼らが我々の住むこの世界に出現するには、
「90度以下の鋭角」が必要である。
部屋の角や物品の破片などが形成する鋭角から
青黒い煙のようなものが噴出し、
それが凝ってティンダロスの猟犬の実体を構成する。
その実体化の直前、酷い刺激を伴った悪臭が発生するので
襲来を察知することができるが、
その時点で既に手遅れとなっている。
古代ギリシア人によると、彼らから身を守る唯一の方法は
身辺のものから一切の鋭角をなくし
「曲線」のみで構成することであるという。
しかしこの不浄な存在を補助する種族がおり、
この種族はドール族と呼ばれ、何がしかの原因で
「曲線」が破壊される、「鋭角」が作り出されるのは
この種族が手助けをしているものとされる。
そのためこの不浄な存在から
身を隠すことはほとんど不可能である。

フランク・ベルナップ・ロングの作「ティンダロスの猟犬」に
現れた宇宙的恐怖の存在、ティンダロスの猟犬。
逃げようにもどこまでも追いかけ、
隠れようともあらゆる次元を超えて襲う、
不可避の襲撃に脆弱な人類は退けることはできない
宇宙的恐怖を現した本作では
その出自や謎のドール族の存在が
あまり詳しいことは書かれておらず、
説明不足とも考えられるが、それが逆に恐怖を煽る形となった名作。
気になる方は創元SF文庫の「マッド・サイエンティスト」に
本作が収録されているので、一度手にしてみてください。
E・P・バーグランドという人物が書いた本によると
這い寄る混沌の従妹マイノグーラが
千匹の仔を孕みし森の黒山羊と交わって生んだとされるが
筆者は未読のため、この記事ではその設定はオミットした。

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