2025年3月23日日曜日

ヒルビリー

ゲーム「デッドバイデイライト」に登場。

本名なし。名無しとして育った。
仮称としてマックス・トンプソンJr.(ジュニア)。
全体的に歪な体をした、長身の白人男性。
顔は溶けたように歪んでおり、皮膚のたるみを抑えるためか
ステイプラーで留めてある箇所が見られる。
顔から半身に掛けては、皮膚が引き攣ったような状態が続いている。
声と息遣いが荒く、何らかの発声障害か気道に障害を抱えていると思われる。
若干右足を引き摺るような歩行をし、怪我による後遺症とみられる。
上半身はタンクトップ姿で、露出している腕や肩には
皮膚や筋肉の歪な隆起が見られ、背骨が大きく歪んでいるのがわかる。
ズボンはバックル付きのベルトで抑えているが、少々サイズが合ってないようで
ベルトは2本巻かれ、更にロープで縛ってある。
自らを虐待していた両親や関係者を殺害後、謎の存在「エンティティ」によって
霧の森へと召喚された。以来、生存者たちを狩り続けている。
家畜の屠殺用ハンマーを右手に、左手には巨大なチェーンソーが握られている。
チェーンソー使用中は凄まじい速度で移動し、その回転する刃は
生存者を一撃で瀕死状態にする。使用するまでにタイムラグがあり、
再使用には短時間のクールダウンを挟む必要がある。
一時期は長時間使用するとオーバーヒートして、一時的に使用不可になっていた。
現在は逆にチェーンソーの回転速度や移動速度、クールダウンが短くなる
オーバードライブ状態になり、チェーンソーが強化されるようになっている。
アメリカのとある場所で、マックスとエヴリンのトンプソン夫妻が生活していた。
二人は裕福な地主で、農場「コールドウィンドファーム」を経営していた。
公には、トンプソン家には子どもはいなかった。
しかし実際は望まれない子どもが誕生していた。
その子どもは醜悪な見た目から両親に疎まれ、名付けられずに育てられた。
レンガで仕切られた部屋に閉じ込められ、壁に開けた穴から食事を与えられた。
社会から断絶された子どもは、言語や知識を壁の穴から見えるTVから学んだ。
両親は育つにつれ、強靭になった少年の世話に手を焼いた。
怪力故に、度々壁や拘束具、家具を破壊した。しかしTVを見せれば、大人しくなった。
いつしか両親を呼んで、壁を破壊しながら泣くことはなくなった。
少年はTVから常識を学んだ。自身が如何に普通の子どもと違うのか、
本来家族は愛情をもって接してくれることを。通常の人生との違いを理解した。
彼が好きだった番組は二つ。ビーバーの家族が主役のものと、スーパーヒーローの少年のもの。
二つが共通していたのは家族からの愛。ビーバーの子どもは毎日両親から愛されていた。
スーパーヒーローは義両親の愛を受け、偉大なヒーローとなった。
いつか自分も愛されたいと願ったが、両親は自分よりも家畜に愛情を注ぎ、
名前をつけ、大切に育てた。この願いは怒りに変わった。
そして自分の元にヒーローが現れることを願った。
地元の警察官たちは両親と密接な関係を持っており、賄賂をもらうことで
両親の悪行を黙認しただけではなく、彼を笑い物にした。
いつしかヒーローへの願いは虚しいものになった。
そして少年は、父や母、警察官たちの悪意に対する怒りを抱え続けた。
ある日、父が警察署長とその取り巻きの警官たちを連れて現れた。
少年は度々家畜の虐殺をやらされ、彼らはそれを見世物にしていた。
いつものように少年を愚鈍だと嘲り、罵倒の言葉を浴びせた。
しかしその日は、いつものようにならなかった。
少年は怒りのあまり我を忘れ、気付いたときには家畜以外の血と叫びが溢れた。
父親と警官らを殺害した後、母親を拷問した。
自身に名前があるのか、聞き出したかったのだ。
しかし歯も顎も砕かれた母は喋ることも出来ず、すぐに動かなくなった。
そこへ難を逃れていた署長が、新しい部下や二頭の警察犬と共に戻ってきた。
森へと逃げ込んだ少年への追走は困難を極めた。
嗅覚の鋭い警察犬を避けながら、次々と署長の部下は殺害された。
署長は一計を案じ、「お前の本名を知っている」と叫んだ。
少年は僅かな希望を感じ、無意識に逃げるのをやめた。
そこへ警察犬が飛び掛かってきた。さらに署長もハンマーで襲ってきた。
彼は犬を木に投げつけ、署長の手首を掴んでハンマーを振り払う。
今までにない力を感じながら、少年は署長を押し倒した。
ナイフで反撃しようとする署長に逆にナイフで腹を刺した。
署長の腸を引き釣りだそうとしたが、犬たちの追撃がきた。
犬たちを痛めつけ、走り出した。冷たく暗い森の中を抜け、農場へ向かう。
唸り声、銃撃、様々な音を聞きながら彼は地下室の秘密の部屋、
父親が金を隠した部屋や、両親が自身を閉じ込め虐待した部屋のことを考えていた。
そこでTVを見ながら隠れることを想像した。
同時に父親の持ち物を探れば、自分の本当の名前が見つかるかもしれないと
淡い希望を抱いた。直後、右脹脛を銃で撃たれた。
またしても警察犬が飛び掛かり、彼の腕に噛り付いた。
しかし激しい怒りに駆られる少年の怪力の前に、二頭とも絞殺された。
署長は尚も銃撃しようとするが、弾切れだった。
少年は署長の前に立つと、署長を殴り倒し、今度こそ腸を引き摺りだした。
そして署長は豚の餌になった。何年もの孤独と辱めを味わわされた少年は
自由を、温かい空気が顔に触れるのを感じた。
そしてまだ胸に残る激しい怒りを近くにいた家畜たちに向けた。
少年は隠れ潜んだ。忌まわしい虐待の記憶、思い出深い農場に。
しばらくは逃げ惑う家畜に対して、狂ったように暴力の限りを尽くした。
足枷から解き放たれた彼はトウモロコシ畑を駆け回り、
目に映る全ての生物を追い掛け回し、虐殺した。
両親の遺体は決して見つかる事はなかったが、内臓を抉られ、
拷問された動物の肉片が農場の至る所に散見された。
またチェーンソーの潤滑油の空っぽの缶が散乱していることもあった。
農場では今でも夏の夜にどこからかチェーンソーの音が聞こえるという…

デッドバイデイライト」第三のプレイアブルキラー、ヒルビリー。
田舎者を意味する名前は、おそらく某いけにえの影響だろう。
そこは置いといて、生死をかけた鬼ごっこの絶対のルールは、
攻撃二回でダウンする。無論、一部のパークや特殊能力によって例外はある。
その最初の例外がこのキラー。なんとチェーンソーによる一撃を受けると
即ダウン状態になってしまうのだ。
初期DbDはコイツのチェーンソーの音が聞こえただけで、
震えが止まらなかったサバイバーは少なくなかったはず。
人物像に関しては、陰惨な背景が浮かび上がるキラーだ。
元々、望まれない子どもという設定のため覚悟していたが
野生児とかその辺を想像していた。
だが学術書の伝承は公開されると一変。
愛されることを望んだ忌み子という、想像よりも惨い伝承だった。
学術書は公開前のPVにアニメーションがあったりするのだが、
そこに描かれたのは死体となった両親と共にテレビを見るヒルビリーという
なかなかにおぞましく、同時に哀れな光景だった。
彼の両親の遺体は見つからなかったらしいので、
やはり両親を憎み切れない部分があったのではないかという想像を掻き立てる。

2025年2月17日月曜日

アヌビス(Z.O.E)


ゲーム「ZONE OF THE ENDERS」シリーズに登場。

火星の軍事組織「バフラム」に所属する人型機動兵器「オービタルフレーム(OF)」の一体。
「オービタルフレームの父」と呼ばれるリコア・ハーディマン博士によって
ジェフティと同時期に設計された兄弟機。2機が近づくと共鳴反応が発生する。
ジェフティ同様、博士が立案した「アーマーン計画」の一翼を担う存在とされる。
操縦者(ランナー)はノウマン。木星コロニー・アンティリアにおいて
ハーディマン博士の腹心達により開発された。
「アーマーン計画」の全貌は軍事要塞「アーマーン」を起動することで、
大規模な空間圧縮を行い、太陽系全域を破壊することだった。
アヌビスとジェフティの両機はその起動と停止の鍵を担っている。
従来のOFと桁が違う程のパワーとスピードを持ち、
背部に装備された6基の翼状のウィスプは、スラスターと大型ジェネレータを兼ねている。
ベクタートラップの圧縮空間を利用した攻撃の反射と屈折、
機体そのものをベクタートラップに収容してステルス行動を可能としている。
ウーレンベック・カタパルトの応用による亜光速移動能力「ゼロシフト」も備え、
擬似的な瞬間移動を可能とする。当初、ジェフティがゼロシフトを利用できないのは
アヌビスの方が先に完成したためであり、本来は性能に差はない。
武装は電磁式の銛「ウアスロッド」、折れ曲がるように進むレーザー「ハウンドスピア」、
2種類の追尾性能を持つバーストショット「戌笛」など。
バーストアタックによる攻撃は、火星に宇宙から確認できるほど巨大な穴を穿つ威力を持つ。
サポートAIとして独立型戦闘支援ユニット「DELPHI(デルフィ)」を搭載している。
このDELPHIはジェフティに搭載されているAI、ADAの姉妹機である。
しかし、禁忌とされたメタトロン(機体)との完全な結合を望んだノウマンは
彼女の機能をほとんど使用しなかった。
2172年に勃発したアンティリア事件によって、作戦の指揮官ハーディマン博士の息子でもある
ノウマンの手に渡って以降、彼の乗機となる。
レオ・ステンバックの駆るジェフティとノウマンの部下ヴァイオラ・ギュネーの駆るネイトの最後の対決後、
突如出現。ゼロシフトの圧倒的なスピードと桁外れの出力を活かし、ウアスロッドのみで
ジェフティを終始圧倒し続け、撃墜寸前まで追い詰める。
しかし宇宙船アトランティス号の艦砲射撃により妨害され、ジェフティを仕留めそこねた。
その後2174年。仲間を守るためにバフラム艦内に突入してきたディンゴ・イーグリッドの駆る
ジェフティの前に再び出現。ゼロシフトの圧倒的なスピードでジェフティを翻弄し、
圧倒的な実力差でジェフティを捕獲した。
後にゼロシフトを手に入れてスペック上はアヌビスに並んだジェフティと再度対決。
アーマーンの起動後、圧縮空間内でジェフティとの戦いは、ジェフティの勝利となる。
この戦いで機体は大破していたが、アーマーンと融合することで再起動。
この姿はノウマン曰く「メタトロンとの完全なる結合」。同じく内なる力を「開放」したジェフティと再度激突。
無限ともいえるエネルギー供給による驚異の修復能力、OFの域を超えた耐久性をもって
ジェフティに迫るが、ゼロシフト使い同士による亜光速の死闘を制したのはジェフティだった。
アヌビスの機体は上半身のみ残っていたが、起動したアーマーンを停止させるために利用され、
自爆により完全に消滅した。

2001年発売、ハイスピードロボットアクションゲーム「ZONE OF THE ENDERS」シリーズ。
特に2作目の「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS」は2度のリマスタリングが行われるほど
国内外問わず人気が高く、金字塔といっても差し支えない。
そして主人公機ジェフティと対となる最強にして最後の敵「アヌビス」。
機体のモデルとなったのはエジプト神話における冥界の神アヌビス。
ジャッカルを模した頭部と、ジェフティには無いケーブル状の尻尾を持ち、
有機的ながら幽鬼染みた出で立ち。6基の大型スラスター兼ジェネレータであるウィスプの威圧感、
そして他のオービタルフレームが航空機の延長線上にいる中、ゼロシフトの存在が一線を画し、
最早オーバーパワーといえるほどの性能差が見せつけられる。
1作目登場時のゼロシフトの圧倒的なスピードによる逃げられないと思わされる絶望感は凄かった。

2025年2月10日月曜日

ペドロ


ゲーム「My Friend Pedro」に登場。

記憶を失った主人公の元に突如現れた謎のバナナ。
宙を浮遊し、自我と知性を持ち、
人語を話すバナナであり、主人公の友人を名乗る。
旧市街にある肉屋の倉庫で目覚めた主人公の目の前に現れると、
周辺を牛耳る地獄の料理人ミッチは武器商人で、
従わない者をミンチにしてしまうことを説明し、
このままだと主人公は殺されてしまうという。
助かるにはミッチを始末するしかないと、
主人公は拳銃を手に肉屋からの脱出を図る。

アクロバティック横スクロールガンアクションゲーム「My Friend Pedro」。
記憶喪失の主人公が、目の前に突然現れた謎のバナナ・ペドロとともに
悪党たちとの銃撃戦を繰り広げる。アクロバティックなアクションを駆使し、
さらに様々な銃や環境を利用し、時間の流れを遅くする能力「フォーカス(FOCUS)」を
活用しながら、悪党どもをバッタバッタとぶっ飛ばしまくる本作。
そして友達のバナナ・ペドロ。バナナが友達って!?しかも宙を浮いて、喋ってる!
作中、ペドロは必要性のあるアクションなどをチュートリアルしてくれ、
主人公の行き先を導いてくれる存在。しかし主人公の友人だと語りはすれど、
それ以上のことは何も語らず、唐突に謎の空間に招き入れたり、
何故か悪党どもに詳しかったり、謎めいた存在だ。
むしろ謎が多すぎて、もはや神秘の塊である。
非常にうさん臭い関係のまま、物語が進む。
すると、悪党のボスたちは口々に主人公のことを知っているかのように話す。
そして明かされる衝撃の真実。ペドロとは自身であり、
悪行を重ねる家族との生活に嫌気が差した主人公。
実の家族を殺す決意するも、罪悪感を消すため自身の記憶を消し、
殺害計画のナビゲーターとしてインスタント人格「ペドロ」を作り出したのだ!
あとは自信を消すだけだと、ペドロは主人公の肉体を支配しようとする。
抗う主人公は、自身が作り出した架空の友人にその銃口を向けるのだ!

ジェットコースターのような展開の中、最期の戦いを制すと
なぜかちょっと晴れやかな気分のまま、
実際は非常にサイコでサイケデリックな結末に
プレイヤーは置いてけぼりにされるだろう。

2024年12月14日土曜日

レイス


ゲーム「デッドバイデイライト」に登場。

本名フィリップ・オジョモ。
顔に三本の白線が斜めに入った模様が特徴の長身痩躯の黒人男性。
頭は泥で覆われ、泥で固まった頭髪はまるで樹木の枝のようになっており、
皮膚もまた樹皮のような質感になっている。
上半身には丈の短いマントとショールとスカーフを、
腰にはユーティリティベルトを巻いて、足は包帯を纏っているが、
一見すると全てボロボロなため服装全体に一種の統一感がある。
就職先の上司に殺人の片棒を担がされた後、謎の存在「エンティティ」によって
霧の森へと召喚された。以来、生存者たちを狩り続けている。
鋭い刃に人間の頭蓋骨と背骨がついた凶器「アザロフの頭蓋骨」を右手に、
左手に持った古代の力が込められた古い釣鐘「悲哀の鐘」を使って、
生存者を奇襲する殺人鬼。この鐘はエンティティ由来の品物であり、
おそらく父の遺品である「幸運の鐘」が変化したか、
またはエンティティによる、悪趣味なオマージュと推測される。
鐘中の鳴子を骨や縄で結んだものと変えることで、音の有無や攪拌を変化させ、
様々なエンティティのシンボルや謎の文字を記すことで、自身に古代の力を付与する。
最大の特徴はこの鐘は鳴らすと魂の世界に入り込むことができるとされ、
鐘の力でレイスは自身の姿を透明にすることができる。
このため気配をほとんど悟られることなく、獲物を追跡することができる。
しかし透明になっている間は攻撃できないため、一度鐘を鳴らして姿を現す必要がある。
また遠目ではわからないが、接近された時に目を凝らせば
光の屈折による空間の歪みが若干発生している。
しかも常に鼻づまりのような息苦しい吐息音をしており、
裸足で移動しているが、歩くたびに大きな足音を立てている。
意外にもある程度接近されれば、生存者側は容易にその存在を察知できる。
この能力に対する一種場違いの行動、その理由は不明だが、
過去の出来事が彼から人間性を奪ったことで獣同然の精神状態からくるものか、
はたまた精神が崩壊した茫然自失の状態からの無意識なものなのか、判断はつかない。
彼の出身はナイジェリア北部の小さな村。幼少期は両親や祖母と共に暮らしていたが、
民族浄化を目的とした虐殺部隊によって、幸せな生活は終わりを告げる。
村人は蹂躙され、少年だった彼は父親の遺品である「幸運の鐘」を握り締めて、
両親の帰りを待ったが、両親は帰ってこなかった。
祖母アビゲイルは可能な限り、残酷な真実からフィリップを守ろうと嘘をついたが、
いつしか二人からは、涙しか出なくなった。そして二度目の襲撃を知らせる鐘の音。
二人は間に合わせの壕の中で過ごした。祖母は外から聞こえる不穏な音から
フィリップの気を逸らすため、算数の問題を出し、フィリップは答え続けた。
彼の両親は算数が出来れば、フィリップが聡明な子に育ち、学校の成績が良くなれば、
人生にチャンスをもたらすと信じていた。その両親がもう存在せず、
勉強も遊びも、話もしてくれない事実を認識せざる終えなかった。
そしてそんな祖母も、壕の外から聞こえた子どもの泣き声を放っておけず、
フィリップを残して、壕の外へと出て行ったしまった。
それから何時になったか、死んだ方がマシと考えたフィリップは外へと出た。
腐臭、焼けた匂いが立ち込める外には、祖母の姿はなかった。
両親も祖母も友人隣人も失った。彼はかすれた囁き声で祖母を呼んだ。
その囁き声はいつしか叫びへと変わり、それに対する応えは夜の沈黙だけだった。
何もかも奪われたフィリップの手元には、「幸運の鐘」だけが残った。
天涯孤独となったフィリップは、死を望んだ。
しかしそこへ、フナニャという女性が手を差し伸べた。
死を懇願した彼に対して、フナニャはそれでも生きなければいけない、
生きて証人になり、何が起きたのか伝えなくてはならないと説得された。
フナニャとフナニャに保護された子供たちと共に新しい生活を始める。
しかし虐殺部隊によって廃墟となった住居に隠れ住む生活は、
未だ心の傷が癒えないフィリップにとって、復讐の呼び水となった。
人殺しで金を貰うもの、人殺しに金を払うものを憎悪した。
そんな彼を見て、フナニャは奴らは多くのものを奪うが
人間性を奪うことはできない、だから自ら人間性を手放してはならないと説いた。
しかしフィリップは彼らは代償を払うべきだと、頑なだった。
フナニャは自分たちが生きて証人になるため、慈悲の天使に自分たちの無事を祈るべきだと言うが
フィリップは彼の父が信じたように、金のある人は犯罪を犯すために余裕があり、
そして罪から逃れる余裕があると考え、死の天使に奴らが苦しむことを祈りたかった。
フナニャ曰く、「目には目を」の精神は自分たちを盲目にし、世界を暗闇に包んでしまうと。
しかしフィリップからすれば、先に盲目になったのは世界であり、
自分たちに起こった出来事に対して世界は無関心であり、それが自分たちが奪われ、
屈服させられる理由であり、この世界の数学的な公式であると考えた。
だがフナニャが語る先人の言葉に対して一瞬だけ、彼は彼女が正しいかもしれないと思った。
復讐より先に、世界は無関心でなくなり、自分たちを助けてくれるかもしれないと。
しかしある日の晩。フィリップが夜の見張りをしているときだった。
彼は何日も眠れておらず、その時、一瞬だけ目を閉じてしまった。
その一緒で眠ってしまい、彼が起きたのは次の日の朝だった
飛び上がりながら彼は周囲を確認する。かつて友人だったものが
一つ、また一つと見つかった。そして変わり果てたフナニャの姿を。
夜中に起きた虐殺部隊の襲撃は苛烈であり、彼らはフナニャを拷問し、
足の腱を切った上に、そこへ蜂蜜を塗り、蟻に生きたまま捕食させたのだ。
フィリップは必死になって蟻を払い続けたが、蟻はいくらでも湧いてきた。
フナニャは必死に喋ろうとするが、口からは血が噴き出ただけだった。
彼女の舌は失われており、話すのもままならなかった。
絶望感と罪悪感から座り込み、「ごめんなさい」と後悔と謝罪を口にした。
しかし、ごめんなさいでは彼女は助からない。
ごめんなさいではアリを追い払うことも、死んだ子供たちを取り戻すこともできない。
そんな彼に対して、フナニャは指で地面に書いた。「許す」と。
フィリップは長い間その言葉を見つめ、しばらくすると静かに涙を流しながら
彼女の顔の上に手を下ろし、彼女の苦しみが終わるのを待った。
彼はそうしたくなかったが、しなければならなかった。
望まぬ形ではあったが、彼は一瞬だけ彼女の慈悲の天使となった。
その晩、フィリップは闇に紛れて別の壊滅した村を見つけ、
そこに虐殺部隊が野営しているのを見つける。
おそらくフナニャを殺した連中。あるいは彼の祖母や両親を殺した連中。
理性ではフナニャが許すべきだと語りかけ、祖母が数学の問題で彼の心を宥めようとした。
しかし彼の激しく狂った憎しみの情動は止まることを知らず、復讐を求めた。
焚き火を囲み上機嫌で酒を呷り、虐殺した人々を動物のように扱い嘲笑する奴らには
地獄の苦しみを与えなければならない。そのとき何か古代の邪悪なものが、
別世界から伸ばされた暗い触手が、自身の若く無垢な心を掴むのを感じる。
彼は自分の血管に灯油が流れるのを感じ、そして行動を開始した。
フィリップは銃や武器で全員を相手することを考えたが、慣れてないものを使えば
彼らはおそらく逃げてしまうだろうと考えた。出来れば彼らが苦しみながら消えることを望んだ。
彼は近くにあった灯油を奪い、寝静まった兵士たちの周りに撒いて火を放った。
突然の炎に恐怖した彼らに次々と火は燃え移り、断末魔を上げて焼死していった。
惨状に気を取られたフィリップの体にも火が移り、彼はその場から逃げた。
そして激痛のあまり、倒れこむ。いつの間にか傍らにあった「幸運の鐘」を叩いた。
死の天使が死を告げるかのように。その後、新たなスタートを求めてナイジェリアを飛び出し、
新生活への期待を胸に、フィリップ・オジョモはアメリカへ渡った。
彼は幸運にも自動車解体の仕事にありつく事ができた。
「オートヘイヴン・レッカーズ」。それが彼の新しい生活の場だった。
小さな廃車置場のオフィスで、ボスが裏社会の仕事や警官への賄賂を行っていることに
フィリップは気づいていた。しかし故郷での悲惨な生活を考慮すれば、
取るに足らないことであり、彼自身はその仕事に巻き込まれなかった。
彼はプレス機を操作し、車を廃車にする作業を淡々と続けた。
車をひたすら小さい鉄の塊へと変えていく。
日々、そんなことを続けていた。トランクから血が流れていることに気づくまで。
ある陰鬱な日、たまたま潰してない車に偶然見つけた変化。
彼は車のトランクを開けることを戸惑わなかった。
中にはパニック状態の縛られた若い男がいた。
彼はその男を解放した。 男が10フィートほど逃げたところで
ボスであるミスター・アザロフが男を引き留め、男の喉を掻っ切った。
フィリップは突然の出来事に、ボスへ説明を求めた。
正確には、何がここで行われていたか理解していたが、理性がそれを拒んだのだ。
しかしアザロフが告げた真実は、予想通りのものだった。
アザロフは故郷にいた人でなしどもと同類だった。
廃車置き場は処刑場であり、フィリップはそこの処刑人である。
すべては客からの依頼であり、車と一緒に人間も「廃車」にしていた。
フィリップは知らぬ内に委託殺人を任され、犯罪の片棒を担がされていた。
そして自身の無関心が、不穏な職場とボスへの警戒心を鈍らせ、
奴らと同じ、他者を食い物にする人でなしに自分を変えたのだ。
この事実は、フィリップの精神を急速に狂気へと追いやった。
彼は激昂し、ボスをプレス機の中に投げ入れ、ゆっくりと粉砕した。
アザロフの頭だけが突き出ていたため、頭と背骨を体から引き抜いた。
そして彼は立ち去り、以降フィリップの姿を見た者はいない。
その後、アザロフの所業は明らかとなり、警察が捜索した結果、
廃車に詰められた数百に及ぶ遺体とそれを生み出した首謀者であるアザロフ。
その遺体も首なし状態でプレス機から発見された。
この廃車置き場のオーナーは、金儲けのために死体処理や委託殺人を行っていたようだが、
いつしか快楽のために殺人を行っていたと推測されている。
アザロフが所有していた給油所「ガス・ヘヴン」周辺で失踪者が続出したこと、
またその住居で奇妙な彫刻や版画が見つかり、地下室には犠牲者を監禁していた痕跡があり、
アザロフの精神状態が不安定だったことが、事件に結びついているとされる。
周辺の街は風評を気にして、廃車置き場を閉鎖。ここの出来事を忘れようとした。
しかし夜に明かりが点灯・消灯する様子を見た者から始まり、
次第にプレス機が動く音を聞く者も現れ始めた。
住民は何かがあると疑ったが、彼らは自分達の生活を守るため、見て見ぬ振りをした…

デッドバイデイライト」において第二のプレイアブルキラーが
このレイスだ。まるで〇レデターのような能力を持ち、奇襲を仕掛ける殺人鬼。
誰もいない。そう思った瞬間、唸り声じみた呼吸音と共に不気味な鐘の音が響き渡る。
まさに神出鬼没。死を告げる天使の前に、恐怖に震え上がるしかない。
しかしリリース直後は便利な透明化のはずが、意外と見えたり、音が聞こえたり、
発動と解除に鐘を鳴らすのが手間だったり、攻撃以外も特定のアクションが行えなかったり。
あらゆる状況において不便というよりも、ゲームにおける不幸を一身に背負った
不憫さは、まるで設定上の生い立ちに比例するようだった。
また板をぶつけられたり、ライトを浴びせられて、「ブモー!」と表現できるような
叫び声を上げたりして、最早ネタキャラ扱い。
しかし度重なるアップデートによるブラッシュアップの結果、
文字通り奇襲に長けた、良いキラーとして地位を得ている。
レイスのゲーム上のあんまりな境遇は置いて、彼の経歴は悲劇としか言えない。
悲劇に悲劇をトッピングした、胃もたれしそうなラインナップ。
人でなしに奪われ続けた結果、慈悲よりも復讐を選び、
自らの不幸の原因に鉄槌を下すが、更なる人でなしの出現により正気を失った。
しかし何より悲劇は、世界が無関心であることを恨んでいた自身が
同じように無関心になってしまった。それに対する罰かのように
彼自身を人でなしに加担させるという、無情な結末。
理性を手放して鐘のように空洞になったと思しき彼が、
時たま出す唸り声や叫び声は、最後に残った人間性が、
鐘のように鳴り響いてるだけなのかもしれない。

2024年11月19日火曜日

ABCロボット


映画「ジャッジ・ドレッド(1995)」に登場。

錆色をした戦闘用ロボット。両手に機関銃が内蔵されている。
犯罪者リコが訪れた武器屋に安置されていた。
核戦争後、全て機能不全になったとされたが、
武器屋の店主曰く「探せば手に入る」という。
製造から50年、60年近く経っていたがリコが修理したことで活動を再開。
リコを主人と再認識させ、リコらと共にメガシティで暴れまわる。
その後ファージーを負傷させ、ハーシーを人質に取り、
彼女の首をへし折ろうとしたが、負傷したファージーの決死の行動によって、
背後を取られ、首周辺の動力ケーブルを引きちぎられてしまう。
最終的に前のめり倒れ、活動を停止した…

映画「ジャッジドレッド」に登場する戦闘ロボット。
映画の出来については触れずに、この唐突に登場したロボットについて。
人間的な顔の造形と赤い目、マッシヴなボディ。
一発で悪役かつ、力自慢であることを表現できているのは
素晴らしい。原作コミックには登場しないロボットであり、
元ネタはイギリス・コミック「ABC warriors」からであり、
本作では何故かカメオ出演という扱い。

2024年11月10日日曜日

ディーラー

ゲーム「Buckshot Roulete」に登場。

浮遊する2つの手と、人間とは思えない異常に鋭い歯の生えた丸顔で構成された存在。
正体不明、本名も不明。ナイトクラブを思わせる建造物の一室で待ち受けており、
ショットガンを使ったロシアンルーレットに興じる。
撃たれると出血し、しかめ面や苦痛の表情に変わる。
少なくとも生き物のようだが、何度撃たれても既定のライフ数と勝負が続く限り、
何度でも起き上がるため、不死に近い存在なのかもしれない。
過去に「神」と名乗る者と勝負したことが示唆されており、
プレイヤーがゲームに使用するアイテムを箱から取り出す際、
稀に血塗れの免責同意書が出てくるときがあり、署名に「神」と記されている。
ゲームの開始時に必ず免責同意書に署名させるところや、
弾の装填は不規則、ルールを都度説明するなど、
律儀な性格をしており、フェアなゲームを楽しんでいるが、
それは同時に、命を賭けたゲームを純粋に楽しんでいる狂人の側面でもある。
最終ラウンド以外ではプレイヤーが死んでも、
何度でも除細動器で甦らせることから、ギャンブル依存症の疑いがある。
ゲームは署名後に開始され、横のモニターに電源が入り、
3ラウンド続くことを示す。第一ラウンドは純粋な確率での勝負であり、
運が悪くなければ、勝ち抜くことができる。
第二ラウンドは新ルールとして「アイテム」の使用が導入される。
戦略性が増し、理詰めで運をモノにする面が強くなる。
第3ラウンドでは4つのライフ数以下になると除細動器が使用不能になり、
この状態で撃たれると、文字通り本当の死が待っている。
プレイヤーが死んだ場合、銅で出来た門がある謎の空間へと飛ばされ、
(死後の世界と推測されるが、詳細不明)無情にも、「死亡」と推定される。
プレイヤーが勝った場合、ディーラーは死亡。
勝利した褒美として、賞金7万ドルとショットガンが贈られる。
プレイヤーは車の助手席に現金の入ったアタッシュケースとショットガンを乗せ
車でその場を後にする。しかしディーラーが本当に死んだかは不明である。
ルールに従ったのか、無力化されたのか、続行する気を失くしたのか。
現金を受け取る際に一瞬現れる、赤く光る眼のようなものが意味するのは…

装填中の沈黙がたまらない。ゲーム「Buckshot Roulete」は
謎の建物で、謎の存在と、謎のギャンブルを繰り広げる。
目的と理由も謎である。ただ、恐ろしい見た目のディーラーから
賞金と自身の自由を勝ち取らなければならない。
このディーラー、明らかに人ではない挙動をする。
薬室を覗かずに、割った虫眼鏡で装弾を確認する、
金属でできた銃身をノコギリで一瞬で両断する、
その両断した銃身をまた生やすなど、
異常なアイテムの力といえばそれまでだが、
プレイヤーが除細動器で甦るのに対して、
一切それを使う様子がないのが恐ろしい。
しかしビールや煙草は普通に使用し、
何故か律儀に手錠を手首にかけるなど、どこか人間臭い。
製作者のQ&Aによれば、彼の体は実際に「頭部と手が浮いてるだけ」であり、
人外であることは確かなようである。

2024年11月2日土曜日

ビートルジュース


映画「ビートルジュース
ビートルジュース ビートルジュース」に登場。

死者の世界で600年以上生きている、いたずら好きな悪霊。
別名ベテルギウス。自称だがジュリアード音楽院に通い、
ハーバード大学ビジネススクールを卒業。
世界中を旅行し、ペストの時代を楽しく生き抜き、
エクソシストが見る度面白くて167回ほど観たらしい。
生前はペスト全盛の時代、墓荒らしを生業にしていた。
その後ドロレスという女性と結婚したが、彼女の正体がカルト教団の指導者であり、
人の魂を奪うことで不死を目指す彼女の目的は、彼の魂であった。
ドロレスが毒を盛ってきた仕返しに、斧で彼女を斬殺。その後死亡した。
現在はバイオエクソシスト(人間驚かし屋)事業を展開し、マネージャーとして活躍している。
常に下卑た笑みを浮かべ、慇懃無礼な態度を崩さず、よくジョークを口にする。
一見すると軽薄だが、悪霊としての実力は本物であり、
自由に空間や時空を歪曲させるなどの現実を改変する事ができ、
物体や人物のテレポートや変身、念動力、腹話術と人の声真似ができる。
冥界に来てからは、冥界ケースワーカーのジューノの助手を務めていたが、
自身の力と野心からか、バイオエクソシストとして独立を画策。
ジューノによって呪われた上に追放され、「ビートルジュース」の名を3回唱えなければ、
現世に干渉できなくなってしまった。
1988年、ビートルジュースはアダムとバーバラのメイトランド夫妻に召喚され、
ディーツ一家を殺そうとしたが、夫妻によって阻止される。
しかしディーツ家の娘リディアと結婚することで、現世へと復活を遂げようと画策。
最終的に夫妻の活躍により、冥界へ強制送還された。
その後36年間は、事業を拡大しつつ、リディアへストーカー行為を働いていた。
いつしか冥界で幽霊相談コールセンターを開くほどになる頃には、本当にリディアに恋していた。
しかし復讐に燃える元妻ドロレスが出現。行方を眩まそうとした時、リディアに呼び出された。
娘アストリッドを命を救うことを求められ、対価として結婚する契約を結ぶ。
娘が助かると、すぐに結婚式を挙げようとする。怒れる元妻を倒し、冥界の警官隊も無力化。
結婚は秒読みだったが、自身が助けたアストリッドに冥界の法を犯したことを指摘されてしまう。
これにより契約が無効化され、またしても結婚を阻止されてしまうのだった…

ティム・バートン監督の初期作にあたる映画「ビートルジュース」。
その当該人物であり、マイケル・キートンが演じるビートルジュースは
主役であり、同時に悪役でもある。常に下卑た笑みを浮かべ、
慇懃無礼な態度を崩さない、ポジティヴ精神の塊であり、
悲劇を喜劇に変え、下品なジョークを口にし続ける。
そんな彼が、生前は一目惚れした相手と即結婚、しかし双方の死により物理的に破談。
その後は死を求める少女リディアと出会い、利害の一致から結婚承諾。しかし即破談。
そして月日が流れ、またしても結婚、またしても破談。
3度もスピード結婚&離婚を繰り返す、最早お家芸である。